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  • 2011/06/22 掲載

LinkedInが変えるスタートアップ企業の上場方法:○○はビジネスになるか(23)

Facebook、Grouponの上場はITバブルの再来となるか

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今、シリコンバレーの高級住宅地の販売価格が大幅に上昇している。その背景にあるのがSNSなどの相次ぐ新規上場だ。先月20日、ビジネス向けSNSのLinkedIn(リンクトイン)がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場した。初日の終値ベースの企業価値は88億ドル(約7000億円)で、IT企業では2004年のGoogleに次ぐ大型株式公開である。これまでも中国SNS最大手の人人網(Renren)、インターネット・ラジオのPandora Mediaなどが上場しており、さらに今後はGrouponやFacebookなどの上場も控えている。これら一連の上場の恩恵にあずかった従業員が住宅地を求め、価格の高騰を招いているというのだ。これらはソーシャルサービス時代の本格的幕開けか、それともITバブルの再来か――。
執筆:行宮 翔太

1億人のビジネスネットワーク

 LinkedInは5月19日、784万株を一株45ドルで売り出した。初値はその2倍近い83ドルが付き、94.25ドルで引けた。終値で計算した時価総額は約88億ドル相当ということになる。株価はその後、6月第2週末で75ドル程度に落ち着いているが、それでも時価総額は約65億ドル相当という高止まりだ。同社の2011年12月期の売上高は5億ドル程度というから、なお13倍の価値が認められていることになる。日本のSNSで“勝ち組”と言われるディー・エヌ・エー(モバゲー)でさえ、2011年3月期の売上が1,029億円に対し、その時価総額は4,765億円と5倍弱だ。

 LinkedInは2003年にサービスを開始したソーシャルサービスの老舗で、プロフェッショナルが集まる「ビジネス・ネットワーキング」を売り物にしている。“ビジネス履歴書のSNS”ともいわれるように、ユーザープロフィールには、学歴や職歴など一般的な情報だけでなく、具体的にどこの企業で、どんな仕事をして、何を感じたかまでを詳細に書き込める。

 LinkedInは、さまざまなSNSの中でも独特の存在感を放ってきた。プロフィールからは、登録ユーザーがどんなスキルを持ち、どんな仕事を期待できるかまで判断できる。これによって、個人は新しいチャンスをつかみ、人脈を広げ、企業は広い範囲の業種で相手のスキルを見極めながらリクルートができる。

 基本機能は、学校時代の友人や、かつての仕事での仲間との接触を復活させる「Re-connect」、求人を探せる「Power your career」、さまざまな分野の専門家に質問できる「Get answers」の3つ。さらにビジネスのディスカッションの場にもなる。収入源は、未知のユーザーにもコンタクトできる有料会員(サブスクリプション)、求人情報、企業広告が3本柱という。

 LinkedInはまず、テクノロジー業界に浸透し、「シリコンバレーでのビジネスに欠かせない」とまで言われるようになり、さらに業種、地域を拡大していった。2009年からは海外展開を加速し、現在、英語、フランス語、ドイツ語など欧米6カ国語でサービス。ユーザーは今年3月に1億人を突破した。「2010 Fortune 500」にランクされている企業では、経営幹部のうち1人以上がLinkedInに登録しているという。

SNSとは異なるビジネスネットワーク

画像
LinkedInのCEO、Reid Hoffman氏のサイト内での情報
 数だけで言えば、1億人は、Facebookの6億人というユーザー数には、到底かなわないように見えるが、両者は質の面で大きく違う。

 共同創設者で会長のReid Hoffman氏は、ソーシャルネットワークサービスの世界では有名な人物だ。スタンフォード大を卒業したあと、オックスフォード大で哲学のMAを取得。90年代に、早くも最初のソーシャルサイト「SocialNet」を立ち上げた経験もある。PayPalの役員を務め、投資家としてもさまざまなベンチャーの立ち上げにかかわった。その中には、最初にブレイクしたSNSであるFriendsterや、Facebookも含まれている。

 Hoffman氏には、もとよりLinkedInでFacebookに対抗する気などない。彼はその豊富な経験を背景に、ソーシャルサービスは、ビジネス向けとプライべート向けの2つに分かれると考えている。そのビジネス向けソーシャルサービスがLinkedInなのだ。

 Hoffman氏はインタビューで、ビジネスネットワークの役割について、こう答えている。「LinkedInは、いかに自分のキャリアを向上させるかということに利用される」「どのようにして与えられた問題を解決するかとか、どのようにビジネス・チャンスをつかんで、さらにビジネスの分野で自分を磨くか、ということだ」。

 こうしてLinkedInは類似サービスの追随を許さない企業に成長し、巨額の資金を集めた。IT業界からの久々のスーパースターである。だが、LinkedInの株式公開には、別の大きな意味もある。

【次ページ】非常に“巧妙な”上場方法
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