- 2006/08/07 掲載
王子製紙が北越製紙に対して敵対的買収。業界リーダーの3つの狙いとは?
成熟産業に突入した製紙業界
経済産業省の調査によると、紙・パルプ市場の生産、出荷、在庫指数は、平成12年を100とした場合、平成17年、18年は、生産、出荷がともに減少、在庫が増加傾向にあり、市場全体としては成熟期に突入しているといえる(参考:平成17年6月/生産98.6、出荷99.1/在庫107.2、平成18年6月/生産98.2、出荷101.7、在庫105.9)。また、市場の頭打ちに追い討ちをかけるように低価格輸入紙の台頭や、原燃料高によって各社の競争はより一層激化している。
業界のトップは王子製紙で売上高は1兆2138億円、2位は洋紙トップの日本製紙で売上高は1兆1521億円。3位はエリエールなどの家庭用品で有名な愛媛に基盤を置く大王製紙で売上高は4022億円。4位は段ボールトップのレンゴーで売上高は4021億円。5位が三菱製紙で2284億円。そして、6位が売上高1536億円の北越製紙である。さらに、トーモクや中越パルプ工業などが続き、各社がしのぎを削っている。※売上高は2006年3月期
製紙業界各社の売上高と特徴
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厳しい状況が続く製紙業界だが、品種別で見ると発色性に優れ雑誌やカタログなどに使われるコート紙(塗工紙)の需要が急成長。各社は同品種の生産能力強化に乗り出している。2位の日本製紙は総工費3000億円を投資し石巻工場で大型塗工紙設備を新設、3位の大王製紙は総工費470億円で三島工場に新設、6位の北越製紙も2008年末稼動予定で総工費550億円を投資し新潟工場に塗工紙の生産設備を新設する。
業界トップの王子製紙は塗工紙工場を中国江蘇省南通市に、2006年末の稼動を目指す計画を発表。しかし中国政府の許認可の遅れで停滞を余儀なくされる。結果、本年7月30日に中国政府から許可を得、2009年末から生産を稼動することに。競合に完全に出遅れてしまう結果となった。
2007年5月に解禁される三角合併
日本ではトップを走る王子製紙だが世界では7位、日本で2位の日本製紙は9位となっている。トップは米国インターナショナル・ペーパー(以下、IP)で、1987年以来ずっと首位を堅持。時価総額はIPが約1兆3000億円、王子製紙が約6921億円、その差は1.8倍にもなる。(2006年6月30日時点)現在、規制緩和やITの浸透で国境を越えたボーダーレス化が急速に進んでいる。M&Aの分野でも規制緩和が進み、2007年5月には三角合併が解禁される。三角合併とは、買収を計画するA企業が子会社Bを通じて、Cという企業を買収する場合、Cの株主に支払う対価をAの株式交付でも可能にするというものである。
実際、米IPが王子製紙を買収するケースを考えると、過半数を取るためには単純計算で時価総額の約4分の1の株式で王子製紙が手に入ることになる。合併には取締役会や株主の決議などが必要だから、簡単に実行はできないが、すでに多くのM&Aを経験している米企業が本格的に買収攻勢に乗り出した場合、完全に防御できるという保証もない。
それに、なによりも買収ターゲットにされた場合、防御のために経営資源を投入せざるをえなくなり、本来の業務に集中できず、競合社に差をつけられてしまうというケースも考えられるのだ。
こういった事態にならないためにも経営者は買収ターゲットにされないよう、企業価値を向上することが必須である。
図表①:王子製紙と北越製紙の比較その1
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