- 2025/02/22 掲載
スターバックスが「拒否」され続けた国、それでも数年かけて進出に成功した戦略とは?(3/3)
歴史ある「水飲み場」をわざわざ店内に設置したワケ
一方でスターバックス旋風もだいぶ落ち着いてきた2024年11月には、コッリエーレ・デッラ・セーラが、ローマのサン・シルヴェストロにて初のスターバックスのフラッグシップ(旗艦店)をオープンすることを報じた。フラッグシップ、つまりその企業が最も力を入れている商品やサービスを提供する、企業の顔となる店舗のことであるが、このローマの旗艦店は「コーヒーとアートが出会う場所」というコンセプトのもと作られた。ポップかつモダンに装飾された店内では通常店と同じくフードやビバレッジを味わうことができるほか、コーヒーを知るためのミーティングも定期的に開催されるとのこと。
さらに「大きな鼻」という意味のナゾーネ(nasone)と呼ばれる水飲み場も店内に設置されている。これは19世紀後半のローマにて、市民が飲料水を不自由なく使用することができるようにとローマ市が市内各地に設置した公共の水飲み場であり、ローマの街を象徴するものとなっている。
このような歴史あるものをわざわざ店内に設置するのは、水とともに発展してきたローマの街の伝統および過去を尊重するというスターバックスのメッセージであろう。
また、スターバックスは、イタリアの老舗エスプレッソメーカーのビアレッティとのコラボレーションも発表している。スターバックスのイタリア一号店、リザーブ ロースタリーはミラノにて、そして旗艦店はローマにてオープンしていることから、スターバックスの、イタリアを確実な拠点の1つにしたいという思いが見て取れるのである。
厳しい視線ながら関心度は高い「スターバックスのUターン」
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中には町外れにある店舗もあるが、よくよく住所を見るとドライブスルーや空港内にあるものもある。また他国と同様に、その都市ごとのご当地タンブラーやマグといったイタリア独自のグッズも徐々に増えていっている。もちろん長いスパンで観察を続ける必要があるが、2018年にミラノにてスターバックスのイタリア一号店を開いたときのスターバックスの戦略は、数年かけて概ね成功しているように思われる。
それはスターバックスが当初より、イタリアの食文化を尊重しつつビジネスを始めたからであり、またスターバックスが進出したからといってイタリアのバール文化やエスプレッソを飲む習慣が廃れたわけではない。ここ数年のイタリア国内のニュースを見る限り、イタリアにおけるスターバックスに関する視線は厳しくもありながら、関心度は高いことが見て取れる。「スターバックスのUターン」が今後どのような展開を見せるか楽しみである。
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