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- 2025/02/28 掲載
「人間超え」AI登場の伏線?DeepSeekで起きた「アハ体験」が色々ヤバいワケ
突如始まった「DeepSeekショック」
「DeepSeekショック」は2025年1月20日の発表から始まった。中国のDeepSeek社が、わずか約560万ドルの予算と2048基のH800チップで開発したとするLLM「DeepSeek-R1」を公開したのだ。
H800は、中国向けに性能が一部制限されたエヌビディア製GPUであり、H200などの高性能GPUと比べてスペックが抑えられている。にもかかわらず、DeepSeek-R1がOpenAIのo1モデルに匹敵する比肩し得る推論能力を発揮する点は大きな驚きだった。従来のLLM開発では、数万個の高性能チップや数億ドル単位の投資が必要とされ、OpenAIやグーグルなどの大手だけが成立させられるビジネスだと考えられていたからだ。
この画期的モデルが商用利用可能なMITライセンスのオープンソースとして公開されたことで、多くのAI研究者や開発者が自分の手でDeepSeek-R1をダウンロードしてその性能を検証し、確認することができた。
従来のAI開発は、OpenAIやAnthropicのようなクローズドモデルと、MetaやStability AIを代表とするオープンモデルが競っており、売上の大きさという点ではクローズドモデルが有利とされていた。DeepSeek R-1も売上ではまだ成果を出していないが、性能とコストのアドバンテージによって新しい局面が開く可能性が出てきた。
エヌビディア株も「17%急落」の衝撃
DeepSeek-R1の登場に伴い、1月27日の株式市場は激動となった。NVIDIAの株価は一時17%下落、ブロードコムをはじめ、複数の半導体企業にも売りが波及した。ただ翌日にはやや持ち直したため、“AIバブル崩壊”とはならなかった。また、米中のAppStoreではDeepSeekのアプリが1位を獲得する一方で、中国のDeepSeekのWebサイトは米国からのDDoS攻撃でサービスダウンを余儀なくされた。
各界からも、DeepSeekに対する反応が相次いだ。米国のトランプ大統領は、DeepSeek-R1がもたらした衝撃について、「安いことは良いことだ」としつつも「巨額の開発競争が激化する米国AI産業への警鐘だ」と話した。
また、OpenAIでCRO(Chief research officer、最高研究責任者)を務めるMark Chen氏は「彼ら(DeepSeek)の研究論文は、私たちがo1に到達する過程で行った中核となるアイデアのいくつかを独自に発見したことを示しています」とXで賞賛した。
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その一方、DeepSeekのエンジニアがOpenAIから大量のデータを盗んだ疑いがありマイクロソフトが調査すると報じられたり、米国にとっての安全保障上のリスクをNSCが調査するという報道もあったが、その後の進展はまだ見られない。一方でマイクロソフトは、クラウドサービスAzureのメニューにDeepSeek-R1を加えたと発表した。
このように、ポジティブなものもネガティブなものも含めて「DeepSeek狂想曲」とでも言うべき状況を成している。 【次ページ】DeepSeek-R1で起きた「アハ体験」とは
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