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  • 2012/07/30 掲載

LIXIL、野村證券のiPad導入事例:「我々が求めたのは営業現場の革新」、トップダウンによる営業スタイル革新の経緯と成果

SoftBank World 2012レポート

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2012年3月時点の累計で、6万社以上の企業が導入済みのiPad。企業のビジネススタイルを変革する新たなツールとして注目を集めている。しかしやみくもにiPadを導入しても、本来得られるべき効果が期待できるとは限らない。前提条件として、企業としての狙いや目指すべき姿を明確にしておくことが重要だ。建材/設備機器メーカー大手のLIXIL、証券業大手の野村證券は、ともに全営業担当者にiPadを導入した。その規模はLIXILで6000台、野村證券で8000台におよぶ。SoftBank World 2012において、両社の経営トップが語った導入背景と実際の効果を詳細にレポートする。

LIXIL事例:5社統合後の営業スタイル革新を目指し、6000台のiPadを導入

photo
LIXIL
代表取締役上席副社長執行役員
LIXILジャパンカンパニー社長
大竹俊夫氏
 LIXILは、トステム/INAX/新日軽/サンウエーブ工業/東洋エクステリアの5社統合によって2011年4月に誕生した建材/設備機器の製造/販売などを展開する企業だ。海外30カ国に拠点を置き、グループ企業は200社以上、また従業員数はグループ全体で約6万5000人、売上規模は約1兆3000億円にのぼる。

 同社のiPad導入は、5社統合前の2010年10月にトステムから始まった。当時のトステムでは営業現場の革新を目指して、2000名いる営業担当者のうち、まず40名にiPadを配布し、2か月間の検証実験を行うことにした。

 具体的な目標は「本来の営業時間を増やすこと」。それを測る指標として、顧客の質問にその場で答える「即答スタイル」、現場からバックヤードにその場で連絡/依頼を行う「即対応スタイル」、電子カタログや動画コンテンツを利用して商品提案を行う「プレゼン強化」、ネットミーティングで会議などの数を減らす「いつでもコミュニケーション」という4つの項目を設定した。

 現在の各指標の達成度合いとしては、即答スタイルが90%、即対応スタイルが87%、プレゼン強化が100%と軒並み達成した。しかし、いつでもコミュニケーションについては、当時のiPadにまだカメラが搭載されておらず、顔が見えなかったことであまり機能しなかったという。

 元トステム社長で、現在LIXILの代表取締役 上席副社長執行役員 LIXILジャパンカンパニー社長である大竹俊夫氏は、この2か月間の検証実験の結果を次のように総括する。

「営業時間は1日当たり37分、約8%増やせることが確認できた。実際の効果が見えたことで、新しい営業スタイルは順次広げていくよりも一気に展開したほうがいいと判断し、残りの営業担当者すべてに配布した。」(大竹氏)

 そして2010年12月、旧トステムでは2000名の全営業担当者がiPadを持って営業活動を行うスタイルを確立させ、2011年4月の5社統合後には、LIXIL全体でより大きな成果を目指して、活用の深さ、幅を広げることを視野に入れて、iPadの導入を推進していった。

「統合時の営業現場では、商品情報が激増していた。トステム時代を基準にするなら約3倍だ。また販売体系も5社5通りで、そのままでは各社の商品しか扱えない。さらに組織拡大による情報遅延も大きな課題となっていた。」(大竹氏)

 そこでLIXILでは、顧客のスピードに合わせる経営を最優先に考え、顧客と直接接点を持つ営業現場の効率アップを目指し、まずトータルベスト/エリアベスト/パーソナルベストという考え方を社内に徹底させた。営業現場に責任と権限を持たせ、本社と強い現場の役割を明確にするというものだ。

 トータルベストは本社の役割で、全体最適の方針/基準を作ること、エリアベストはその基準に基づいてエリア特性を加味した地域最適戦略を現場で作ること、そしてパーソナルベストは、顧客の要望に合わせて営業担当者個々がベストの提案を行うことだ。

「この3つの取り組みを有機的に結合することで、意思決定スピードの速い体制を作り上げることができると考えた。」(大竹氏)

 LIXILではツール導入以前に、統合後の全社を貫く社内体制を確立させたということだ。こうして改革のスピードが上がる仕掛けを構築した上で、同社では新たに約4000台のiPadを導入した。

「トステム時代にツールの検証が済んでいたことで、速いタイミングでスタイルを変える体制ができた。やはり営業担当者に一気に配るという経営判断をして新たに約3000台を導入、バックヤードにも1000台入れた。トステム時代の2000台を併せて、現在では約6000台のiPadを活用している。」(大竹氏)

 また大竹氏は、タブレット端末を選んだ理由について「我々が求めたのは営業現場の革新。現場での利用を考えれば、使いやすいものでなければならない」と説明し、「起動の速さ、操作の分かりやすさは最大の条件。また紙の資料やPCにはないコミュニケーション手段やプレゼンも必要だと考えた」と強調する。

 さらに実際の導入に際しては、大竹氏自身も使ってみて、タブレットとして自社のニーズに応えられるかどうかの実感を得た上で、導入を前に進めたという。経営トップの積極的な関わりが、導入スピードそのものにも大きく関与していることが見て取れる。

【次ページ】カタログコストは約48%削減、営業訪問件数は1.7倍に
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