- 2009/05/13 掲載
【インタビュー】不況を乗り切る次世代データセンターの条件とは?
IDC Japan ソフトウェア マーケットアナリスト 入谷光浩氏
ITコスト削減のニーズを背景に
期待を集める次世代データセンター
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入谷氏■第一に、企業のコスト削減へ向けた意識の高まりです。ご存じのように、2008年秋以来の経済危機の拡がりは、日本の企業にも深刻な影響を及ぼしています。収益が見込めない以上、いかにコストを減らすかとなる中で、まずターゲットになるのがITコストです。中でも大きな負担となっているのは、運用コストです。社内のシステムの分散化と部分最適化が進んだ結果、サーバの乱立や異種OSの混在によって複雑化・肥大化したシステムの運用・管理経費は、ITコストの中でも大きな割合を占めるにいたっています。そこで、不況を契機にこれらのシステムを統合・集約して、コストを圧縮しようという機運が高まってきました。その具体的な解決手段=ソリューションとして、次世代データセンターに注目が集まっているのです。
――なるほど、ではそもそも次世代データセンターとはどういったもので、どんな特長があるのでしょうか。
入谷氏■「次世代」であるもっとも大きなメリットは、「一元的に管理できること」です。今まではたとえ1カ所にサーバを集約したデータセンターであっても、OSやハードウェアが異なれば、システムごとに個別の管理が必要でした。これが次世代データセンターでは、プラットフォームの違いを意識することなく、すべてのシステムを同じように管理できるようになるのです。複数のシステムを一元管理できることで、運用の負荷とコストが大幅に削減され、しかも効率に優れた信頼性の高いシステム運用が可能になるのがもっとも大きな特長であり、メリットだといえるでしょう。
次世代データセンターを実現するための
最重要キーワードは「仮想化」
――次世代データセンターを実現する上で、重要なキーワードをご紹介いただけますか。入谷氏■なんといっても「仮想化」です。データセンター サービスが急増している背景には、仮想化が大きく貢献しているといってもよいでしょう。ごく簡単に言うと、仮想化とはソフトウェア的にサーバを立ち上げて運用する技術です。1台の物理サーバ上に複数のサーバをヴァーチャル(仮想的)に構築でき、また同一の物理サーバ上で複数の異なるOSやシステム、ユーザーを扱えるといった利点があります。この結果、従来はプラットフォームやシステムごとに設置していた物理サーバを少ない台数にまとめて、運用管理の負荷軽減や人員配置の効率化、設置スペースの節約などさまざまな面でのコスト抑制が実現するのです。
――仮想化することで、サーバの構築や運用が効率化できるのはわかりました。もっとアクティブに、営業力の強化などビジネスにつながるメリットはありますか。
入谷氏■「システムの柔軟性」が、まさにそれに当たります。ビジネス環境やモデルの変化に合わせて、いかに迅速にサービスを立ち上げられるか、そのスピードがそのまま競争力につながる現代では、従来のような硬直化したシステムでは出遅れてしまいます。またハードウェアからOS、アプリケーションまでを特定の用途に固めたシステムでは、そのつど作り直さなくてはならず、コストもかかります。これを仮想化すればハードウェアやOSとアプリケーションを物理的に切り離して運用できるので、新たに必要になったサービスのアプリケーションだけを作って追加すればOKです。こうしたシステムの柔軟性や拡張性がもたらすアジリティは、ビジネスを積極的に加速する原動力になります。
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