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- 2014/12/16 掲載
700年間伝承され続けた人材確保と社員定着率アップの秘訣とは:人を動かす極意
むかし話のネゴスターに学ぶ人を動かす極意
また、来年3月卒業予定の大学生・大学院生対象の大卒求人倍率の調査では、業種別で、建設業の求人数の増減率が38%と最も大きく、製造業が約25%、流通業が24%と続く。規模別では、従業員5000人以上では5%となっているが、300人未満では45%増となるなど、中小企業で新卒採用が拡大していることがわかる。
この調査でも明らかなように、中小企業では限られたパイの取り合いとなる可能性が高く、如何に人材を確保するのかは経営者にとって悩ましいところである。
どこかに人材確保と社員定着率のアップの二つを解決する得策はないものだろうか。
・ハーメルンの笛吹き男に学ぶ人材確保のカギ
ハーメルンの笛吹き男に学ぶ人材確保のカギ
グリム童話でおなじみの「ハーメルンの笛吹き男」は1284年に生み出されたと言われている。およそ700年前から伝わるこの民間伝承にはどのようなことが書かれているのかを紐解いていきたい。話はハーメルンに「プロの鼠捕り」を名乗る派手な衣装をまとった男がやってきて、報酬と引き換えに街を荒らすネズミの駆除を持ち掛けることから始まる。ハーメルンの人々は穀物を食い荒らすネズミに苦慮していたことから、男に退治の報酬を約束する。すると男は笛を吹き、その音色でネズミの群れを惹き付けると、ヴェーザー川(ドイツ中部に実在する川)におびき寄せすべてを溺死させた。ところがネズミ退治が成功したにもかかわらず、ハーメルンの人々は約束を破り、笛吹き男への報酬の支払いを渋る。
怒った笛吹き男はハーメルンの街を後にしたが、復讐のために再び戻ってくる。住民が教会にいる間に、笛吹き男は再び笛を吹き鳴らし、今度はハーメルンの子供たちを街から連れ去った。笛吹き男の後に続いた130人の少年少女は洞窟の中に誘い入れられ、男は洞窟を内側から封印。笛吹き男はもとより、洞窟に入った子供たちは二度と戻って来なかったのだという。
物語は古いだけに原話には諸説がある。笛吹き男が精神異常の小児性愛者だったというものや、戦争で街から子供たちが連れ去られたというもの。子供たちが自然要因や疫病などで死亡したのではというものなど。
ハーメルン市のサイトによると、「『子供達の集団失踪の伝説』は『ネズミ駆除の伝説』に統合された。この伝説はまず例外なく、中世の製粉所のある町の最大の脅威であったネズミの集団発生と、時には成功を収め、時には失敗する職業的ネズミ駆除人について述べている」とされている。つまり、笛吹き男の復讐は、約束された報酬がもらえなかった不満と今後もこのような不払いがあるのではという不安から、やけを起こした、ということになる。
この物語の主題は、ネズミ駆除人(従業員)に適切な報酬(給与や福利厚生)を払わなければとんでもない災難(倒産や吸収合併など)が待ち受けている、報酬を払うことこそが、その災いから身を守る手立てなのだという戒めなのである。この話が700年も前から伝承されてきた理由は、約束された報酬の支払いが資本主義経済の中で最も重要な不文律であるからにほかならない。
【次ページ】リストラは是か非か
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