• 2007/08/13 掲載

ソフトバンクの携帯事業初動期の戦略、ユーザー視点を軸に4つの改善を実現

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「ヤフーBBの時と違い、健全な状態で事業を運営できる。手応えを感じている」。今月8日、都内のホテルで開かれたソフトバンクの2008年度第一四半期決算発表の席上で、ソフトバンクの孫社長はそう胸を張った。ヤフーBBは初期投資の負担が重く、大幅な赤字を出しながら事業を推進してきたが、携帯事業は黒字化を維持しながら事業を展開できるというもの。ボーダフォン日本法人を買収して約1年。至上最大の買収劇は成功したのか。この1年の動向を振り返る。

連結業績売上高は6630億円、前年同期比34%増

 8日発表したソフトバンクの連結業績は、売上高6630億円(前年同期比34%増)、営業利益787億円(同45%増)、経常利益511億円(同97%増)と前年同期を大幅に上回った。いずれの指標もソフトバンクモバイル(旧ボーダフォン日本法人)が大きく貢献している。その割合は売上高で58.7%、営業利益で55.3%だ。

 「沈み行く船を買うのか」。ボーダフォン日本法人買収時、孫社長は周囲からこう言われたという。しかし、今回の業績を見る限り、船は沈むどころか目的地に向かって順調にエンジンを加速しているようにみえる。もちろん、競争はまだ始まったばかり。「相手があることなので、これからも気を引き締めて事業に取り組む」と孫社長は静かに語る。とはいえ、前年を大きく上回る業績は、携帯事業初動期を順調に乗り越えたのではないだろうか。

 加入者獲得競争もそれを裏付ける。本年4月~6月の3ヶ月でソフトバンクは53万件の加入者を獲得。NTTドコモは24万件、auは52万件でNTTドコモには2倍以上の差をつけた。本年5月には初の月間純増数でトップを獲得。その後、7月まで3ヶ月連続で純増数トップを維持している。直近7月の3社の純増シェアをみると、ソフトバンク45%、au38%、NTTドコモ16%となっている。

 なぜ、ソフトバンクは業績を大幅に向上させ、ここまで純増数を伸ばすことができたのか。その要因について、孫社長は「4つのエリアで劇的な改善を図ったからだ」と自信をみせる。この4つはボーダフォン日本法人買収時の課題だったという。ネットワーク、端末、コンテンツ、マーケティング(料金/ブランド)の4つだ。


劇的なスピードでつながりやすさが向上

 携帯事業者にとって電話のつながりやすさは、加入者の満足度の高低をしめす重要な指標。同時にこれは自社の収益に大きな影響を与える。当然ながら通信料はつながってはじめて発生する。ボーダフォン日本法人時代、このつながりやすさに大きな課題があった。ソフトバンクは、この改善に力を入れた。買収時、基地局数はわずか2万2,000局程度だったが、2007年3月31日までにその2倍以上の4万6,000局の目標を掲げたのだ。 

 基地局の設置には、設置場所の地主の説得や周辺住民への理解など課題は多い。しかし当初の予定より遅れはしたものの、本年8月1日、目標を達成した。基地局増加により加入者が感じるつながりやすさの度合いは大幅に向上。昨年6月を100とした場合、本年は27%も改善している(外部機関による調査結果より)。


端末のラインナップ、カラー数で他を圧倒

【ソフトバンクモバイル】fanfun
fanfun/ソフトバンク 815T
 今、インターネットの世界ではWeb2.0型のサービスが普及している。背景に、「人間、一人ひとりのクリエイティビティがある」と時事通信社 編集委員 湯川鶴章氏は語る。

 人間には自分を表現したいという欲求があり、ユーザー参加のWeb2.0型サービスは、その欲求を満たすことができるため普及しているという。世の中がクリエイティビティに流れる中、ソフトバンクは機種数、カラー数を大幅に増やした。消費者の趣味、趣向にあうよう品揃えを強化したのだ。

 本年3月~8月までに発表した機種数は23、NTTドコモの16、auの16よりも多い。ソフトバンクが揃えた機種のカテゴリーも、シンプル、コーディネート、スリム、ハイスペック、ワンセグ、Windowsと幅広く、すべての世代をターゲットにしている。

 また、カラー数はソフトバンクが99、NTTドコモが61、auが49とこちらも他を圧倒。本年夏には、自分らしさを表現できる究極のファッションケータイとして「fanfun」(815T)を発売。fanfunは、2億4,000万通りのコーディネートを可能にしている。  


Y!ボタン設置でアクセス数は約66倍に増加

 ソフトバンクは最大の強みであるヤフーを携帯電話にも活用した。約5,000万人が使いなれているヤフーを、パソコンで使いなれた操作性そのままでケータイに導入したのだ。この携帯電話をY!ケータイと呼び、Y!ボタンを装備。このY!ボタンを押すだけでケータイのヤフー画面にアクセスできる。このY!ボタンをつけた後、アクセス数は激増。昨年6月に比べ約66倍もページビューが増加した。

 これによりデータ使用のARPUも増加。昨年の4月から6月の平均ARPUは1340円だったのに対して本年は1410円まで増えた。「データARPUは今後もまだまだ増加していく」と孫社長は語っている。


月額基本料980円のホワイトプラン導入のインパクト

 4つの改善の中で、もっとも消費者にわかりやすいのが価格戦略ではないだろうか。ある調査機関が、“料金が安いというイメージの携帯事業者は”という調査を行ったところ、ソフトバンク、au、NTTドコモの順番となった。その原動力になったのは、本年1月に発表したホワイトプランだろう。月額980円という料金設定は圧倒的な支持を受け、本年8月7日現在で690万件の加入者を集めている。5月10日に発表した家族同士の通話が無料になる「ホワイト家族24」も、ユニークなCMの影響も大きく加入者を増加させている。

 また、他社が料金値下げを行った場合、「ソフトバンクも24時間以内にその対抗措置としてブループラン、オレンジプランの料金を値下げする」(孫社長)と公約している通り、本年4月~7月までに4度値下げを発表している。「こういったプランが、料金は安いというイメージを植えつけている」と業界関係者は話す。
 
 「つながりやすさ」「自分らしさ」「使いやすさ」「お求めやすさ」を追求したこれら4つの改善はすべてユーザー視点を軸にしている。この視点が根本にある限り、ソフトバンクの勢いはそう簡単には落ちないのではないだろうか。携帯事業の初動期を順調に乗り切ったソフトバンク。次フェーズとなる成長期の動向も気になるところだ。

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