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  • 2009/04/13 掲載

【連載:第3回】ビジネスにおける察知力を補完するための情報システム

【連載】「金融恐慌の後に新しい市場価値を創出する次世代人材の姿」

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米国の金融不安から派生した世界同時株安、円高などの影響で日本の輸出産業は大打撃を受け、日本経済を牽引してきた企業が非常に厳しい経営状況になってきている。しかし、この金融不安からきた世界規模の恐慌がターニングポイントとなり大きなパラダイム変化が起きるのではないかと、ナレッジネットワーク 代表取締役社長、サイバー大学 客員教授の森戸裕一氏は語る。本連載では、金融恐慌の後に新しい市場価値を創出する次世代人材の姿について考える。
執筆:森戸 裕一

情報をもとに場の意味を察知する能力と
日本的商習慣への適応

【マネジメント】金融恐慌の後に新しい市場価値を創出する次世代人材の姿

ナレッジネットワーク 代表取締役社長
サイバー大学 客員教授
森戸 裕一氏


 仕事柄、学生と触れ合う機会が多いのだが、一時期流行った「空気を読める学生」と「空気を読めない学生」の違いを考えさせられる場面によく遭遇する。変に気を使ってしどろもどろになるタイプは別として、場をわきまえて礼儀正しく行動できる学生とその場の雰囲気が読めない学生の違いは、果たしてどこからくるのだろうか。

 同じように、若手社員の中でも場の空気を読んで行動ができる社員と読めない社員が存在する。先輩社員が、忙しく荷物の搬入や資料整理など自分でも手伝うことができるような仕事をしていても、それを手伝うという発想が出てこない若手社員も多いようだ。彼らが話す言葉の中で「雑用」という言葉がある。若手社員が発する雑用という言葉は「いろいろと細々した仕事」以外に「たいしたことない仕事」という意味合いも含んでいるようだ。自分は雑用などしたくないという意識が根底にあり、それは自分の仕事ではないという判断で手伝わないという判断になる場合もある。先輩社員は「手伝ってもらうと助かるのだが」と考えていても、その空気(情報)は後輩社員には伝わらない。

 また、会社の宴席でも、席に着くなり自然に周囲に声をかけオーダーをとりまとめる若手社員と、周囲との話に夢中になり自分のことだけで手いっぱいでぜんぜん気が利かない若手社員にわかれる。「アルコールが苦手な人はいますか?」「食事はどのあたりを頼みましょうか?」「追加オーダーがあれば私に言ってください」など、自分が先に声をかけることで相手の意向を簡単に引き出せる言葉はたくさんある。特に相手の立場や気持ちを考えて発した質問は気配りと取ってもらえる。最初は慣れないために、ぎこちない行動になり、逆に周囲に気を遣わせることもあるが、その場を和ませたり、コミュニケーションを活発化させたりする効果があるのでできるようになりたいところだ。

 これらの非常に日本的な「気配りコミュニケーション」が、欧米の個人主義的な関係性を重視するビジネススタイルにはそぐわないことは十分に理解している。しかし、当然のように日本人が中心で組織されている企業体や日本企業が相手の商談機会の場合には、「日本的気配りコミュニケーション」が大きな力を持つことになる。

 たとえば、営業職の場合には、お客さまの要望や社内での立場なども加味した上で、こちらの意に沿うようにお客さまが行動をしてくれるような対応が必要となる。その際に、何気ない会話からも、相手の性格や周囲との関係性などを推測し、提供する情報などへの気配りをしてあげないと、成約という最終的な目的を達成することはできない。このような場面で、先ほどの職場での先輩社員への気配りや飲み会の場での周囲への気配りができるかできないかが、案外関係してくる。目の前のお客さまの思考に合わせて情報を提供する、そのやりとりの中でお客さまに購入メリットを明確にイメージしてもらい、そのイメージに共感をしてもらい決済者に相談してもらう、稟議をあげてもらうなどの行動をしてもらわなければ、営業としての最終的な目的は達成できないのである。

 そもそも、「周囲の人の気持ちを先読みして行動する」ということを求めること自体が時代に合わないのかもしれない。しかし、その先読みする能力、気配りする能力、察知する能力こそが、組織で行う仕事で力を発揮できるための根幹の能力となっているということを忘れてはいけない。

 米国から入ってきたコミュニケーション技法としてのコーチングも、ビジネスの潤滑油としての日本的な気配りコミュニケーションを意識した上で導入されれば問題ないが、このコーチング手法が欧米型の成果主義的な人事評価システムなどと並行して導入されると、日本型の気配りコミュニケーションのよさが消されてしまい、現場の混乱につながることもある。

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