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  • 2010/01/08 掲載

IT Savvy、企業がITから最大価値を引き出す方程式--MIT CISR会長Peter Weill氏

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IT Savvyとは、ITを戦略的に活用できている企業のことを指す言葉として、昨今注目を集めているキーワードだ。同語を提唱したマサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営学大学院の情報システム研究センター(CISR)会長兼シニア科学研究員Peter Weill氏が、IT Savvyな企業とはどのような企業か、また、IT Savvyな企業になるにはどのようにしたらよいのか、セブンイレブン・ジャパン、BMW、P&Gなどの事例をもとに紹介した。
2009年度CISR調査から見る「IT Savvy」な企業


Peter Weill氏
MITスローンスクールCISR
(情報システム研究センター)チェアマン
MITシニアリサーチサイエンティスト

企業におけるITの戦略的インパクト、価値、ガバナンスに焦点をおいた研究を行う。産業界向けフォーラム、経営者教育、MBA向け教育を実施。2008年に、Ziff-Davis and aweek,comから「ITにおける最も影響力のある人」のひとりに選ばれた。ITガバナンス研究における世界的先駆者であり、最近は「IT Savvy」を提唱し、世界へ活動の場を広げている。

 「IT Savvy」という言葉をご存知だろうか?仏語に語源を持つ「Savvy(サビー)」とは、「高度な」「分かっている」などの意味の英語だ。つまり、IT Savvyとは、ITを戦略的に活用できている企業のことを指す。「『ITガバナンス』という言葉が“守り”の面が強調されているのに対し、もっと“攻め”の面でITの重要性を打ち出す言葉(NRI 淀川氏)だという。

 同語の提唱者で、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営学大学院の情報システム研究センター(CISR)会長兼シニア科学研究員のPeter Weill氏は、先ごろ『IT Savvy』という書籍をHarvard Business Pressから出版した。Peter Weill氏は「企業がどうすればITから最大価値を引き出せるか」について、CISRが設立された1974年から研究に取り組んできているが、その答えは「IT Savvy」な企業となることだという。

 この書籍出版にあたり、MIT CISR(Center for Information System Research)が、世界の600社以上の企業の調査を行った(2009年度CISR調査プロジェクト)結果によれば、7%の企業が、IT Savvyと呼べることが分かった。

 この7%のIT Savvyな企業は、デジタル化により業界平均を20%も上回る売上純利益率を達成しており、プロセス、データ、アプリケーション、テクノロジーなどを共有することにより業界平均を30%も上回るROA(純資産利益率)を実現しているという。

セブンイレブン・ジャパンのケース――仮説・検証を店舗ごとに実施

 では具体的にIT Savvyな企業はどこだろうか。Peter Weill氏は、日本ではまずセブンイレブン・ジャパンだと指摘する。同社について「日本国内に1万2,000店舗、世界に3万店舗を展開しており、経営は非常に成功した。おかげで、米国の本社を買収してしまった。同社の粗利率は31%であり、小売業で世界No.1の地位にある」と高く評価。中でも実際のセブンイレブンの店舗で最も感銘を受けたことは、「各店舗の商品の70%が新商品で占められていることだ」という。

 「マネージャーは一人ひとりが特定のカテゴリーの商品の注文に責任を持っており、端末を肩から下げている。たとえばあるマネージャーはアイスクリーム30個を並べる棚の責任を持っており、400店舗をカバーする発注担当者は天候や学校の休みなどの条件に応じて、どのアイスクリームを注文するか、『月曜日にはこれで行こう』と仮説を立てて発注する。2~3日経つと、『あなたの仮説は当たっていました』とか『はずれました』とメッセージが来て、『次は何にしますか』と促される。このPOSシステムとその活用はまさに『Savvy』であり、とくに店員が情報を持っていて仮説を立てて発注することと、店舗ごとにデータを活用し、品揃えに工夫を凝らしている」(Peter Weill氏)

IT Savvyな企業の3つのこだわり

 Peter Weill氏によれば、ITを戦略資産としてとらえ、全社的な業務プロセスとITの実践を通じて、他の競合企業よりも良い結果を出しているIT Savvyな企業全般に通じる「一般的な慣行、やり方がある」という。その結果IT Savvyな企業に見て取れたのが次の3つの特徴だった。

  1. 問題があれば正そうとする、もしくは壊れていたら直そうとする力が働くこと
  2. 小さなシステムをあちこちにつくる代わりに適切な部分を次第に積み上げていく
  3. プラットフォームを有効活用する


 まず1点目だが、セブンイレブンの場合、使っている技術そのものは他と異なるものではない。ただ、問題があればそれを正そうとする力が働いている。その力は2つあって、1つは全社的ITポートフォリオの積極的に管理されているということ。つまりIT投資のリスクとリターンに優先順位をつけ、重要なもの、意味あるものに絞られているということだ。もう1つはガバナンス、意思決定における権限および責任の明確化を行っているということ。つまりIT費用の管理・審査について、「どこにいくら使うのか」、「どういったアーキテクチャを採用するのか」、「どういう基準を使うのか」などについて、「だれが意思決定の権限を持つのか」、「だれが説明責任を持つのか」を明確にしていることだという。

 次に2点目だが、IT Savvyな企業は小さなシステムをあちこちにつくる代わりに適切な部分を次第に積み上げていく。その際、そのシステムが将来どうなるかという明確なイメージを持っており、ITプラットフォームを考えるうえで、経営と密接に関連しているという。要は費用対効果(ROI)の計算をプロジェクトベースだけでなく、プラットフォームの視点からも計算しているのである。たとえば公共料金の支払い管理システムの場合、それが「顧客一人当たりの収入にどれほどの影響を与えるか」、「在庫などの指標をどう変えるのか」ということも把握できるようにすることである。

 そして最後の3点目はプラットフォームを有効活用することだ。IT Savvyな企業はビジネスプロセス、アプリケーション、データなどを有効的に再利用することで、新商品開発の短期化を実現する。新しいピースが必要となったときに、もう一度初めから作成するのではなく、元々存在するものにブロックを一個付け加えるようにする。それでプラットフォームに乗らないイノベーション、つまりそのブロックのみに力を注ぐことができるようになる。


(出典:MIT CISR)

 MIT CISRの調査では、平均的企業はIT予算の72%を既存のシステムの改善にかけており、残りの28%のみがイノベーションに費やされているに過ぎない。Peter Weill氏は「IT Savvyな企業となるためには、この比率を50対50に引き上げなければならない」という。

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