- 2013/11/15 掲載
企業内ソーシャルソフトの威力 -先進事例に学ぶグローバルコラボレーション、ワークスタイル改革
本書では、アクト・コンサルティングが実施した、海外大手企業先進事例と国内大手企業の実態調査の結果を紹介します。調査の詳細は、「ITケーススタディーレポート2013」で詳しく紹介しています。
社内ソーシャルソフトとは、グローバルグループのプロフィール(人材台帳)や、コミュニティー、ブログ、チャットなどです。先行する海外大手企業では、ソーシャルソフトを用いた改革によって、以下の効果を上げています。
2)グローバルな衆知結集による創造力の強化
3)社員のエンゲージメント、モチベーションの向上
4)その他:低付加価値作業の削減、事業継続性の確保
1)経営スピードの向上
効果の1つ目は、経営スピードの向上です。ソーシャルソフトによって、かつては考えられなかったようなスピードで仕事が進められるようになっています。同様なことができない企業は、グローバルなスピード競争で、取り残されることになることになるでしょう。
以下に示す先進企業の推進者のコメントが、スピード向上のパワーを如実に物語っています。
『一昔前であれば(このような短時間の推進は)考えられなかったことだ。過去にワークスタイル改革で、出張旅費を何円削減するなどと言っていた時代と次元が違う。今や、このようなグローバルコラボレーション、ワークスタイル改革ができなければ、競争で勝つことはできない』
たとえばプロフィールを使えば、世界中から最も妥当な人材を探し、早期に問題を解決したり、短時間にプロジェクトを編成することができます。ファイルやアクティビティーの共有機能を使えば、地球の自転に合わせて作業を持ちまわり(フォロー・ザ・サン)、短時間で成果を出せます。過去に作られた関連する成果を見つけ、必要な改定を施して早期に成果物を作り上げることができます。
2)グローバルな衆知結集による創造力の強化
二つ目の効果は、グローバル衆知結集による、イノベーションの促進です。創造、ブレークスルーは、異なる知見や視野を持つ者同士が、衆知結集を行うことで実現できます。規模が拡大し、機能が細分化され、グローバルに分散した衆知(専門家や情報)を結集するには、仕組みやツールが必要です。先進企業では、既にグローバルグループの、あるいは社外パートナーまで包含した衆知結集ができるようになっています。このような企業が、部門内や限られた人脈の中だけでしか考えることができない企業に比べ、より高い創造力を発揮することに異論の余地はないでしょう。
グローバルな衆知結集を実現できた企業では、従来にない新しい世界観が、仕事の中に生まれてきます。以下に、先進企業の一般社員のコメントを示します。
『今までの上下関係という「縦」の世界と別に、同じ問題意識や興味を持つ「横」のつながりが、新たに出来上がった。グローバルコラボレーション、ワークスタイル改革は、自分の付加価値を高める、知的生産性を高める、自信を持って仕事をする、おもしろく仕事ができるために、今や欠かせないものになっている』
たとえば新しいテーマを検討する場合、かつては部内で聞く、ネットで探す、本を読むしか手段はなく、しかも時間がかかる割に得られる情報は少なかったものが、今は関連するコミュニティを覗いたり質問を投げると、大量の情報がすぐに集まり、早いうちに先が見え、自信をもって対応できるようになっています。研究所では、自社の社員を対象にした情報公開やコラボレーションを行うコミュニティを持っており、このコミュニティを通じて、市場情報や下流で発生する課題の早期把握ができるようになっています。営業では、たとえば大手グローバル顧客ごとにコミュニティがあり、そこを見れば、顧客グローバル本社の中期計画や重要課題などを知ることができ、競争相手よりも早く重要な課題に対応する提案を、顧客日本法人にもって行くことができます。場合によっては、顧客日本法人もまだ押さえていない顧客本社の情報を顧客に伝え、喜ばれることもあります。
3)社員のエンゲージメント、モチベーションの向上
三つ目の効果は、グローバルグループの社員のエンゲージメント、一体感の醸成です。たとえばブログを使えば、経営者やマネージャーが、自らの方針や戦略を、切り口を変えながら繰り返し部下に伝えることができます。また、現場からのフィードバックを受け、現場の実態に合わせた説明ができます。前述のコミュニティを用いれば、身近に同じ問題意識を持った仲間がいなくても、グローバルグループの問題意識を持った人とつながり、孤立せず、問題解決に向けて一緒に進むことができます。
たとえばCEO、マネージャーが、自分の方針をブログやビデオで公開している企業があります。CEOがビデオで語りかけ、直接「ご苦労様」と言うだけでも、社員の一体感は増すはずです。この企業では、マネージャーが四半期ごとに公開する事業方針を、グループの世界中の誰でも見ることが出来ます。そして社員は、これら戦略や方針に「いいね!ボタン」を押したり、コメントを送れます。これによって、他部門が何をやっているか理解が進み、これがコラボレーションを推進させていきます。
4)その他:低付加価値作業の削減、事業継続性の確保
その他の効果として、情報を探したり、同様な問い合わせに何度も対応するといった低付加価値作業を削減する、合理化効果があげられます。この効果は大きいため、ツールの投資は、測定可能な一部の効果だけで回収できています。これによって社員は、より付加価値の高い、創造性を求められる仕事に時間を割くことが可能になります。また、どこでもグローバルグループの誰とでもアクセスできる環境で、災害などに対応し、事業継続性を確保することができます。先行する企業の中には、管理職の仕事の中で、上からの情報を下に流すということが不要になり、管理職のミッションをより高度なものにシフトすると共に、管理階層を削減することを計画している企業もあります。
【次ページ】日本企業の実態
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