- 2011/11/24 掲載
「日本・アジア市場に最適化された製品を投入し、多様なデバイスニーズに対応したい」──Wyse Technology社 ジェフ マクノート氏(2/2)
Wyse Technology社 マーケティングおよび戦略最高責任者 ジェフ マクノート氏 インタビュー
Wyse PocketCloudはパーソナルクラウドを実現するキーテクノロジーへと進化
当初、PocketCloudを開発したのは、iPadで仮想デスクトップに接続し、サーバなどをメンテナンスできるようにするためでした。ところが、製品がリリースされると「自分のPC全体を見られるようにしたい」「オフィスの仮想マシンを自宅から見たい」……など、多くのお客様からさまざまなリクエストをいただくようになりました。
こうした提案をもとに、iPad上でWindowsをタッチ操作できるようにしたり、Macと接続できるようにしたりといった改良を行い、自宅のPC/MacやオフィスのPCなど、すべてのリソースを見られるようにしました。
この結果、iPadが対応していないFlashやをWMVファイルをiPadで再生できるようになり、ユーザーはPocketCloudさえあれば、どこにいてもPCにあるオーディオやビデオを再生できるようになったのです。
そこで我々は、「パーソナルクラウド」というコンセプトを作りました。これは、個人が利用している自宅やオフィスのPC/Macなどを1つの実体とみなし、自分専用のクラウドとして活用しようというコンセプトです。
たとえば、ある人が最新の履歴書が必要になったとき、PocketCloudで検索すると、すべてのリソースを調べて結果を返してくれます。これはまだ発表していないテクノロジーですが、パーソナルクラウドにインテリジェンスを追加する非常に楽しみなテクノロジーだと思っています。
──企業においては、PocketCloudはどのように活用されるのでしょうか。
ITのコンシューマライゼーションによって、すでに従業員が自分のiPhoneやiPad、Androidデバイスなどを社内に持ち込むようになっています。企業はこうしたデバイスを支配するのではなく、セキュリティを担保したうえで、いかにして有効活用するかを考えるべきです。PocketCloudは、そのために活用できます。
じつは、いま、ユーザーが企業の情報をもっと有効活用できるようにPocketCloudを機能強化するプロジェクトが動いています。これが実現すれば、たとえばDropboxなどのサービスを利用しなくても、パーソナルクラウド環境だけでファイルを移動・コピーしたり、印刷したりということが可能になります。その結果、企業はデバイスのコントロールがより容易になり、ユーザーは企業データをより活用しやすくなります。あまり詳しくはお話しできないのですが、デバイスに搭載されているカメラやマイクをフル活用するような機能も考えています。
パソコンは仮想デスクトップのエンドポイントデバイスとしては不適切
確かにパソコンでも仮想デスクトップにアクセスすることはできます。しかし、仮想デスクトップのコンセプトは「簡素化」です。つまり、最も合理的な場所に情報を集約することによって管理コストとセキュリティコストを下げることにあります。シンクライアントを使えば、あらゆるデータにアクセスできますが、デバイスの中にデータはまったくありません。データがないのですから、保護する必要もセキュリティのためにOSをアップデートする必要もありません。
これまで、企業は仮想化インフラのために膨大な投資をしてきました。仮想マシンをサポートし、それを管理するためサーバサイドで多大な投資をしてきたにも関わらず、エンドポイントがパソコンでは、セキュリティを維持していくために、さらに膨大なコストがかかってしまいます。したがって、仮想デスクトップのエンドポイントデバイスとして、パソコンは不適切と言わざるえません。これまで使ってきたからといってパソコンを使い続けると、いずれ大きなつけを支払うことになるでしょう。
──シンクライアントでは、パソコンのようなパフォーマンスは望めないのではありませんか。
確かに6か月前までは、2つのデバイスにパフォーマンスの違いがあったのは事実です。しかし、我々は新たなシンクライアントとしてGクラスを導入しました。これは非常に高速なデバイスで、ユニファイドコミュニケーションや3Dのアプリケーションにも対応しています。我々は、パソコンを上回るシンクライアントができるまで、開発の手を緩めるつもりはありません。
日本・アジア市場に最適化された製品を開発し、さらに投資を拡大
──日本市場についてはどう見ていますか。今後の方針もお聞かせください。我々は日本も含めたアジア地域が、今後最も成長が見込める地域だと考えています。実際に、昨年、日本市場は300パーセントの成長を達成しました。最も重要なことは、日本、そしてアジアに最適化された製品を提供することです。欧米では、弊社のWyse ThinOSおよびシンクライアントは大きな成長を遂げましたが、日本・アジアではまだ十分とはいえません。今後、さらに投資を拡大していく予定です。
5年前、日本市場に弊社のシンクライアントを投入したとき、Wyse ThinOSだけにフォーカスしました。当時は、まだWyseのブランドが十分ではありませんでしたし、パートナーとの関係も立ち上がったばかりだったからです。すでに欧米ではさまざまなシンクライアント製品をリリースしていましたが、いきなり大きな風呂敷を広げても、伝わらないと考えたのです。
実際に、2年前は日本での売上はWyse ThinOSでほぼ90パーセントを占めていました。ところが昨年は、Wyse ThinOS以外のWindows Embeddedやモバイル用のクライアント、PocketCloudなどが伸びて、全体の売上の約40%を占めるまでに成長しました。その結果、300パーセントの成長率を達成できたのです。
今後、市場が成熟するにつれて、ユーザーのデバイスのへのニーズはさらに多様化すると考えています。弊社も、それに合わせて商品のラインアップを広げてきたいと考えています。PocketCloudに関しても、アンドロイド版を企業向けに直接販売するなど、さまざまな施策をスタートしたところです。
──本日はありがとうございました。
(取材・執筆 井上健語)
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