• 2007/05/16 掲載

Web世界の新キーワード“クリエイティビティ”が、グーグルの一極集中を阻む(2/2)

時事通信社 編集委員 湯川鶴章氏

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Google一極集中の世界にはならない

【Web2.0】Web世界の新キーワード“クリエイティビティ”が、グーグルの一極集中を阻む
時事通信社 編集委員 湯川鶴章氏
【動画】『爆発するソーシャルメディア』。
グーグルを超える。「これからは公民館の時代!」
この記事の内容は
ストリーミングでも視聴できます。

≫総受講時間:7分44秒/200kbps
視聴する

――動画共有サイトについて触れている第二章では、ソーシャルメディア同士の競合が話題になっています。ソーシャルメディアがいくつも出てきたときに、生き残るための条件は何でしょうか?

湯川氏●
競合するソーシャルメディアが出てきたときに、どちらが強くなるか、優劣を決める条件というのは、私はユーザーのロイヤリティだと思います。ユーザーが、この空間は自分の空間だ、居心地がよくて、自分と同じ趣味嗜好をもった仲間がいると思っている。そういう空間が、その人にとって一番の空間だということです。それ以外のソーシャルメディアというのは、ストレージにしかならない。ですからロイヤルティの強い空間を作っていくことは、これからのメディアにとって最も重要なことだと思います。みんなに、ここが俺たちの場所だよと思ってもらうには、どうすればいいか。それは囲い込まないということですよね。今までのコミュニティというのはどうしても、囲い込んでビジネスをするという方法でした。しかし、これは逆効果で、やはり居心地が悪くなってしまう。私はメールやカレンダーなど、あらゆる情報をGoogleに預けていますが、それはGoogleが逃げ道を用意しているからなんですね。気に入らなければいつでも止めていいと。そうでなかったら、怖くてGoogleには自分のデータを預けたくないですよ。本当の意味でユーザー第一主義じゃないと居心地の良い空間というのは生まれてこないと思いますね。口先だけでユーザー主導というのではなくて、心底ユーザー主導にしていたところが勝つだろうと思います。


――ソーシャルメディアの中には、まだまだ単体でビジネスが成立していないところもあります。結局Googleのような財力のある企業が勝つということでしょうか?

湯川氏●
Googleの超管理社会がくるのではないのという論調はまだまだ強いですよ。ですが、僕はそう思っていなくて、この本の中で書きたかった事の1つは、そういうことにはならないよということなんですね。どうしてかと言うと、人々が表現をし始めたからなんです。これまではインターネットという図書館に情報がいろいろあって、その情報をどう検索すれば的確な情報が得られるかが大事だった。しかしこれからは、図書館の横にある公民館に人が集まり始める。つまりソーシャルメディアですね。そこにみんなで集まって表現して、つながっていく事のほうが、図書館で情報を集めてくるよりも大事な時代になってくる。収益的に見ても公民館でのビジネスの方が上に来る時代になりつつあると思うんです。もちろん検索はこれからも重要な技術ですが、インターネットは次のフェーズに来ている。それがソーシャルメディアだと思うわけです。


――最後に、湯川さんが今注目していることを教えてください。

湯川氏●
今後の興味としては、クリエイティビティがソフト面からハード面に行くのかなと思っています。公文俊平先生の本に出ているのですが、アメリカのある人がこれからは家庭に一台、工作機械ができる時代だというのですね。消費者は自分の好きなハードを、その工作機機を使って作っていけるようになると。私はそんなのはありえないと思っていましたが、工作機械でないにしろ、自分の欲しいものがハードで実現できる時代というのは確かにありかなと思い始めています。

 たとえばセカンドライフの中で、Searsという百貨店に行って、キッチンの色や配置をボタン1つで変更して、「注文」ボタン押せば、同じものが送られてくるとかね。そういうところまで来ている。セカンドライフのものを作るソフトを専門家に見せたら、これは3D CADそのものだと言われました。コンピュータを使った設計の技術が、セカンドライフの中で使われているんですね。セカンドライフはオープンソースですから、いろんな機能がこれからどんどん出てくると思うのです。もっと使いやすくなって、クリエイティビティを誘発された一般の人が3次元空間の中でデザインをし始める。そしてボタン押せばデザインしたものをメーカーさんが作ってくれる。そういう時代が来ると。ですから、一家に一台の工作機械というのは、物理的な機械ではなくて、実は3Dインターネットかもしれない。テキストの分野ではオンデマンド出版がすでにありますけど、そういう形でハードの方も消費者1人ひとりのクリエイティビティにしたがって、モノが作られる時代になるのかなと。そこに日本の産業がどう関わってくるか、そのあたりを調べて行きたいと思っています。

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