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- 2009/03/26 掲載
ITアーキテクチャの構築 【第10回】情報戦略ガバナンス
ボストン・コンサルティング グループ 井上潤吾氏
ITアーキテクチャの課題
まず図1を見てほしい。これは、ある保険会社の情報システムにおけるアプリケーションソフトウェアを、ビジネスのバリューチェーン(価値連鎖)と、保険商品の種類との軸で見た全体像である。それぞれの□は、一つひとつのアプリケーションソフトウェアを示す。一見して、□が乱雑に配置されていることがわかる。これは、この会社のアプリケーションソフトウェアが無計画に開発されてきたことを示している。こうした課題を列記してみると以下のようになる。![]() ※クリックで拡大 |
図1)ITアーキテクチャにおけるよくある課題 |
1.ビジネスプロセスのサポートが一貫していない
・自動車の損害/ クレーム支払システムと提案処理のシステムがつながっておらず、手作業が発生している。
・プロダクト開発への機能がシステム化されていない。
・生命保険の会計管理と販売管理がつながっておらず手入力となっている
2.インタフェースの安定性が不十分
・インタフェースが多いため、販売管理システムへの入力処理に時間がかかる。
3.システム設計の原則が一貫して適用されていない
・プログラミングのスタンダードがないために、いくつかのサブプログラムでメンテナンスが過剰に必要とされる。
・機能的重複や営業システムと事業管理システムとの間で保険料率が異なっている。
4.いくつかの領域で高度な統合が見られるなか、不十分なカプセル化が散見される
・エラーがカプセル化(注)されていないため、高度に統合されたカスタマーデータベースでエラーがよく起こる。
5.バラエティにとんだプラットフォームが存在する
・いくつかのワープロアプリケーションが林立。
6.バラエティにとんだツールが存在する
・ツールによって機能的なギャップが存在するため、開発環境の差がでてきて、効率性の変動を招き、プロジェクトマネジメントを複雑化する要素となる。
7.全体のアーキテクチャ管理と責任が一致していない
・プロダクトに対する責任(コスト、品質)。
・すべてのインタフェースが記載されているリストが存在しない。
多くの企業が上記のような課題を抱えており、こうした課題のあるかぎり、新規機能を廉価で短納期かつ高品質に開発することは至難の業である。図1のようなアプリケーションソフトウェアのマッピングを実行してみると、実に数百のアプリが存在していることがある。読者の企業でも試してほしい。ある程度の規模の企業になれば、アプリケーションの数は指数関数的に増えていることが確認できるであろう。
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