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- 2014/03/20 掲載
村井慶應教授「痛い!って思ってることは、ユーザーの抽象化をやってこなかったこと」
Webの現在から未来へ:中編

インターネットを作ってきた中で、痛い! と思ったこと
新野■このまま村井先生には、この先の25年の話を引き続きお伺いしたいのですけれど、これからWebはなにが大事になっていくのでしょう?村井■やっぱり全員が使うでしょ、それからすべての産業が乗るでしょ。開発はボトムアップでできる、でもデザインはトップダウン。
新野■ボトムアップというのは?
村井■つまり、インターネットが速くなって常時接続が前提になるとWebができる。どこでもつながるようになるとモバイルができる、誰もが持てるようになるとモバイルのアプリができるわけで。下からどんどんできる。
ところがデザインはフロム・ザ・トップ。だからオレたちはは何がやりたいんだ、ということを先に考えるのは大事なこと。夢を見る。
その前提は、光ファイバが世界中をつないているとか、LTEは世界中のものをつないでいるとか、世界中のものがTCP/IPをしゃべるとか、すべてのものにWebサーバついているとか、そういう前提で考える、そういう発想がデザイン・フロム・ザ・トップだと思うので、そういう夢を見ましょうと。
新野■そういう世界が来るとして、少し続けてお伺いしたいのですが、まだ何か足りないものがあるとしたらなんですか?
村井■そこまで聞きますか。僕らがインターネットを作ってきた中で、痛い! って思ってること、やってなかった! って思っていることは、ユーザーの抽象化です。
例えば、UNIXだとUIDってなんとintger(整数)。番号ひとつで人間を表すって大丈夫かよと。だって共通のフレームワークがないでしょ、メタデータとか。いまやデジカメの写真の方が人間より標準化されたメタデータがついてますから。
人間はいろんな共通のアトリビュートとかビヘイビアとかあるでしょ、何歳ですか? 血圧いくつですか? とか、あらゆるデータがあるとして、こういうデータが全然標準化されていない。コンピュータシステムの中で人間は抽象化されてない。
これまで人間とコンピュータの世界にかなり線を引いて開発してきたな、と言う感じがして、これからもうちょっと人間を意識できるコンピュータの環境ってできるんじゃないかな、という夢は持っています。
新野■そのお話しの先には、社会システム的な話が広がってくると思うので、その話はひととおりみなさんに話を聞いた後で戻ってこようと思います。
続いて、夏野さんにも、この先の25年で大事だと思うものを教えていただけませんか。
【次ページ】 どうあるべきというのは攻殻機動隊の中に全て描かれている
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