・ネットワークの状況
まず考えたいのは、現在使用しているネットワークの状況である。WAN回線部分については、その帯域とRTTが重要となる。いくつかのベンダーは、その製品の導入効果が得られやすい帯域やRTTを提示しているので、参考にしよう。一般に、帯域は狭いほどRTTは大きいほど効果が出やすいと考えてよい。特に一部の国際回線など、パケットロスがひんぱんに発生している回線では、数倍から数十倍の改善効果が期待できることもある。一方、広帯域やRTTが小さい場合にも、けっして効果がないわけではない。先の計算式からいえば、RTT=10msの場合、ウィンドウサイズを16KBとすれば、理論上のスループットは13Mbpsしか出ない。たとえば東京-大阪間(弊社実測で十数ms)で、数十MbpsのWAN回線を利用している場合などは、導入の効果が十分期待できる。
・事前に導入効果を確認しよう
前項で述べたとおり、WAN最適化の導入効果はユーザー環境によって差が出ることが考えられる。そのためにも、事前に導入効果を確認したほうがよい。できれば実環境か、それに近い形で確認しよう。もしできない場合は、帯域制御装置やWANエミュレータ[*1]などを用いれば、帯域・RTT・パケットロスなど、実際のWANに近い環境を再現することもできる。もちろんネットワークだけでなく、実際に使うアプリケーションかそれに近いもので確認することが望ましい。また、クライアントPCはインストールされているアプリケーションによってパフォーマンスに影響が出やすいため、できれば複数台用意し、クライアント間で差がないことを確認すべきである。
・ほかの機器との配置に気を付けよう
WAN最適化製品を対向で設置するとき、その間の通信は独自の専用プロトコルでカプセル化されていることが多い。ルータなどで帯域制御やフィルタリングなどを行っている場合は、WAN最適化製品との配置に気を付ける必要がある(下図)。
WAN最適化製品の配置帯域制御装置やファイアウォールなどと併用する場合、LAN寄りに帯域制御装置を配置し、プロトコルごとの優先処理をする。次にWAN最適化製品を配置し、WAN寄りでパケットフィルタリングを行いWAN最適化製品の独自プロトコルを通すようにする
・冗長化構成には要注意
WAN最適化製品における冗長化機能は、製品によってさまざまである。透過型に設置できる製品では、バイパス機能により、電源障害時は透過型の際には直列に、プロキシ型の際には並列に配置し、通常運用系の機器に障害が発生したら、待機系の機器が動作することになる(下図)。なお、中には冗長化機能を持たないものもあり、ロードバランサなどを用いるか、最悪の場合には「障害時=最適化しない」ということになる。
WAN最適化製品の冗長化
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