• 2007/02/22 掲載

ファクトベースの経営を実践する

べリングポイント マネージャー 中嶋 功 氏

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企業経営における意思決定は、ファクトベースでいかにものを考えることができるかが重要である。そのためには、バイアスのかかっていない素のデータを迅速に取得できるかがポイントとなる。それを支える仕組みとして注目を集めるビジネスインテリジェンスツール。このツールを通じた経営情報の提供と共有化の重要性について考察する。

レポーティング業務の増加が、
データのサイロ化を生み出している


【ファクトベースの経営を実践する】べリングポイント マネージャー 中嶋 功 氏
べリングポイント
 マネージャー
中嶋 功 氏
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≫総受講時間:29分51秒/100kbps
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 経営管理に必要な情報とは何かを解説する前に、経理・財務や経営企画部門に関する課題、ニーズについて見ていきたい。そもそもビジネスインテリジェンスという分野では、情報に関するユーザーの要求を満たすことが主眼になっているが、その要求を完全に満たすことは非常に難しい。しかし、ビジネスインテリジェンスを含んだ全体的な視点で見れば、そのあるべき姿というものを持ちうるのではと考えている。

 例えば経営層に経営管理情報を提供するべき経理・財務部門。現在の業務目的は仕訳や帳簿を作成するという数字を作ることが中心になっている。そのため、ビジネスプランニング、経営・財務リスクの測定/管理、レポーティング、取引処理(仕訳等の作成)という経理・財務の4つの主要業務の中で特に付加価値の低い取引処理に時間が割かれている。しかし、将来のあるべき姿というのは、多角的な分析やシミュレーション、つまり数字の意味を探り提供することである。これを実現するには、従来の業務の中心にあった取引処理はシステムで効率することが必要で、経理・財務リスクの管理/測定、レポーティング、ビジネスプランニングをバランスのとれた形で強化していくことが必要となる。

 だがそうしたあるべき姿に、実際はなかなかたどり着けていないのが現状だ。要因として考えられることは、取引処理やレポーティング業務が増大し、取引処理のシステム化による効率以上に、業務を行なう人員一人あたりの作業量が増加したのである。結果、ビジネスプランニングや経理・財務リスクの測定/管理といったマネジメントサポート業務の強化が図れていないのである。

 レポーティング業務の増加は、さまざまな要因がある。連結決算などへの全社的な対応がないままグループ経営を実施することになったり、四半期決算、月次決算への対応、キャッシュフロー経営への対応が不十分だったりといったケース、社外取締役などを設置し経営と執行を分離したために報告対象が増えたことや、株主重視経営への転換、グローバル化、多角化への進展といったことが主な要因にあげられる。

 こうして企業の中で実際に見る対象となるデータが格段に増えると、データがサイロ化するという新たな問題が発生してしまった。多くの企業は、データを保存するデータソースシステムにはある程度投資してきたが、全社的な情報戦略を軽視してきたために、情報をうまく活用できない状況になってしまった。個々の担当者が手作業でレポートを作成しているという実態により、事実を語るデータが社内に複数存在するようになってしまった。それらのレポートは部門ごとにバラバラで、しかも相互にリンクされていない。各部署を通じてしかデータを取り寄せることができないという非効率や、スタッフの負担を増やす「見えないコスト」を生んでいるのである。


経営管理情報を理解し、
ファクトベースの経営を実践する


 このような状況でファクトベースの経営を行うには、経営管理情報がどのようなものであるかを理解しておく必要がある。経営管理情報を定義するには、次の4つの要件が必要だと考えている。

 まず1つ目は、『経営に有効な情報のみ最小限に厳選されること』だ。経営情報に選択されるべき情報は、第一義には現在の状況や問題把握に必要な情報、そして可能であれば将来の予測のための情報となる。2つ目は、『経営管理情報は分かりやすいものであること』。情報は、それを使う人間がその意義を理解して、どのような方法でその情報が導き出されたかいうところまで理解できるようしておく必要がある。3つ目は、『経営情報は最適のタイミングで提供される』ということ。経営情報がリアルタイムで提供されるのが良いという論調もあるが、これは企業にとってハードルが高い。むしろリアルタイムよりも適時、適切なタイミングで提供していくほうが必要である。そして最後が、『取得コストに見合った経営情報であること』だ。

 では、このような経営管理情報は、どのように取得され、再利用されるべきだろうか?
経営管理情報の取得の連鎖は、知識を集めてインフォメーションとし、それをインテリジェンスにしていくというループの形になる。業務システムで溜めたデータをインフォメーションとして蓄積し、経営管理情報(インテリジェンス)に変えていく。そして意思決定に活用する。再利用できるところまでいけば経営管理情報としては最適だ。こうしたループは最新のビジネスインテリジェンス(BI)のテクノロジーを利用することで、すでに実現可能なところまできている。

 ファクトベースの経営管理情報、経営管理レポートを実現するには、企業に蓄積されたデータを信頼性のあるただ1つの事実データとして、提供する仕組みが必要だ。そして、それには出所確認を行なうトレーサビリティ(出所確認)の技術が欠かせない。作成されたレポートは、スコアカードやWebベースの共通システムで全社的に共有する。Webベースなら、事業別、地域別にリンクを張って、詳細なデータまでたどり着くことが可能である。

 ビジネスインテリジェンスへの取り組みでは、個人が使えるようなツールやシステム、そしてデータの標準化、データの品質といったところまで注力して、ワンファクトで効率的な経営情報の提供を行なっていくことが将来の発展に必要だ。内部統制のコントロールに対して従来のレガシーシステムでは対応しきれない企業も出てきている。そうした企業では、非効率かつリスクの増大を招くデータインタフェースを、効率的かつ信頼性のあるものに再構築することも視野に入ってきている。

※当記事は(2006年11月28日に行われた)日本ビジネスオブジェクツ主催、『The Power of Business Intelligence』で行われた事例講演をもとに作成したものです。  

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