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- 2023/06/30 掲載
大苦戦中の楽天モバイル、なぜ三木谷氏はKDDIの「軍門に下る」ことを選んだのか
大関暁夫のビジネス甘辛時評
三木谷氏が繰り出した「苦肉の策」とは
楽天の2023年3月の第1四半期決算は、営業損益で761億円の赤字となっていますが、これはひとえにモバイル事業が1,026億円の巨額赤字を計上していることにあります。そして、このモバイル事業の赤字は、ゼロからスタートした基地局整備に対して依然として年間3,000億円を超える巨額投資が続いていることにあります。その基地局ですが、決算発表時のアナウンスでは2023年4月時点で5万7000局を超えたとのこと。それでもNTTドコモの約260,000局(4G)、auの約200,000局、2社に比べやや「つながり」が悪いと言われるソフトバンクですら170,000局を超えており、楽天はまだまだ勝負にならない状況にあるのが分かります。
そこで今回打ち出した「苦肉の策その1」が、KDDI(携帯キャリアはau)回線借用契約において、ローミング(相互乗り入れ)の拡大を決めたことです。楽天はこれまで、自前の基地局増強によって、人口カバー率99%超えを目指し(現在98.4%)その段階でのKDDI回線借用解消を前提としてきました。ところが今回突如、自前での目標達成を諦め、他社回線に徹底的に頼っていくという方向へ基本戦略を180度転換したのです。
徹底的にと申し上げたのは、これまでの東京23区など大都市では自前回線使用を前提としてKDDI回線の借用は地方中心にしてきたやり方を改め、大都市でもKDDI回線を借りることにしたからです。これはとりもなおさず、後発ゆえに携帯電話に適した通信周波数であるプラチナバンドを持たない「つながりにくい楽天」の解消を図ろうという狙いにほかなりません。なお、KDDI回線利用の際にこれまで利用者負担であったローミング費用は、楽天が全額持つ方針に変更されます。
これを踏まえて発表された新料金プラン「Rakuten最強プラン」は、「つながる」KDDI回線を使ってデータ3ギガバイトまでが月額980円(税別)、同20ギガバイトまで1,980円、同20ギガバイト以上無制限で2,980円という内容になっています。全国どこでもKDDIの人口カバー率99.9%回線の利用を確保しつつ業界最安値水準をキープした点には、それなりに利用者の評価が得られるのではないでしょうか。
なぜこのタイミングで「方向転換」に踏み切ったのか
一方で、楽天が切望してきたプラチナバンドの取得については、総務省の後押しもあり、年内実現に向けて話が前に進み始めてもいるわけで、このタイミングでなぜ戦略転換を急いだのか、との疑問も浮かんできます。言ってみれば今回の戦略転換で、完全にライバルKDDI(au)の「軍門に下った」とも言えるのであり、プラチナバンド取得を目の前にしたこのタイミングにもかかわらず、通信キャリアとしての存在価値を著しくおとしめるような選択をせざるを得なかったとも見て取れるわけです。
この選択の裏には、楽天モバイルが抱えるある「重篤」な問題が浮き彫りになっているように思います。 【次ページ】楽天モバイルが抱える「重篤な問題」とは
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