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- 2007/12/06 掲載
中小企業の戦略的情報システム構築術(2):日本版SOX法を味方につける
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「ごまかし」に惑わされては本質を見失うこともある |
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アメリカのエンロン事件の反省から成立したSOX法は、日本においても日本版SOX法(俗称)として整備され、2008年度から導入される。エンロン事件はアメリカの株式市場に莫大な経済的損失を生じさせた財務報告の偽装事件であった。そのため、「上場企業は財務報告の偽装をしてはならない、偽装ができない内部制度を構築せよ」というのが法律の要諦だ。日本版SOX法でも、同様に上場企業およびその連結子会社に、会計監査制度の充実と企業の「内部統制」の強化を求めている。
今、日本はさまざまな「偽装問題」で揺れている。耐震偽装、食品偽装、性能偽装、温泉偽装、偽装請負と、あたかも誰かが意図的に情報操作をしているかのごとく、マスコミでは「偽装問題」が連日のように報じられている。昔から、偽装を行うのは人の常であり、その被害が大きくなるにつれ「けしからん」という人が増え、その防止や制裁に知恵が絞られることとなる。そして、その規制そのものもいずれ偽装されるようになるのである。人はいつになったらこの悪しきサイクルから抜け出せるのだろうか?
日本版SOX法のような法令や規制は、大企業にとっては多大なる負荷になるが、中小企業にとってはむしろ有益かつ戦略的な経営指針になることに注目されたい。なぜなら、偽装することができないように、事業の中身を充実させる規定がSOX法内にいろいろと書かれているからだ。まさに、中小企業にとっては経営強化のノウハウ集といってもよいのではないだろうか。これを守らなければならない法律としてではなく、経営強化の教科書として活用できるのが中小企業の強みである。大企業が日本版SOX法の定着に苦労している間に、中小企業はそれを味方にすることができるわけだ。
「内部統制」を簡単にいうと、企業などの「内部」において違法行為や不正などが行われることなく、業務が正しく展開され、組織が正しく効率的に運営される「コントロールのこと」である。
では、そもそも「内部統制」は何のために行わなければならないのだろう?一般的には次の3点が理由とされる。(1)株式市場からの要請、(2)従業員の統治、(3)実業界のルールおよびモラルだ。これらはコンプライアンス(法令遵守)と呼ばれ、さかんにセミナーなどのテーマとして取り上げられている。
確かに、これらはビジネスを人間社会の中でキチンと行う上で重要なことである。しかし、これらの規制やモラルというものは、いつの日にか、誰かによって偽装される事態が必ずや起きてくる。庶民感覚からすると、真面目な人にはいろいろな規制がかけられるが、それらは一部の人たちを利するための窮屈な規制にすぎないようにも思われる。なぜなら、世の中でおきている「偽装問題」のほとんどが、経営陣による政治家や自らの利益のための所業が原因であるからだ。コンプライアンスの対象は「内部統制」の諸条件ではなく、一に経営陣のモラルの欠如にあるのが現実なのである。
しかし、当然のことながら他人が悪いことをしているからといって自分も悪事をしてよいということにはならない。「内部統制」という規制をコストや負荷と思うか、または、人として守るべきものや経営の指針と考えるかによって中小企業の未来は大きく変わってくることになる。
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