- 2010/09/07 掲載
【インタビュー】爆発的に増える情報に飲み込まれないために、いま企業が考えるべきこととは
みずほ情報総研 平古場浩之氏、伊藤豪一氏 インタビュー
爆発する情報を整理しきれない企業
「デジタルデータ量が爆発的に増え続けている理由のひとつには、画像や動画などによるデジタルコンテンツのリッチ化が考えられます。さらに、ツイッターやソーシャルネットワークの登場により、これまでは残らなかった情報までもがデジタル化され、蓄積されるようになったことも大きな理由です。また、これらデータの活用上の問題として、デジタルデータは簡単にコピーできるために、利用者によるデータの複製が際限なく増えていることも大きいですね。」(平古場氏)
企業においても事情は同じだ。多くの企業は、生産性を上げるために、これまで扱わなかった情報を増やそうとしている。たとえば、消費者のツイッター上のつぶやきを集めたり、社内にソーシャルネットワークの仕組みを導入して組織を超えたつながりを作り、情報の共有・活用を図ったりしている。
その結果、企業で発生する情報は爆発的に増加している。しかし、発生された情報をうまくマネジメントできているかと問われれば、ほとんどの企業はいまだ試行錯誤の中にあるのが現状なのである。
(※1)
1TB(テラバイト)=1024GB(ギガバイト)
1PB(ペタバイト)=1024TB(テラバイト)
1EB(エクサバイト)=1024PB(ペタバイト)
1ZB(ゼタバイト)=1024EB(エクサバイト)
情報の種類と情報ライフサイクルの関係
「たとえば、金融機関であれば、お客様が申込書を書き、窓口の担当者がそれをチェックし、さらに必要に応じ専門の担当者がチェックして……というように、すべての意思決定が文書で行われます。これを文書主義といいますが、文書主義のビジネスモデルでは、各業務プロセスを情報が文書の形で流れていきます。こうした情報はプロセス型の情報といえます。一方、マーケティングや商品企画などの戦略的な意思決定で使われる情報があります。当然、情報の種類によって使い方や管理方法は異なるはずですが、うまく使い分けられている企業は、ごくわずかです。」(伊藤氏)
ただし、種類は異なっても情報のライフサイクルそのものは変わらない。図1に示すように、「作成」から「廃棄・更改」にいたる情報のライフサイクルは、プロセス型の情報でも意思決定のための情報でも共通である。異なるのは、中心がどこにあるかだと伊藤氏は説明する。
「たとえば、文書主義のビジネスモデルを持つ金融機関を例にすれば、『作成』はお客様が書く申込書になります。そして、業務の主体は、『口座の開設手続き』とか『融資手続き』や『毎月のカード請求手続き』といった、ある決められたルールに従った手続き処理になりますから、それに応じた情報管理が必要になってくるはずです。これは、下の図の『レビュー』に相当します。一方、意思決定のための情報はいろんなところから入ってきますから、『レビュー』よりも、入ってきた情報をうまく整理・分析して効果的に見せるための『公開』や『配布』のウェイトが高くなります、このように、情報の種類によって情報ライフサイクルの中心は異なるのです。」(伊藤氏)
ツール縦割りの情報蓄積と紙・電子データの二重管理
情報の種類に合わせて適切な情報ライフサイクルを回すこと。それが爆発する情報への効果的な対処方法だが、多くの企業はそうなっていないと、伊藤氏は次のように説明する。「多くの場合、同じ対象に対するさまざまな情報が、たとえば、業務のシステム、グループウェアの掲示板、メール、BIツールなどに別々に格納されています。さらには、最近ではiPhoneなどの携帯端末やツイッターなども登場してきています。このように、ツールごとにさまざまな情報が蓄積されていますが、1つにまとまっているわけではありません。たとえ物理的には1つのストレージに保存されていても、対象ごとに横串を刺して情報をまとめるといった処理はできません。こうした『ツール縦割り』の情報蓄積に組織の縦割りが加わり、同じような情報があちこちに散在しているのです。これは、ビジネスプロセスがツールに振り回されている、あるいは、プロセスごとに縦割りでツールを導入した結果であると考えています。したがって、どの情報がどのビジネスプロセスに必要なのかを整理し、情報の『入力』『処理』『出力』を再整理する必要があるのです。」(伊藤氏)
また、平古場氏はツールが提供するワークフローと現実の文書管理のあり方のギャップにも問題があると指摘する。
「業務としての文書管理が、文書管理システムやワークフローシステムに完全に置き換わった、というケースはあまり多くありません。もともと『ペーパーレス』を目的にシステムを導入したにもかかわらず、実際には紙の文書が正本のまま運用されていて、決裁者が気づくため、あるいは文書が誰の手元に存在しているかをトラッキングするために文書管理システム上のワークフローが回る、というように、二重管理に近い状態になっているケースは、多くの企業で起こっているのです。」(平古場氏)
情報爆発への処方箋となりうるECM
爆発的に増加する情報、これまでは保存されなかった新しいタイプの情報、ツールごとにバラバラの情報蓄積、なくならない紙文書……等々。企業を取り巻く情報環境は複雑さを増している。そこで注目されているのがECM(Enterprise Contents Management)だ。ECMは10年ほど前から出てきた考え方で、「組織のプロセスに関連するコンテンツや文書を収集・管理・蓄積・保護・配布するための技術、ツール、手法」のことを指す。
「たとえば、Webサイトを作成するときは、情報を収集し、コンテンツを作り、公開し、バージョン管理を行い、古くなり情報の価値がなくなればコンテンツの更新・廃棄を行います。それと同じ考え方で企業内のあらゆる情報も同様にその価値に応じた適切な管理を実現しようとするのが、ECMの基本的な考え方です。」(平古場氏)
したがって、特定のツールや手法のことではなく、「ワークフロー」や「文書管理」なども含んだより大きな概念が「ECM」ということになる。
また、情報を適切に管理するために、必要に応じて最適なツールを採用することも必要だ。すこし、漠然とした印象を受けるかもしれないが、たとえば、先進的な事例として、RFIDのチップを活用した文書管理ソリューションなども、ECMのひとつということが言える。
「文書管理の中心が紙の場合ですが、あらかじめ稟議書にRFIDのチップを貼ると、稟議箱に入れるだけでセンサーが読み取って、『誰が承認したのか』『いま、どこまで承認されているか』といった状況管理ことがシステム側でも確実にわかるようになります。また『この情報は3年後に廃棄』『半年ごとの確認が必要』といった情報を書き込んだチップを文書や文書を保管する段ボールに貼り付けることで、文書の紛失を防いだり、システムとの整合性をとったりするケースもあります。」(平古場氏)
伊藤氏が基調講演に登壇する9月16日開催「ワークフロー改善 ECM活用セミナー~他社に差をつける文書管理のポイントとは?」では、このECMの全体像とともに、具体的なソリューションも紹介される予定だ。ぜひ足を運んで、今後の情報爆発への備えとしていただければと思う。
(取材・執筆 井上健語)
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