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- 2024/04/25 掲載
組織で「いい思いをする」には「コネが必須すぎる」ワケ
マリー・マッキンタイアー
ワークプレイス心理学者。自身のウェブサイト(www.yourofficecoach.com)を通じて国際的に活動するキャリアコーチ。拠点はアメリカだが、日本、オーストラリア、カナダ、韓国、イギリス、ケニア、インド、フランス、中国、その他多くの国や文化を背景に持つ多種多様なクライアントにコーチングを行う。
フォーチュン500企業の人事ディレクターをはじめ、これまで公的機関と民間企業の両方で管理職を務めた経験がある。キャリアコーチとして、パナソニック、サンリオ、シスコ、グーグル、アマゾンをはじめとする多様な民間企業、および政府機関やNPOで働く人たちと一緒に仕事をしてきた。
自身のウェビナーでキャリアの成功戦略を教えるのに加え、各地の大学でもマネジメントのセミナーを担当。職場の悩みに答えるコラム「あなたのオフィス・コーチ(Your Office Coach)」を13年間続け、本書の他に『マネジメントチーム・ハンドブック(The Management Team Handbook)』という著作がある。『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『カナディアン・ビジネス』誌、『フォーチュン』誌など、さまざまなビジネス出版物でキャリアに関するアドバイスを執筆
桜田直美
翻訳家。早稲田大学第一文学部卒。訳書は、『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』『アメリカの高校生が学んでいる投資の教科書』(共に、SB クリエイティブ)、『言語の力 「思考・価値観・感情」なぜ新しい言語を持つと世界が変わるのか?』(KADOKAWA)、『ロングゲーム 今、自分にとっていちばん意味のあることをするために』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『世界最高のリーダーシップ「個の力」を最大化し、組織を成功に向かわせる技術』(PHP研究所)、『まっすぐ考える 考えた瞬間、最良の答えだけに向かう頭づくり』(サンマーク出版)などがある。
「組織で自由に働く人」は敵と味方を見分けて利用する
どんな組織であっても、不当な目にあわされたと嘆いている人がいると、どこからともなくこんな声が聞こえてきます──「ここでは実績なんて関係ない。誰とコネがあるかがすべてだよ」不当な目とは、昇進や昇給がかなわなかったことかもしれないし、あるいは望んだ仕事が与えられなかったことかもしれない。実際に、このセリフの半分は本当です。組織の力学という観点から考えると、組織の中でいい思いができるかどうかは、実績が半分、コネが半分といったところでしょう。
コネで大切なのは、あなたが誰を知っているかではなく、誰があなたを知っているか、です。残念な仕事ばかりしていると、どんなに社内で人気がある人でも、いずれ必ず評判を落とすことになります。その一方で、どんなにすばらしい仕事をしても、適切な人に自分の存在を認識してもらわなければまったく意味がないのも事実です。
ここで思い出してもらいたいのは、ほぼすべての意思決定は主観的だということ。そのため、自分の思い通りの意思決定を導き出したいなら、主観的に意思決定を行う人たちからよく思われていなければなりません。組織で自由に働く人たちは、誰でも次の真実を心得ています。
たいていの人は、相手のことが好きであれば、その人の助けになりたいと思うものです。でも、もし相手のことが嫌いなら……まあここは、その人の支援者になることはないだろうという表現にとどめておきましょう。
支援者や仲間がいることは、あなたのレバレッジを高めてくれます。逆に敵や反対勢力がいることは、レバレッジを下げる要因になります。仲間の数よりも敵の数のほうが多くなったら、あなたはもう終わりです。たとえ大きな力を持つ経営幹部であっても、仲間がいなければどうにもなりません。
昔のクライアントに、まったく仲間をつくらないCEOがいました。秘書から生産現場の社員、それに大口の顧客にいたるまで、相手が誰であろうと絶対に親しくなろうとしないのです。数字だけを見れば、彼はすばらしい業績を上げていましたが、取締役会は結局、彼を解任することにしました。CEOは社内で絶大な権力を持つ存在ですが、他人と協力して働くことができないという欠点だけのために、すべてのレバレッジを失ってしまったのです。
仲間が多いほど、達成できることも増えるのはたしかです。しかし、あまりにも世間知らずになってはいけません。組織内でうまく立ち回るには、敵の存在をきちんと認識することも絶対に必要です。
これがスポーツであれば、誰が敵であるかはユニフォームの色を見るだけでわかります。あなたのユニフォームが赤なら、青いユニフォームを着た人からパスを回してもらえることはないでしょう。相手が勝てば、あなたは負けです。
しかし、ビジネスの人間関係はそこまで敵と味方がはっきりしていません。もしスポーツと同じくらいはっきりしていたら、組織で生きるのもさぞ楽になることでしょうが、ビジネスではまず敵か味方かを自ら把握する必要があります。
「友人」「パートナー」「人脈」という3つの仲間を取り込む
仲間はあなたに、情報やアドバイスを与えてくれます。何かあったら助けてくれるし、あなたの支えになってくれる。組織での生活で、仲間ほど貴重な資産はないでしょう。危険な敵と対決することになったら、頼りになる味方ほどありがたい存在はありません。文字通り、命の恩人になってくれます。メーガンを採用すると、ブラッドはすぐに大きな間違いだったと後悔しました。面接ではきわめて好印象でした。メーガンは独創的なアイデアをいくつも提案するし、明るくて話しやすい。ところが実際に働き始めると、ブラッドはすぐにメーガンの態度が鼻につくようになったのです。
メーガンは落ち着きがなく、何かを最後まで考える前に、すぐ別の考えに飛びつきます。用があるときもすぐに見つからず、いつもどこかで誰かとおしゃべりをしている。しかも、ブラッドの提案をことごとく無視するのです。そのため、会社で人員削減が決まると、ブラッドはこれを口実に、波風を立てずにメーガンに辞めてもらおうと考えました。
ところが、人員削減の候補にメーガンの名前を書いて提出すると、上司がブラッドのところに来て言いました。「メーガンを辞めさせるなんてとんでもない!彼女のおかげで職場がどんなに明るくなることか!」。どうやらメーガンは、ブラッドの上司(つまりメーガンにとっては上司の上司)と仲良くなっていただけでなく、大きなプロジェクトで成果も上げていたようです。メーガンは多くの部署に友だちがいて、それに仕事の能力も認められている。そんな評判が口コミでさらに広まり、メーガンはすっかり社内の人気者になっていたのです。
メーガンは、社内に強力な支援者のネットワークを築いていました。彼女はただ自然にふるまい、その結果として仲間が増えただけなのか、それとも計算したうえでの行動なのかはわかりませんが、どちらにしても効果は同じです。メーガンには、仕事を失わずにすむだけのレバレッジがあったのです。
「仲間」に分類される人には、大きく「友人」「パートナー」「人脈」という3つのカテゴリーがあります。
「友人」に入るのは、たとえば仲のいい同僚です。彼らとは、共通の趣味があったり、気が合ったりする。仕事やプロジェクトや目標に関係なく、お互いに好きだから一緒にいる関係です。人間の集団でそれなりの時間をすごすと、こういった「非公式の仲間」が自然とできるものです。外向的な人は自然に友人をつくることができますが、内向的な人は努力が必要になるかもしれません。
しかし、ここで気をつけてもらいたいのは、同僚はあなたの人柄と能力を区別して評価するということです。人間的には大好きだけど、仕事の面では評価しないということはよくあります。どんなに仲のいい同僚でも、仕事ができなければ昇進のサポートはしませんし、重要なプロジェクトからも外すでしょう。職場で仲のいい友人から、人柄だけでなく仕事の能力も評価されていたら、その友人は味方としてより頼りにできる存在になります。
「パートナー」とは、仕事上で協力しなければならない関係にある人たちです。お互いに目標を共有しているので、どちらかの行動がもう一方の成功にも影響を与えることになります。たとえば、プロジェクトチームのメンバーなら、チームの全員にそれぞれの仕事をきちんとやってもらう必要があります。経理担当は、各部署のマネージャーから正確な数字をあげてもらわなければ、自分も正確な会計報告を書くことはできません。一方で各部署のマネージャーは、部署のリソースを効果的に管理するために経理部の情報を必要としています。
あなたの行動が相手の仕事に影響を与える(あるいはその逆)のであれば、それは「パートナー」の関係です。パートナーは自分で探す必要がありません。仕事をしていれば必ず存在するからです。
パートナーは、あなたが有能で協力的だと確信できなければ仲間になることはありません。あなたの行動が、彼らの成果も左右するからです。手抜きの仕事をしたり、期限を守らなかったり、相手を軽んじる行動を取ったりしたら、パートナーは一瞬にして敵に変わってしまうでしょう。パートナーが友人でもあれば仕事はもっと楽しくなりますが、相手のことがそれほど好きではなくても、仕事のために協力的な仲間にならなければなりません。
組織スキルのない人たちは、パートナーをライバルと勘違いすることがよくありますが、パートナーは、強力な仲間になる可能性を秘めた存在です。彼らのことはできるかぎり有効に活用すべきであり、敵対するなどもってのほかです。生まれつき負けず嫌いだという人も、プロジェクトに参加するときや、誰かと目標を共有しているときは、競争心のスイッチをオフにしなければなりません。その負けず嫌いの精神は、パートナーに勝つことではなく、期待以上の仕事をすること、過去の成果を超えること、ライバル会社に勝つことのほうに向けるべきでしょう。パートナー同士で競争すると、誰もが負けることになります。 【次ページ】助けや情報が必要なときに頼ることができる「人脈」
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