- 会員限定
- 2011/07/13 掲載
海外拠点でのソフトウェア違法コピーに対する危機管理対策術--新興国でのIT活用の落とし穴
経済産業省 情報処理振興課 課長 高橋淳氏ら
模倣品/海賊版による被害の現状
模倣品とは“真似して作られたもの”ということで、主としてモノづくりの分野で多いものだ。一方、海賊版は“正規のライセンスを受けていないもの”が勝手に流されるということで、ソフトウェアについては基本的にこちらが問題になる。
模倣品/海賊版による悪影響としては、第一に正規品の売上減少が挙げられる。一昨年、特許庁が行ったアンケート調査によれば、回答企業約4300社のうち、約4分の1が何らかの形で模倣品/海賊版の被害を受けたと答え、その金額総計は約1,000億円にものぼる。
「これは最近特に増えているものではなく、一定の規模で定着してしまっているもの。逆にいえば、毎年確実にこれぐらいの損害は出るようになっているということ」(高橋氏)
またその販売ルートを辿って行けば、犯罪組織の財源になっているケースが非常に多く、副次的な社会への害悪も挙げられる。知財制度の趣旨を阻害している点については、いうまでもないだろう。
参考までに、日本企業が模倣品の被害を受けている地域としては、突出して中国が高い。次いで台湾、韓国と続く。また模倣品の製造国としても、中国が高い水準で推移しているという。
世界的な模倣品/海賊版対策:TRIPS協定、ACTA
こうした状況の中、模倣品/海賊版に対する公的な取り組みとして、さまざまなアプローチがなされている。現在最も機能しているといわれる枠組みが、WTO(World Trade Organization:世界貿易機関)設立協定の一部であるTRIPS(Agreement on Trade-Related Aspects of Intellectual Property Rights:知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)だ。
TRIPS協定は、知的財産の分野について、世界各国が守るべきルールを作ろうということで1994年に規定されたもの。特許業務法人 有古特許事務所 所長で弁理士の中尾優氏によれば、特許優先権制度などを規定した「パリ条約」と未登録の外国著作権の保護などを規定した「ベルヌ条約」の実質的な履行を義務付けるものだという。
具体的には、商標/意匠/特許の最短保護期間が明記されており、権利行使に関しては、証拠/差止命令/損害賠償といった国内制度が義務化されている。
また加盟国間に紛争が発生した場合には、パネル協議(=知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会:TRIPS理事会)でそれを処理することになる。
ただし経済産業省の高橋氏は、TRIPS協定では、入ってくるものが自国の著作権法に照らし合わせて違法なら、輸入国側で差し止めてください、ということは決められているが、輸出についてはまったく何の枠組みも持っていないという点を問題視する。たとえば中国が模倣品を作って輸出をするという時には、何の規制もないということになるわけだ。
「極端な話、TRIPSの枠組みだけでは、模倣品/海賊版は輸出し放題ということになってしまう」(経産省 高橋氏)
また輸入規制の枠組みも、誰か権利を侵害される人が、“こんな製品が国内に入ってきたら自分たちのビジネスがおかしくなるので差し止めてください”と申告して初めて、発動する仕組みになっているという。
そこで現在、日本や米国、EUなどの先進国では、ACTA(Anti Counterfeiting Trade Agreement:模倣品・海賊版拡散防止条約)というものをまずルール化して、その後発展途上国にも加盟を促そうという流れを作ろうとしている。
「ターゲットは基本的に中国」(高橋氏)
ACTAでは輸出規制や税関職員の自主的な輸入規制を義務化して、高いレベルの条約にしようとしている。
「現在大体条文がまとまり、各国へ賛同してくださいという運動を始めたところ」(高橋氏)
当然中国からすれば、ACTAに加盟すれば、自分で自分の首を占めることにもなり兼ねない。加盟するとしても、さまざまな取引材料を持ち出してくることが予想されるが、「我々の一つのゴールとしては、これにきちんと中国を巻き込んでいくということ」(高橋氏)。
【次ページ】企業の盲点となる違法コピーとは?
関連コンテンツ
関連コンテンツ
今すぐビジネス+IT会員にご登録ください。
すべて無料!今日から使える、仕事に役立つ情報満載!
-
ここでしか見られない
2万本超のオリジナル記事・動画・資料が見放題!
-
完全無料
登録料・月額料なし、完全無料で使い放題!
-
トレンドを聞いて学ぶ
年間1000本超の厳選セミナーに参加し放題!
-
興味関心のみ厳選
トピック(タグ)をフォローして自動収集!
投稿したコメントを
削除しますか?
あなたの投稿コメント編集
通報
報告が完了しました
必要な会員情報が不足しています。
必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。
-
記事閲覧数の制限なし
-
[お気に入り]ボタンでの記事取り置き
-
タグフォロー
-
おすすめコンテンツの表示
詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!
「」さんのブロックを解除しますか?
ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。
ブロック
さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。
さんをブロックしますか?
ブロック
ブロックが完了しました
ブロック解除
ブロック解除が完了しました