- 2012/12/11 掲載
ある小売店が父親よりも早く娘の秘密を知った理由は?ビッグデータを推進する2つの施策(2/2)
蓄積データと分析データの量にギャップ、それをどう埋めるかがポイント

取締役
安田 誠氏
世界で生成されるデータは爆発的な増加傾向にあり、今後8年間で40倍にのぼる35ゼタバイトまで増えると言われている。同社の安田氏はデータ活用のポイントを次のように語る。
「ビッグデータが重要かつ潤沢な経営資源であるという視点が求められます。蓄積データと分析データの量にはギャップがあり、それをどう埋めていくかということがポイントになります。」(安田氏)
同社ではデータをビジネスに活かすために、「データマイニング」による分析技術を駆使している。データマイニングは、膨大な量のデータから、機械学習などのアルゴリズムを使ってビジネスに有用なルール(パターン)を発見する技術だ。扱う変数が3個以上絡んでくると、人は同時に物事を判断できなくなる。実社会では顧客の数も変数も桁違いに多く、勘や経験だけでは意思を決定するには限界がある。そこでコンピュータを利用して、膨大なビジネス・データを分析する必要が出てくる。
データ分析に関して話題性のある事例として、安田氏は米国大手総合スーパー「ターゲット」の分析について触れた。ある女子高生のもとに、ある日ベビー服のクーポン券がターゲットから届いた。それを知った父親がスーパーに対して「高校生の娘に妊娠を持ちかける気か!」と抗議したが、実はその娘は本当に妊娠していたのだ。この出来事は米国で大きな波紋を呼んだ。TARGETは購入アイテムから顧客を分析し、父親より早く娘の妊娠と出産時期を高確率で割り出していた。サプリメントや無香料ローション、石鹸など、妊娠と関係して購買に変化がある品目から妊娠予測スコアを設定し、タイミングを図ってクーポンを送付していたという。同社は8年間で売り上げを200億ドル以上(2010年度)も伸ばした。
BIとBAの役割は異なる、相互に補完・連携が必要
BIとBAの違いとは何か? BIは企業内外のデータに基づいた分析によって、さまざまなデータを集計・可視化し、現状を把握することだ。まさにウイングアークが提供するBIツール「Dr.Sum EA」や情報活用ダッシュボード「MotionBoard」などによって実現できるものだ。
一方、BAはデータを分析し、それらのデータから将来のビジネス・アクションにつながる洞察や意思決定を導くことだ。さらに、これらの予測を業務改善に結びつけるためには、業務フローに基づいたビジネスプロセスも知らなければならない。BIとBAは役割が違うため、相互に補完し連携しながらPDCAサイクルをまわすことが重要だと安田氏は言う。
「現在の企業内での分析は、データクエリとレポーティング、集合統計、多次元分析といったBI分野がメインですが、データマイニングや最適化解析などのBA分野へ一層の進化の余地があります。特にマーケティング領域では、ユーザーの行動特性を過去の行動から予測し、その結果に基づく予測モデルよって、見込み客や顧客にパーソナライズされた最適なアプローチをかけられます。そのため企業の競争優位性を確保できるでしょう。」(安田氏)。
とはいえ、このようなデータ分析を企業内で実現していくためには、まだいろいろな課題が残っている。安田氏によれば「データ分析環境、人材面、ビジネス収支面という3つの大きな課題がある」という。
データ分析環境では、柔軟性と高度な技術が必要だ。ビジネスに最適なツールを選定し、増加・多様化するデータへの対応が求められる。人材面ではデータを分析する優秀な分析官を育成し、新しい分析手法を常にキャッチアップすることも大切だ。
また先ごろ、同社とウイングアークはマーケティングソリューションの共同開発を推進することに合意した。これはセールスフォース・ドットコムのクラウド「Heroku」で展開されるキャンペーンなどのマーケティング・アプリケーションと連携し、そのデータを自動的に分析、シミュレーションを行うものだ。
マーケティングからセールスまで一貫したデータ生成を行い、キャンペーンの効果測定・分析、売上予測に基づくリード管理、営業活動やマーケティング活動の集中化を行いながら、全社横断的に売上効果の最大化を実現する。さらにセールスフォース・ドットコムのCRM/SFAデータと連動するソリューションも共同開発し、3社で実証実験を行う予定もあるという。
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