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- 2009/07/02 掲載
Bluetooth 3.0とは何か?新しいフェーズに突入したパーソナルエリアネットワーク【2分間Q&A(56)】
PANの未来はこれからどうなっていく?
Bluetoothの登場とその普及に至る道筋
2009年4月。最大24Mbpsもの高速伝送が可能な「Bluetooth 3.0+HS」が正式に発表され、Bluetoothがこれからの近距離無線通信のデファクトスタンダードとなる可能性が一気に高まった。今回は、「Bluetooth 3.0 + HS」の話を始める前に、まずは、Bluetoothを中心に、これまでのPANの歴史を改めておさらいしておこう。Bluetoothの登場は1998年。東芝、エリクソン、インテル、IBM、ノキアが中心となって「Bluetooth SIG」が設立され、翌1999年には「Bluetooth 1.0」の仕様が固まった。当初、Bluetoothの目指すところは、携帯電話とPCとの通信や、マウス、キーボード、プリンターなどの周辺機器など、さまざまな小型情報機器をワイヤレスで簡単に接続できることにあった。
表1 Bluetoothの規格一覧 | ||||
名称 | 周波数帯域 | 最大実効速度 | 通信距離 | 規格のポイント |
Bluetooth 1.1/1.2 | 2.4GHz | 非対称通信:下り723.2kbps/上り57.6kbps、対称通信:432.6Kbps | 3~10m | 初期のBluetooth規格。 |
Bluetooth 2.0/2.1 | 2.4GHz | 非対称通信:下り723.2kbps/上り57.6kbps、対称通信:432.6Kbps | 3~10m | 現行のBluetooth規格 |
Bluetooth 2.0/2.1+EDR | 2.4GHz | 非対称通信:下り2178.1kbps/上り177.1kbps、対称通信:1306.9kbps | 3~10m | 現行のBluetooth規格 |
Bluetooth 3.0+HS | 2.4GHz | 下り2178.1kbps/上り177.1kbps、または24Mbps | 3~10m | 規格策定中 |
具体的な製品は2000年頃から登場し、既にマウスやヘッドセットが開発されていた。また、2001年から2003年にかけて、キーボードやデジカメ、MP3プレーヤーやGPSレシーバーなど、さまざまな機器にBluetoothが搭載された製品が徐々にお目見えするようになった。
しかし、Bluetooth普及への道のりは決して平坦ではなかった。当初、ベンダーの動きは鈍く、Bluetoothに対応する製品の数は増えなかった。その理由として考えられるのは、当時、Blutoothが本当に普及するのかを判断する材料は乏しく、価格を押し上げてまでBluetoothチップを搭載することのメリットが見えにくかったことだ。
さらに、2000年初頭はブロードバンド、無線LANブームに沸いた時期でもあり、有線では最大480Mbpsもの高速伝送ができる「USB2.0」の登場もあった。これらの大きなトレンドの中で、PANそのものの意義やメリットが認知されにくい状況であったことは否めない。また、通信速度も2004年に「EDR(Enhanced Data Rate)」の仕様が登場するまでは下り最大723.2Kbpsと、無線LANよりも遙かに低速で、技術的なアドバンテージも見えにくかった。
これに加え、新たなPAN規格を策定する動きも活発化していた。1つは、米軍で研究されていた「UWB(Ultra Wide Band)」によるPANだ。通信速度は100Mbps以上と、Bluetoothよりも遙かに高速だ。もう一つは、家電向けの通信規格として策定された「Zigbee」というものだ。
表2 Bluetooth以外のPAN規格 | |||||
規格 | 名称 | 周波数帯域 | 最大リンク速度 | 通信距離 | 規格のポイント |
IEEE802.15.4 | Zigbee | 2.4GHz | 約250Kbps | 10~60m | 家電向けの低電力規格だが普及せず |
IEEE802.15.3a | WiMedia | 2.4GHz | 約100Mbps | 3~10m | Bluetoothの後継規格だったが制定断念。 |
IEEE802.15.3c | 未定 | 59~66GHz | 2Gbps以上 | 3~10m | 家電向けハイビジョン伝送、策定中 |
Wireless USB Specification Rev. 1.0 | Wireless USB | 3.1GHz~10.6GHz | 110~480Mbps | 3~10m | 実用化済み |
しかし、Bluetoothチップの価格が徐々に下がり始めるとBluetoothを搭載する機器がゆるやかに増えていき、携帯電話にもBlutoothを搭載する機種も見かけられるようになった。2004年になると、Bluetoothの高速規格「EDR(Enhanced Data Rate)」も登場し、Bluetooth対応デバイス数は、インストールベースで2億5千台にも達した。
なお、現在実用化している最新の規格は「Bluetooth 2.1 + EDR」というもので、下り2178.1kbps/上り177.1kbps(非対称通信時)、または、1306.9kbps(対称通信時)の実効速度だ。そして、2009年4月に、最新の「Bluetooth 3.0 + HS」の仕様書がリリースされる運びとなったのである。
ちなみに、UWB規格の標準化を目指していた業界団体「WiMedia Alliance」は2009年3月で活動を終了し、策定済みのUWB規格と今後の標準化作業を「Bluetooth SIG」と「Wireless USB Promoter Group」に委譲することとなった。
ワイヤレスUSBの標準化は既に完了しており、有線でのUSBを無線化するアダプタなどが市販されているが、まだまだ普及には至っていない。また、家電向けのハイビジョン伝送規格「IEEE802.15.3c」という規格もあるが、現在策定作業中だ。
Bluetoothを特徴付ける技術
Bluetoothは2.4GHz帯の電波を使った近距離無線通信だ。その仕様は10年以上の長きに渡って利用されてきたものであり、無線技術そのものは特に目新しい技術ではない。ただし、Bluetoothを理解する上でしっかり抑えておきたいのが「プロファイル(※1)」だ。Bluetoothでは、PCやキーボード、マウス、ヘッドセットなど、多様な種類のデバイスを接続することが可能である。この機器の種類ごとに固有のプロファイルが設定され、通信しようとする双方が同じプロファイルを持っていることが必要となる。
たとえば、Bluetooth対応の携帯電話やスマートフォンを、ヘッドセットと接続して利用しようとした場合、「ヘッドセット プロファイル (HSP : Headset Profile)」が携帯電話、ヘッドセットの双方に設定されているので、問題なく利用できる。
しかし、最近流行のBluetooth対応ステレオヘッドフォンを使って、音楽を楽しもうとした場合はどうだろうか。最近の携帯電話やスマートフォンはヘッドフォンジャックを備えており、普通の有線のヘッドフォンでは、ステレオで音楽が聴けるので、Bluetoothでも大丈夫のように思えるが、「高度オーディオ配信プロファイル(A2DP)」が携帯電話やスマートフォンにないと利用できないのだ。
たとえば、音楽プレーヤーとしても人気の高い「iPhone」は、OSバージョン2.2.1までは「A2DP」プロファイルに対応していなかったが、2009年6月にリリースされたOSバージョン3.0から「A2DP」に対応し、Bluetoothステレオヘッドフォンで音楽を楽しめるようになった。このように、双方の機器で同じプロファイルを持つことを利用者が留意しないといけないのがBluetoothの特徴であり、混乱を生んで一部の利用者に敬遠されていた理由でもある。
【次ページ】Bluetooth 3.0とは?
Bluetoothのプロファイル
プロファイル名 | 内容 |
高度オーディオ配信プロファイル (A2DP : Advanced Audio Distribution Profile) | ステレオ品質のオーディオをメディア ソースからメディア シンクまで流す方法を記述 |
オーディオ/ビデオ リモート制御プロファイル(AVRCP : Audio/Video Remote Control Profile) | TV、ハイファイ設備、その他のデバイスを制御する標準的なインタフェースを実現し、単一のリモート制御 (または他のデバイス) で、ユーザーが使用するすべての A/V 設備を制御できるための定義を記述 |
基本画像プロファイル (BIP : Basic Imaging Profile) | 画像デバイスの制御方法、画像デバイスによる印刷方法の他に、画像デバイスから画像をストレージ デバイスに転送する方法を定義 |
基本印刷プロファイル (BPP : Basic Printing Profile) | テキスト、電子メール、vCard、画像、または他のアイテムを印刷ジョブに基づいてデバイスからプリンタに送信するための方法を定義 |
共通 ISDN アクセス プロファイル (CIP : Common ISDN Access Profile) | Bluetooth 無線接続経由で ISDN シグナリングを転送する方法が定義されています。詳細... |
コードレス電話プロファイル (CTP : Cordless Telephony Profile) | Bluetooth 無線リンク上でコードレス電話を実装する方法を定義 |
ダイヤルアップ ネットワーク プロファイル (DUN : Dial-Up Network Profile) | Bluetooth 技術を介してインターネットや他のダイヤルアップ サービスにアクセスするための標準プロトコルを定義 |
FAX プロファイル (FAX : Fax Profile) | 端末デバイスが FAX ゲートウェイ デバイスを使用する方法を定義 |
ファイル転送プロファイル (FTP : File Transfer Profile) | サーバー デバイス上のフォルダやファイルをクライアント デバイスから参照する方法を定義 |
一般オーディオ/ビデオ配信プロファイル (GAVDP : General Audio/Video Distribution Profile) | A2DP と VDP の基礎として機能するためのプロファイル |
一般オブジェクト交換プロファイル (GOEP : Generic Object Exchange Profile) | デバイス間でオブジェクトを転送するときに使用される |
ハンズフリー プロファイル (HFP : Hands-Free Profile) | HFP には、ハンズフリー デバイスで発呼および着呼するためにゲートウェイ デバイスを使用する方法を記述 |
ハード コピー ケーブル置換プロファイル (HCRP : Hard Copy Cable Replacement Profile) | Bluetooth 無線リンク上でドライバに基づく印刷を実現する方を定義 |
ヘッドセット プロファイル (HSP : Headset Profile) | Bluetooth 対応ヘッドセットが Bluetooth 対応デバイスと通信する方法を記述 |
ヒューマン インタフェース デバイス プロファイル (HID : Human Interface Device Profile) | キーボード、ポインティング デバイス、ゲーム デバイス、リモート監視デバイスなどの Bluetooth HID が使用するプロトコル、手順、および機能を定義 |
インターコム プロファイル (ICP : Intercom Profile) | 同じネットワーク内にある 2 台の Bluetooth 対応携帯電話が、公衆電話網を使用せずに相互に直接接続する方法を定義 |
オブジェクト プッシュ プロファイル (OPP : Object Push Profile) | プッシュ サーバーとプッシュ クライアントの役割を定義 |
パーソナル エリア ネットワーク プロファイル (PAN : Personal Area Networking Profile) | 2 台以上の Bluetooth 対応デバイスが臨時ネットワークを構築する方法、同じメカニズムを使用してネットワーク アクセス ポイント経由でリモート ネットワークにアクセスする方法を記述 |
サービス検索アプリケーション プロファイル (SDAP : Service Discovery Application Profile) | アプリケーションで SDP を使用してリモート デバイス上のサービスを検索する方法を記述 |
シリアル ポート プロファイル (SPP : Serial Port Profile) | 仮想シリアル ポートを設定して 2 台の Bluetooth 対応デバイスを接続する方法を定義 |
同期プロファイル (SYNC : Synchronization Profile) | GOEP と連携して使用することで、Bluetooth 対応デバイス間でのカレンダー情報やアドレス情報 (個人情報マネージャ (PIM) の項目) の同期を実現 |
ビデオ配信プロファイル (VDP : Video Distribution Profile) | Bluetooth 無線技術上で Bluetooth 対応デバイスがビデオを流す方法を定義 |
発表当初、以下の点に誤植がございました。訂正するとともに、ご迷惑をおかけした読者、ならびに関係者各位に深くお詫び申し上げます。本文は修正済みです。
Wireless USB Specification Rev. 1.0の最大リンク速度
誤)11000480Mbps→正)110~480Mbps
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