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シスコシステムズは2日、2012年度の事業戦略説明会を開催した。2桁成長を実現した2011年度に続き、「Ignite Japan」を掲げ、新事業年度では「上流工程と連携したインプリ」を重視したソリューション展開を図る。その一環としてエンタープライズ向けでは、金融、製造、流通、ヘルスケアなどの業種別ソリューションを拡充していく。
シスコは2011年度、「Ignite Japan」を標榜し、日本を活性化する取り組みを実施してきた。震災などに伴うコア製品(スイッチ/ルーター)の需要に加え、ビデオ会議システムなどの新商材も拡販できたという。平井康文社長が「バランスの良い成長ができた」と振り返るように、グローバルの中でも日本は堅調な2桁成長を実現した。
2012年の新しい事業年度を迎えるにあたり、平井社長が協調したのがビジネスへの貢献だ。
「分母となる効率性の向上、分子となる生産性の革新、そこにかけ算となるイノベーションを加えることで、組織の価値を高めるお手伝いをしたい」(平井社長)
生産性を向上させるものとして「パーベイシブビデオ」、効率性を向上させるものとして「クラウドサービス」、イノベーションを実現するものとして「インテリジェントネットワーク」の3つの分野に注力する考えを示した。
さらにこれらのサービスを支えるプラットフォームとして、「Virtualized eXperience Infrastructure(VXI)」を位置付けた。
パーベイシブビデオとは、従来固定されていたビデオを「もっとパーソナライズしていく」もの。スマホ利用やビデオチャット、デジタルサイネージ分野で「1対1」、「1対多」、「多対多」でコミュニケーションできる製品群を展開する。
クラウドでは、2009年4月に買収したTidal社の運用自動化製品、2011年3月に買収したnewScale社のセルフサービスポータル製品を組み合わせた「Cisco Inltelligent Automation for Cloud(CIAC)」を12月1日からスタートする予定で、クラウドプラットフォームのUCS(Unified Computing System)製品群を組み合わせて提供する。
これらの根底にあるVXIでは、各種パートナーとのエコシステムの確立を強調。シトリックスやヴイエムウェア、マイクロソフト、EMC、NetAppらとのパートナーシップを強化するとともに、シスコが核になって、「新しいパートナーエコシステムを確立し、VXIを広げていきたい」(平井社長)とした。
エンタープライズ&パブリックセクター事業戦略では、新興国が生産拠点から消費拠点にシフトしてきている背景から、企業のグローバリゼーションを支援する姿勢を表明。調達から保守までのワンストップサービス、グローバルなITガバナンス、コミュニケーションの多国籍化、ナレッジリソース提供を掲げた。
さらに「金融」「製造」「流通」「公共ヘルスケア」など産業別にビジネステクノロジーを実現するソリューションを拡充する意向を表明。
たとえば金融分野では、金融商品のエキスパートが、ビデオ会議の仕組みを使って商品説明をするような仕組みや、RFIDを搭載した特別なカードを特別な顧客に持ってもらい、来店時に特別な対応を行う富裕層向けサービスなどが考えられるという。
製造業では、設計図をシェアしながら進めていく取り組みが一般化しているほか、工場を丸ごとIT化する支援を進めていく。
流通業では、仮想店舗とリアル店舗の融合を進める「Mashop」を実施し、SNSとコンタクトセンターを組み合わせた新しい顧客価値創造を手がけるという。
サービスプロバイダ向け事業戦略では、スマホの普及などでパンクしつつあるネットワーク環境の改善提案を実施する考え。Next NGNを標榜し、スケーラビリティ工場と、クラウド、ビデオ対応を加速していく。
発表会において平井社長が多用していたのが「ビジネスアーキテクチャ」という言葉だ。同社では新たにBSC(バランススコアカード)の視点を導入し、財務、環境の視点 セルフチェックに取り組んでいるが、これを「ベストプラクティスを顧客へ提供できるのではないか」(平井社長)とするなど、今回の発表では一貫してビジネスへの貢献を強調していた。
IBM、オラクル、HPなど大手ITベンダーは昨今、従来の専業モデルから、垂直統合型のITソリューションの提供へとシフトしつつある。シスコも、パートナー戦略を重視しつつも、ビジネス課題への解決に向けたソリューション型の提案体制を人的にも組織的にも強化していく。こうした取り組みは、「円高や震災などのチャレンジにおいて、LAN/スイッチの更改だけでなく、新しいプロジェクトでお声がけいただけるようになった」と平井社長が語るように、既に一定の手応えを感じているようだ。
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