• 2006/08/07 掲載

王子製紙が北越製紙に対して敵対的買収。業界リーダーの3つの狙いとは?

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93年に神崎製紙、96年に本州製紙と合併し、製紙業界のリーダーとして君臨してきた王子製紙。その王子製紙が、7月23日、業界6位の北越製紙に対してTOB(株式公開買い付け)を仕掛けた。ライブドアによるニッポン放送、楽天によるTBSなど、その結果からも敵対的買収は日本の文化にあわないのではと言われ始めている中、王子製紙はなぜあえてTOBを仕掛けたのか。

成熟産業に突入した製紙業界

 経済産業省の調査によると、紙・パルプ市場の生産、出荷、在庫指数は、平成12年を100とした場合、平成17年、18年は、生産、出荷がともに減少、在庫が増加傾向にあり、市場全体としては成熟期に突入しているといえる(参考:平成17年6月/生産98.6、出荷99.1/在庫107.2、平成18年6月/生産98.2、出荷101.7、在庫105.9)。

 また、市場の頭打ちに追い討ちをかけるように低価格輸入紙の台頭や、原燃料高によって各社の競争はより一層激化している。

 業界のトップは王子製紙で売上高は1兆2138億円、2位は洋紙トップの日本製紙で売上高は1兆1521億円。3位はエリエールなどの家庭用品で有名な愛媛に基盤を置く大王製紙で売上高は4022億円。4位は段ボールトップのレンゴーで売上高は4021億円。5位が三菱製紙で2284億円。そして、6位が売上高1536億円の北越製紙である。さらに、トーモクや中越パルプ工業などが続き、各社がしのぎを削っている。※売上高は2006年3月期

M&A、王子製紙、北越製紙、製紙業界
製紙業界各社の売上高と特徴

 厳しい状況が続く製紙業界だが、品種別で見ると発色性に優れ雑誌やカタログなどに使われるコート紙(塗工紙)の需要が急成長。各社は同品種の生産能力強化に乗り出している。2位の日本製紙は総工費3000億円を投資し石巻工場で大型塗工紙設備を新設、3位の大王製紙は総工費470億円で三島工場に新設、6位の北越製紙も2008年末稼動予定で総工費550億円を投資し新潟工場に塗工紙の生産設備を新設する。

業界トップの王子製紙は塗工紙工場を中国江蘇省南通市に、2006年末の稼動を目指す計画を発表。しかし中国政府の許認可の遅れで停滞を余儀なくされる。結果、本年7月30日に中国政府から許可を得、2009年末から生産を稼動することに。競合に完全に出遅れてしまう結果となった。

2007年5月に解禁される三角合併

 日本ではトップを走る王子製紙だが世界では7位、日本で2位の日本製紙は9位となっている。トップは米国インターナショナル・ペーパー(以下、IP)で、1987年以来ずっと首位を堅持。時価総額はIPが約1兆3000億円、王子製紙が約6921億円、その差は1.8倍にもなる。(2006年6月30日時点)

 現在、規制緩和やITの浸透で国境を越えたボーダーレス化が急速に進んでいる。M&Aの分野でも規制緩和が進み、2007年5月には三角合併が解禁される。三角合併とは、買収を計画するA企業が子会社Bを通じて、Cという企業を買収する場合、Cの株主に支払う対価をAの株式交付でも可能にするというものである。

 実際、米IPが王子製紙を買収するケースを考えると、過半数を取るためには単純計算で時価総額の約4分の1の株式で王子製紙が手に入ることになる。合併には取締役会や株主の決議などが必要だから、簡単に実行はできないが、すでに多くのM&Aを経験している米企業が本格的に買収攻勢に乗り出した場合、完全に防御できるという保証もない。

 それに、なによりも買収ターゲットにされた場合、防御のために経営資源を投入せざるをえなくなり、本来の業務に集中できず、競合社に差をつけられてしまうというケースも考えられるのだ。

 こういった事態にならないためにも経営者は買収ターゲットにされないよう、企業価値を向上することが必須である。

M&A、王子製紙、北越製紙、製紙業界
図表①:王子製紙と北越製紙の比較その1

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