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- 2009/02/10 掲載
【ITが実現するノウハウマネジメント:第2回】衆知結集システムで、営業力を強化する
衆知結集システムで、営業力を強化する
ノウハウを、新しい経営リソースとしてマネジメントすることで、革新を達成することができる。この場合ITは、ノウハウマネジメントを普及させる重要な道具となる。前回から、有能者のノウハウをもとに「衆知結集」を行うシステムを紹介している。今回は、衆知結集を用いた営業力強化システムである。営業力強化のための衆知結集
とある建設会社の工場建設事業部で、営業力強化プロジェクトが進められた。この事業部は、国内を中心に、製造業向けに工場建設を行っている。営業力強化プロジェクトは、昨今の顧客生産拠点の海外シフトで国内工場建設案件が減り、競争激化、勝率・利益率低下が続いていたことに対処するものである。プロジェクトではまず、過去の案件の受注・失注原因を調査した。その結果、受注に成功し、かつ利益率が高い案件は、部門長クラスが提案段階でしっかりとレビュー・指導を行っていることが判明した。経験や能力のある部門長がレビューすれば、勝率や利益率が向上することは当たり前である。しかし、すべての提案案件を部門長がレビューすることは難しい。建設における提案書は、積算のための図面やデータを合わせると、厚みが10cm以上になることも珍しくない。そのような大量の情報を、部門長が、すべての案件でレビューすることは不可能であった。
そこでプロジェクトでは、部門長がどのような視点・切り口で提案書をレビューしているか。どのような知識やノウハウを用いているかを分析した。分析の結果、多くの部門長が共通にレビューしている項目が、いくつか明らかになった。
たとえば、「顧客の生産性を向上させる方法」は、多くの部門長がレビューしていた項目である。これは、建設する工場の品質、コスト、製造リードタイムをどのようにして改善するか、その方法を明らかにするものである。
あるとき、大型機械メーカーの顧客で、ミドルレンジ製品を海外拠点に移管し、国内はハイエンド製品に対応するため集約し、最新鋭の工場をつくるという案件があった。この案件は、競争相手に競り勝ち、また顧客の信頼を獲得することで望ましい価格で受注することができた。この案件で提案した「顧客の生産性を向上させる方法」として、「製造工程別組織から製品グループ別組織への転換」が挙げられる。
顧客はこれまで、製造工程ごとに組織をつくり、1つの製品は複数の組織(工程)を通って完成させていた。これは、工程を集約し設備稼働率を上げ、設備投資を抑えるため。また、同一の作業をまとめ、これを繰り返すことで作業生産性を向上させるためである。ところがこれからは、ハイエンド製品に特化するめ、生産量が少なくなり製品種類は増える。工程を集約しても、必ずしも作業生産性は上がらない。また、製造設備も汎用性のあるものは少なくなり、工程集約しても稼働率は上がらない。さらに製造工程ごとに組織を作ると、製造リードタイムが長くなり、顧客満足度が下がる。そこで、製品グループごとに必要な工程、設備、人をまとめた組織を作り、その組織の中で製品を完成させるという提案である。
「顧客の生産性を向上させる方法」が明確になれば、これを実現するために、工場の工程、設備、導線、レイアウトなどが決定できる。したがってこの案件では、「顧客の生産性を向上させる方法」をもとに、レイアウトや建屋をどのようにすべきか、一貫した説明ができた。これが顧客の信頼を得、望ましい価格で受注に成功できたのである。
部門長がレビューする場合、必ず「顧客の生産性を向上させる方法」を確認し、これが曖昧だったり不十分な場合、良いアイデアを徹底的に考えていた。
このような部門長が行っているレビュー項目は、15項目発見された。しかしこれらは、組織としてまったく共有できていなかった。部門長自身も、今回の営業力強化プロジェクトで自分のレビュー方法を分析されるまで、自分が無意識にやっていたレビュー方法を自覚できていなかった。そこでプロジェクトでは、部門長のレビュー項目を標準化し、「提案検討書」として完成させた。レビュー項目は、即ち提案において検討すべき重要な項目であるとの認識から、このような名前をつけた。「提案検討書」は提案責任者が作成し、分厚い提案書を作成する前に、案件検討会議で部門長も交えレビューすることとした。
部門長のレビュー項目の中には、「差別化」や「リスクとコントロール方法」など、項目としては当たり前のものもあった。しかし、部門長のレビューは、中間管理職や若手とは比べ物にならないほど深く厳しいものだった。
たとえば「差別化」で、中間管理職が「価格競争力を高めて勝つ」と説明すると、部門長は、「何故差別化が価格なのか。競争相手はどの程度の価格を提示すると考えているのか。価格以外で訴求すべき点はないのか。過去に価格以外で負けたり買ったりしたことはないのか」と追求する。部門長がこのような追求ができるのは、レビュー項目をどのように検討するか、検討方法のノウハウを持っていたからだ。また、実際に自社や競争相手が実施して成功した差別化方法の知識をいくつも知っていたからだ。
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