- 2007/10/01 掲載
【連載】NGNとは何か(最終回):NGNの真価(2/2)
第5回にて紹介したように、融合(コンバージェンス)は、固定・携帯・放送などのサービスに関する融合に留まるものではない。むしろ、IT技術と通信技術の融合や保守運用システムにおける融合の方が意味合いとしては大きい。ユーザーが直接的に見えるのは、やはりサービスの融合であろうが、融合サービスの使い方の向上や新しい使い方を生み出してくれるのは、ITと通信技術の融合であり、運用システムにおける融合がなされて初めて可能となる。つまり、それらを構成するアーキテクチャ上の機能ブロックが持つインターフェイスの明確化が必要となってくる。
NGN アーキテクチャにおいては、ANI、UNI、NNI の3 つのインターフェイスのみ定義されている。しかし、機能ブロック間プロトコルの勧告化はSG11において積極的に進められている。一旦、プロトコルが定義され れば、いかにネットワーク内部のこととは言え、立派なオープンインターフェイスとなりえる。デジュール標準(公的な標準化機関によって一定の手続を経て作られた公式な規格となっている標準)機関であるITU はオープンなインターフェイスではないとしても、デファクト標準がそれを行ってしまうであろう。いずれにせよ、既存事業者の意思にかかわらず、インターフェイスのオープン化は時間と市場の有無が決定していくことになる。ただし、オープンなインターフェイスによって装置(機能ブロック)はつながるとしても、異事業者間接続にも使われるかというとそうとも言い切れない。その点は制度がどうあるかの問題で、国によっても異なることになってしまうかもしれないからだ。しかし、真にユーザーにとってメリットのある事業者間接続であれば、いずれ可能になっていくものと考えるのが自然だろう。
この考えが正しいとすれば、将来的には下図に示すような新規事業形態も現れてくることになるかもしれない。その動きを後押しする力は、いうまでもなくユーザーメリットにほかならない。それは、コストであり、セキュリティであり、利便性である。極端に言えば、1 人1 人のユーザーごとにそのメリットの捉え方は違っていていいはずである。概念的には、IT 技術の高度化・効率化が進み、Web2.0 の世界の到来によって個々のニーズ・メリットへの対応は可能になっていくだろう。しかし、その背景にある大きな要素はオープン化である。Web2.0 においては、個々のニーズを吸い上げ、対応の判断・選択をすることはできるが、その対応に伴うアクションとしての具体的なネットワークやプラットフォーム機能の制御については、色々な機能がオープン化されていかなければ難しい。このようなアクションを生みだすほかに、オープン化のメリットとしては、新規機能ブロックの追加が容易になる点がある。概念的には下図にあるように、新規ブロックを追加しても既存業界との接続性が担保され、スムーズな移行が行えるイメージだ。新規ブロックの追加は、新規サービスの創出にも繋がり、業界全体の活性化にもつながって行くはずである。NGN 時代の通信事業は、既得権益を守ろうとする抵抗勢力に対抗し、コンバージェンス・オープン化の加速による変革を新たなチャンスとして捉えていくことがキーとなるのではないか。
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図 通信業界の再編
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もちろん単に、オープンにすればすべてがうまくいくということではない。ユーザーの要望が不適正であれば、間違った方向に進んでいく危険性もある。やはり、ユーザーの資質およびモラルの向上も必要不可欠であり、その意味において、日本のユーザーは世界をリードするものを持っていると信じている。最終章では、融合が加速し、ICT業界全体に広く浸透したオープンな世界がどのような価値をもたらすのかについて述べた。このオープンな世界が持つ潜在的市場をいかに早く見出し、実現して行くかが今後の業界全体の発展のキーとなるだろう。
米田 進
ソフトバンクテレコム 研究所 副所長 ジョンズホプキンス大学大学院システム工学専攻博士課程を終了後、ベルコミュニケーションズ研究所へ入所。1993年から日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)にて、通信の研究に携わっている。1955年生まれ。 |
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