- 2008/05/26 掲載
「中小企業事業承継制度」がやっと整備できました!!!
連載『ふじすえ健三のビジネス+IT潮流』
この4月、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が成立しました。筆者は、中小企業の事業継承が中小企業政策の大きな課題だと訴えてきて、やっと成立し感無量です。この法律は政府が作ったものですが、民主党のマニフェストにも書き込み、与野党一致で進めたものです。
中小企業の事業の継承については、中小企業の廃業が年間約29万社、そのうち7万社が後継者がいないということで廃業している状況です。この7万社の雇用を推定すると20~30万人にも上ると言われています(中小企業庁調査)。
一方、経営者の高齢化という問題があります。中小企業経営者の平均年齢を見ると2006年で59歳というデータがあり、1996年には56歳と10年間で経営者の年齢は3歳増えています。そして中小企業のトップが何歳ぐらいで辞めたいかというアンケート調査を見ると65歳で経営者を引退したいとしています。
このように中小企業の事業承継は緊急の課題でもあったのです。
本法の大きな柱は2つあります(もうひとつは事業承継の金融支援ですがここでは省略します)。ひとつは、非上場株式等に係る相続税の軽減措置です。現行の10%減額から80%納税猶予に大幅に拡充するとともに、対象を中小企業全般に拡大する。なお、本制度は、平成21年度改正で創設し、中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律案の施行日(平成20年10月1日予定)以後の相続に遡って適用できます。これは法律だけでなく「平成20年度税制改正の要綱」(平成20年1月11日閣議決定)でも決定されたものです。
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次に、一定の要件を満たす後継者が、遺留分権利者全員との合意、及び所要の手続(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経ることを前提に、以下の民法の特例の適用を受けることができるようになります。
(1)生前贈与株式を遺留分の対象から除外できる制度の創設
先代経営者の生前に、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、先代経営者から後継者へ生前贈与された自社株式その他一定の財産について、遺留分算定の基礎財産から除外できる制度を創設。
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(2)生前贈与株式の評価額を予め固定できる制度の創設
生前贈与後に株式価値が後継者の貢献により上昇した場合でも、遺留分の算定に際しては相続開始時点の上昇後の評価で計算されてしまいます。このため、経済産業大臣の確認を受けた後継者が、遺留分権利者全員との合意内容について家庭裁判所の許可を受けることで、遺留分の算定に際して、生前贈与株式の価額を当該合意時の評価額で予め固定できる制度を創設します。
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東京商工リサーチの調査を見ると、20年前1985年には中小企業の事業の後継者は約9割が親族になっています。ところが、2006年のデータをみますとそれが6割に落ちています。そして、子供に承継している率を見ますと約8割だったものが2006年には41.6%という形でこれも半減しています。
今回成立した法律は、基本的に親族内の事業継承を対象にしています。しかしながら、将来的なことを考えると社員や部外者にも事業を承継できるような制度や環境の整備が求められると考えます。例えば、中小企業経営者を紹介する人材バンクなども必要ではないでしょうか。
そして、事業承継には根本的な問題があります。それは、「中小企業に夢がない」ということです。 ニッセイ基礎研究所が経営者の子供に親の事業を継承したいかどうか、引き継ぎたいかどうかというアンケートをしています。これによると何と半分以上がしたくないといっています。したくない理由として45.8%、約半分が「親の事業に将来性がない」からということを答えている。
またもう一つ、事業を承継しない理由に「収入が低い」からという答えがあります。実際に事業者、経営者の収入がどれだけ落ちたかというデータをみますと、この数字を調べてびっくりしたのですが、1985年に事業者と雇われている方々の収入を比較すると、製造業では経営者が雇用者の1.5倍ぐらいありますが、2005年のデータをみるとなんと0.6倍なんです。経営者の方が雇われている方より収入が少ないんです(中小企業庁調査)。自分が今サラリーマンで働いていて、経営者になったら給料が落ちるから事業を継承しないということになります。
この2つが中小企業事業承継の根本的な問題だと考えます。そのためにも、まずは政策を変えていきたいのです。中小企業は会社数でいくともう99%を超え、雇用でいくと大体74%の雇用を支えていただいています。一方で、政府予算(2008年度)は大体1700億円と国の支出が80兆ある中、その0.2%しか使われていないのです。公共事業予算は今でも7兆円になります。予算の配分を変える必要を感じます。
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