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- 2009/11/30 掲載
競争が激化する運用管理業務:新規案件を獲得する運用管理ケーススタディ(1)(2/2)
「契約案件化能力の向上」ができるとどうなるか
ビジネスには単純明快なルールがあります。それは「よりよい商品・サービスをより低価格で提供した者が契約を獲得する」ということです。契約を獲得することは、仕事の楽しさを生み出します。なぜなら、色々と考えて工夫したことが、目の前のお客様に喜んでもらった、売り上げが劇的に向上したといった形で評価されるからです。マニュアルで決められたことをただするだけの仕事、少し違うことをやったら褒められるどころか叱られてしまう仕事と、色々な提案をした結果、その価値を正当に認められて、周囲に感謝される仕事とではどちらが楽しいでしょうか。
通常のビジネスパーソンにとって、仕事をする時間は、目を覚ましている時間の実に半分近く、人によっては半分以上を占めます。 これは、提案力という1つのスキルだけの話ではなく、一人の人間としてどのような人生を歩みたいかという生き方の問題かもしれません。
さて、少し厳しい見通しからお話ししましたが、現状は幸いなことに日本語という言語の壁に守られ、運用・保守の海外へのアウトソーシングはアメリカのように急激に進む状況ではありません。時間的猶予があるというのは不幸中の幸いです。
さらに、運用技術者はシステム利用部門から近い位置にいることが多く、システム上の課題、業務上の課題を把握しやすい立場にあります。「システム運用こそ最上流の仕事」という意見もあります。
よって、少なくとも、海外に住む技術者よりは、顧客にとって価値のある提案ができる可能性があります。今は、契約案件化の能力を身につけ、新たな境地に到達するためのチャンスなのです。
それでは、契約案件化力とはいったいどのような力でしょうか。簡単なケースを考えてみましょう。
皆さんは、臨時でお小遣いを稼ぎたい子供だったとします。両親は、「家の手伝いは当たり前、無償奉仕が基本」と考える堅いタイプの方々です。ただし、両親が困っていることを解決するアイデアを考えて、それを実現すれば、両親に感謝されて、臨時のお小遣いを獲得できるチャンスがあります。
下記の情報を元に、両親が困っていることを解決するアイデアと、お小遣いをもらえる約束を獲得するための説得ストーリーを考えてください。
両親が困っていること | 背景 |
植木鉢の水やり | 知り合いからもらった鉢が意外にも大きく育ってしまった。水やりが毎日必要。主にお母さんが担当している。 |
車の掃除 | 両親とも見栄っ張りな性格で、きれいな車で出かけたい。しかし、共働きで忙しく、普段はコイン洗車場を利用している。主にお父さんが担当している。 |
ゴミ出し | 口うるさい近所のおばさんが、分別が不十分だと文句を言ってくる。集積所も家から少し離れていて不便。両親が交代で担当している。 |
お小遣いをもらいたい子供にとって、両親は最も重要な利害関係者であり、予算を持った意思決定者です。家計をやり繰りしなければならない両親は、容易に子供の説得に応じてくれないことが想定できます。
このケースは一つの例ですので、正解・不正解はもちろんありません。ただし、解決策と説得ストーリーは、最低限3つの条件を満たしている必要があります。
- ・両親の悩みをどのように正確に把握するか(課題設定)
- ・解決策を実行することにより、誰がどのように、どのくらいメリットを享受するかが明確に示されたか(解決策の提示)
- ・子供の話を聞いた両親がどのような反応をするかを想定し、説得できる可能性を高める工夫が盛り込まれているか(関係者の説得)
皆さんのお考えになった解決策と説得ストーリーはいかがでしたか。
契約案件化能力とは、上記の条件を満たす解決策と説得ストーリーを組み立て、関係者を説得し、お小遣いを獲得するための総合的なスキルです。具体的には、課題設定力、問題解決力、ドキュメンテーション力、そして交渉力などからなります。次回からは、これらのスキルをひとつずつご紹介していきます。
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