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- 2023/10/21 掲載
なぜイスラエル政府は「史上最大の軍事作戦」を展開するのか、それでも長期化のワケ
連載:小倉健一の最新ビジネストレンド
現代でも受け継がれる「ハンムラビ法典」
──この言葉こそ、現在のイスラエルの過剰にも思えるガザ地区への攻撃を想起させるものかもしれない。
イスラエルの軍事的思考の1つは、すべての攻撃に対して、1対1で反撃を加えることだ。古代バビロニアのハンムラビ王によって制定されたハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」という一節を思い起こさせる。冒頭のヘブライ語作家のフレーズも、この「目には目を…」を連想させるものであろう。
目には目を、というと野蛮な復讐を合法と定めた法律なのかと感じる人もいるようだが、ハンムラビ法典の目的の一つは、罰の過度な実施を防ぐことだった。「目をやられたら、復讐するのは目までにしなさい。それ以上に、殺したり、他のものを強奪してはいけませんよ」というのが含意だったのである。
「目には目を」の原則は、「レクサタリオニス」または「同害復讐法」として知られ、罪に対する罰が適切で均衡がとれていることを保証するものだった。具体的には、傷害を加えた罪に対して、同じ傷害を加えることで報復することを示している。
この「目には目を、歯には歯を」という原則は、公平性と正義を求める基本的な人間の願いを反映しているとされ、多くの法的伝統、特にユダヤ法やイスラム法などでも採用されている。
他国の軍事行動には「軍事行動」で反撃を
ユダヤ人たちが19世紀末に起こした政治運動「シオニズム」。シオニズムは、ユダヤ人の民族的アイデンティティーを再確立し、彼らの歴史的故郷である「約束の地」に独自の国家を建設することを目指すものだった。シオニズム運動の父とも称されたテオドール・ヘルツルは、ユダヤ人が自らの国家を持つことによって、ヨーロッパでの反ユダヤ主義や迫害から解放されると考えた。
平和主義者としても知られ、ユダヤ民族国家は武器を絶対に使わないことで、隣国のアラブの強国たちからも評価を受け、共存できると信じた。しかし、現実はそうはならなかった。
数々の反ユダヤ主義者による暴動や攻撃に直面したことで、いつしか、彼らは積極的な自衛手段に出るようになった。この姿勢は、ナチの首謀者の追跡と処罰、テロリストの処罰、他国の軍事行動には軍事行動で反撃するということに現れた。
「(モサドとツァハルは)敵がどんなに離れていてもその攻撃意図を抑止する、もう一つは、ユダヤ民族のためなら、拠点がいかに国境を超えて分散していてもそれを存続させ、世界中のユダヤ人を安心させることである」
(フレデリック・アンセル著『地図で見るイスラエルハンドブック』)
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