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  • 2015/10/13 掲載

「2年先行くがちょうどいい」 ラクーン 小方 功社長に聞く新規事業のつくり方

日本の流通業界を徹底的に科学

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業態が多様化するファッションおよび雑貨の消費財分野で、日本全国のメーカーと小売店を繋ぐ仕入れサイト「スーパーデリバリー」などを運営し、17年連続で増収を続けている企業がラクーンだ。小規模な小売店の多彩な商品ニーズに応えつつ、その一方で、メーカーが未回収リスクを回避できる新しい中間流通事業者のビジネスモデルを生んだ代表取締役社長 小方 功氏に、起業の経緯やビジネス成長の理由を聞いた。
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ラクーン 代表取締役社長 小方 功氏

建設業界の矛盾に違和感を覚え、転身を決意

──まずは、小方氏のご経歴をお聞かせいただけますか。

小方氏:私は生まれも育ちも北海道で、北海道大学工学部を卒業して、大手の建設コンサルタント会社に就職しました。橋梁設計や臨海副都心の基本計画立案などに携わったんですが、ほどなく違和感を覚えるようになりました。

──具体的にはどのような違和感を感じていたのでしょうか。

小方氏:日本のインフラ開発はそのときすでに成熟期に入って、ダムも、橋も、もうそれほど必要ない状況になっていました。しかし、会社は生きていくために、私には不要と思える提案を繰り返していました。海外に活路を見出せばいいのに、そういう活動はあまりうまくなかった。若造ながらいろいろ直言したんですが、ついに会社を辞してしまいました。そして、中国へ留学したんです。30歳のときでした。

──なぜ留学先に中国を選んだのでしょうか。

小方氏:多くの場合、日本人は留学というと米国へ向かいます。しかし、私には日本の何カ月か先を行っているだけの国に見えました。

 「これからはあれが流行る、これが来る」と米国から帰ってきた人は言いますが、私は「ああ、この人も想像力を失くして帰ってきたな」と思います。私が会社を辞めた年に、コカ・コーラよりウーロン茶の方がたくさん売れた、というニュースが流れました。これからは中国の時代だと思いました。日本にとって未知のものが山のようにありそうで、とても魅力的だったのです。

──留学生活はいかがでしたか。

小方氏:語学留学だったのですが、学校には国連加盟国の数より多い外国人がいて、非常に国際的な雰囲気でした。衝撃だったのは「民主主義はどうなのか」と北朝鮮から来た同級生に聞かれたり。そんな質問、日本では受けませんから。

 学校に通うかたわら、健康食品ブームを予見して、いろいろ取材してまわりました。日本で話題になった商品に、私のメディアへの紹介がきっかけになったものもあります。その取材ノートが10冊を超えたあたりで日本へ帰ってきて、ラクーンを創業したのです。

日本の流通構造を徹底的に科学し、企業間取引サイトを開始

──ラクーンは、小方氏が1993年9月に創業し、2006年4月に東京証券取引所マザーズに上場しています。創業当初から現在のビジネスを行っていたのでしょうか。

小方氏:いいえ。お金も、人脈も、経験もありませんから、まずは食べることが先決で、貿易からスタートしました。資本金は100万円。真のニーズは実業に携わる中で見つかるものだと思っていました。

 最近のアントレプレナー志望者は机上でアイデアを出し、それをビジネスプランコンテストにかけて出資を得ようとしますが、自分で実際にビジネスをしてもみないで何が見えるのかと思いますね。

 資本金にしてもそうです。「5,000万円あれば、このビジネスは成功します。だから出資してください」などと、訪ねてくる人がいます。違うでしょう、と。100万円を200万円に、200万円を1,000万円にと、お金を増やしながらビジネスを伸ばすのが経営者の資質、5,000万円なければビジネスできないというのは、資質がないことを自分から宣言しているようなものです。

 自らビジネスを始めて気づいたのが、「誰に何を売るか」が最も重要だということでした。最初にトップがこの設定をまちがえた企業は先長く苦労します。私は貿易で流通に携わって、日本の流通構造が独特でおもしろいと思いました。しかし、過去にこの分野を詳細に分析した人はいないようです。それなら工学部出身の私が理系の発想で徹底的に科学してやろうと考えたのです。

──そうして立ち上げられたのが、過剰在庫品を取扱う企業間取引サイト「オンライン激安問屋」や、日本全国のメーカーと小売店を繋ぐ卸・仕入れサイト 「スーパーデリバリー」だったというわけですね。

【次ページ】新規事業成功のキーワードは「時代の2年先を行く」
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