• 2006/07/11 掲載

【NETWORK Guide】ネットワーク「改築」講座:Web高速化[前編](2/2)

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[*1 ] WANエミュレータ
WAN回線の遅延時間やパケットロスなどをエミュレートできるもの。Empirix社PaketSphereなどの市販製品がいくつかあるほか、フリーソフトウェアではLinuxで動作するNIST Netなどが有名。
 

 

第1回はこちら


第2回はこちら

・ネットワークの状況

 まず考えたいのは、現在使用しているネットワークの状況である。WAN回線部分については、その帯域とRTTが重要となる。いくつかのベンダーは、その製品の導入効果が得られやすい帯域やRTTを提示しているので、参考にしよう。一般に、帯域は狭いほどRTTは大きいほど効果が出やすいと考えてよい。特に一部の国際回線など、パケットロスがひんぱんに発生している回線では、数倍から数十倍の改善効果が期待できることもある。一方、広帯域やRTTが小さい場合にも、けっして効果がないわけではない。先の計算式からいえば、RTT=10msの場合、ウィンドウサイズを16KBとすれば、理論上のスループットは13Mbpsしか出ない。たとえば東京-大阪間(弊社実測で十数ms)で、数十MbpsのWAN回線を利用している場合などは、導入の効果が十分期待できる。

・事前に導入効果を確認しよう

 前項で述べたとおり、WAN最適化の導入効果はユーザー環境によって差が出ることが考えられる。そのためにも、事前に導入効果を確認したほうがよい。できれば実環境か、それに近い形で確認しよう。もしできない場合は、帯域制御装置やWANエミュレータ[*1]などを用いれば、帯域・RTT・パケットロスなど、実際のWANに近い環境を再現することもできる。もちろんネットワークだけでなく、実際に使うアプリケーションかそれに近いもので確認することが望ましい。また、クライアントPCはインストールされているアプリケーションによってパフォーマンスに影響が出やすいため、できれば複数台用意し、クライアント間で差がないことを確認すべきである。

・ほかの機器との配置に気を付けよう

 WAN最適化製品を対向で設置するとき、その間の通信は独自の専用プロトコルでカプセル化されていることが多い。ルータなどで帯域制御やフィルタリングなどを行っている場合は、WAN最適化製品との配置に気を付ける必要がある(下図)。

WAN最適化製品の配置
WAN最適化製品の配置
帯域制御装置やファイアウォールなどと併用する場合、LAN寄りに帯域制御装置を配置し、プロトコルごとの優先処理をする。次にWAN最適化製品を配置し、WAN寄りでパケットフィルタリングを行いWAN最適化製品の独自プロトコルを通すようにする


・冗長化構成には要注意

 WAN最適化製品における冗長化機能は、製品によってさまざまである。透過型に設置できる製品では、バイパス機能により、電源障害時は透過型の際には直列に、プロキシ型の際には並列に配置し、通常運用系の機器に障害が発生したら、待機系の機器が動作することになる(下図)。なお、中には冗長化機能を持たないものもあり、ロードバランサなどを用いるか、最悪の場合には「障害時=最適化しない」ということになる。

WAN最適化製品の冗長化
WAN最適化製品の冗長化



 WAN最適化の技術は、最近出てきたばかりの技術ではなく、3年以上前から存在しており、注目を集めたのはここ1年ほどである。かつてのギガビットイーサネットの登場など、ネットワーク業界に大きな変革をもたらす技術開発は、残念ながら最近見られない。したがって、WAN最適化など数少ない有力な技術に、大手・ベンチャーがこぞって乗り込んでくる。そのため、市場が立ち上がる前から、非常に厳しい競争が始まっている。

 同様の現象は、2年ほど前の無線LANスイッチやSSL VPNにも見られたが、これらの市場は残念ながらまだ成熟してはいない。WAN最適化も、万人が納得して利用できるようになるには、あと数年を必要とするだろう。

 しかしWAN最適化の適用範囲は、無線LANスイッチやSSL VPNのように限定的なものではなく、WANという、より広範囲な市場をターゲットにしたものであり、その可能性には大きいものを著者も感じている。いずれ、すべてのルータ、いやすべてのネットワーク機器に、WAN最適化の機能が搭載されるときがくるかもしれない。

   
           
コスト削減/効率化のポイント

 WAN最適化製品の導入効果が得られやすいのは、RTTが比較的大きく、回線コストが高い海外拠点との接続への適用だろう。アジアの一部など回線品質が悪いときには、効果がより顕著となる。機器費用は100万円前後から数百万円程度だが、対向で設置しても、2倍以上のパフォーマンス向上が見られれば、十分ペイできると考えられる。  国内のWAN回線では、RTTは数十msと比較的小さく、パケットロスなどもほとんど生じないため、国際回線ほどの効果は得にくい。別の見方をすれば、何らかの理由で回線の増速が難しいときや、逆に回線速度が数十Mbpsと十分速いときなどに効果がある。WAFSでは、データの事前配置やファイルサーバ間のミラーリング機能を併用すれば、64Kbpsなどの狭帯域回線でも十分な効果が得られるだろう。  冒頭でも説明したが、WAN越しのアプリケーション実行において、回線増速はもはや絶対的な効果が得られると考えてはならない。いい換えれば、必要以上の回線増速を行わないことが、コスト効率化における最大のポイントといえるかもしれない。

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