- 2006/06/26 掲載
【世界のビジネス事情】経済でも変化を遂げるラテンアメリカ諸国(2/2)
望まれる日本の積極的対応
第1回はこちら
ラテンアメリカにおける中国の台頭
最近、注目を集めている略語に「BRICs」がある。米国の証券会社ゴールドマン・サックスが'03年10月の報告書(Dreaming with BRICs:The Path to 2050)のなかで、21世紀の成長株として着目するブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字を並べたものである。いずれも潜在的な成長力は極めて大きく、21世紀半ばにはこれら4カ国が世界経済の中心になると報告書は予測している。
このようなBRICsのコンテキストからも無視できないのが、欧米諸国に加えラテンアメリカにおける新 たなプレーヤーとして登場した中国である。中国経済の台頭は世界貿易に大きな変化をもたらしているが、ラテンアメリカにおいても例外ではなく、中国への資源輸出が急増している。
特にブラジルとの経済関係が緊密化しており、図4に見るようにブラジルから中国への輸出は'99年の7億ドルから'04年の54億ドルにまで拡大した。ブラジルにとって長年のパートナーである日本への輸出が20億ドル台で推移しているのと対照的だ。いまや中国は、ブラジルにとって米国に次ぐ貿易相手国となっている。

図4 ブラジルの輸出(億ドル)
こうした輸出の急増は、中国の旺盛な資源需要を背景としているが、今後も中国の資源需要は拡大の一途をたどると予想されており、資源供給国としてのラテンアメリカの戦略的位置づけは高まるはずである。このため、胡錦濤国家主席は'04年11月に多数の中国の企業経営者を伴い、ブラジル、アルゼンチン、チリ、キューバを歴訪している。
たとえばブラジルでは、胡主席が「全天候型戦略的パートナーシップ」と位置づけ、今後2年間で約100億ドルの投資を公約し、貿易額も3年内に200億ドルになると表明している。既に輸入が急増している鉄鉱石や大豆のみならず、ブラジルの豊富な資源確保という意図が明白だ。
また、最近の原油価格の高騰、中東情勢の混迷から、エネルギー関連の投資も多い。ブラジル沖合の海底油田の共同開発や、ブラジルの北東部から南部までの天然ガス・パイプラインの共同建設も特筆すべきだろう。
また胡主席は、ほかの訪問国でも資源外交に積極的で、アルゼンチンとは今後10年間で鉱業、鉄道、その他のインフラ分野で総額197億ドルの投資で合意した。アルゼンチンからは大豆の輸入が急増しており、ブラジルの大豆と合わせ中国の大豆輸入の3分の2をまかなっている。アルゼンチンは大豆のほかにも小麦、石油などの生産国であり、こうした輸入を確保するためにはインフラ整備の協力が欠かせないといえる。
さらに、チリとは共同で銅山開発の計画を進めるとされる。中国は'03年に大豆を上回る56億ドルの銅鉱・同関連製品を輸入したが、急増する銅製品需要のために銅鉱の確保も必須であり、世界最大の銅産出国であるチリも資源確保の戦略からは重要な国となるわけだ。
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