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  • 2023/03/09 掲載

常識では守れない? クレカ情報漏えいで、なぜ「セキュリティコード」まで漏れるのか

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2023年2月半ば、大手ソフトウェア販売会社においてクレジットカード情報・個人情報の漏えい事件があった。同社のお知らせによれば、漏えいしたカード情報に「セキュリティコード(CVV)」も含まれていた。「PCI DSSでは非保存を推奨しているセキュリティコードを保存していたのか?」と思うかもしれない。しかし、近年のカード関連のサイバー攻撃では、カード番号やセキュリティコードの保存・非保存はあまり関係ない。むしろ「そこにこだわるのは危険」という考え方もある。
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「サイトに保存しなければ安全」はもはや通用しない
(Photo/Shutterstock.com)

カード情報を保存しなければ安全か

 セキュリティ対策の一般論として、パスワードのような重要な情報は平文での保存は避ける(ハッシュ値で保存する)べきである。用途次第では顔認証などデバイスでの認証を行い、サーバでの認証情報の保存も避ける。ECサイトなどのオンライン決済でも、類似の観点から決済ページは専門の決済サイト事業者に任せ、ECサイト内で完結させない。セキュリティコードは保存しないで都度削除する──といった対策がセオリーになっている。

 こうしたセオリーは、間違ってはいない。大手クレジットカード会社が採用するセキュリティ基準である「PCI DSS」でも、セキュリティコードの保存は推奨されていない。過去において、決済・会計処理の便宜のためセキュリティコードを1カ月間ほど保存するPOS端末やECサイトが存在し、漏えい被害も発生しているからだ。

 そのため、メディアや専門家でも「決済は別ページにしてセキュリティコードは保存しない」運用や対策を推奨することが多い。筆者も2月に発生した大手ソフトウェア販売会社のインシデントでは「セキュリティコードを保存してたのか?」と疑問に思った。しかし、調べてみると今のカード情報窃取は高度化しており、別ページ決済・セキュリティコード非保存という対策では不十分なケースが増えているという。

Magecartの攻撃プロセス

 オンライン上のクレジットカード情報を盗むことを「デジタルスキミング」という。デジタルスキマーにとって、セキュリティコードの非保存はなんら攻撃の障害になっていないという現実がある。

 決済は専用の業者やカード会社のサイトに遷移させるようにし、セキュリティコードやPAN(カード番号)などもいっさい自社保存していないサイトでも、「Magecart」というデジタルスキミングの前にはほぼ無力だ。Magecartは本来攻撃グループの名前だが、その攻撃手法の名称としても使われる。どんな攻撃か。

 Magecartは、標的ECサイトが利用する外部サービスや広告ページを改ざんし、マルウェア(JavaScript)を埋め込む。利用する外部サービスには、たとえばトラフィックを分析するプラグインや集計サービスなどがある。これらサードパーティのシステムに侵入してマルウェアを仕込むこともあれば、標的ECサイトのCMSアカウント(これらはサードパーティの担当者も持っていることがある)を利用することもある。

 改ざんされたページをインクルードした標的のHTMLが決済サイトにアクセス、または決済処理に入ったとき、マルウェアがユーザーの入力情報(カード番号やセキュリティコード)を読み取り、攻撃者に送る。

 もっと巧妙な場合、偽の入力画面に情報を入力させてからエラーがあったとして再入力をさせるパターンもある。偽画面で情報を窃取し、エラーの再入力は正規サイトに飛ばす。こうすると、ユーザーの注文や決済処理は正常に終了し、注文の品も届くので情報漏えいの発見を遅らせることができる。

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【図解】Magecartによるクレジットカード情報の窃取プロセス

 さらにグループとしてのMagecartは、自身がデジタルスキミング攻撃を行うだけでなく、「プラットフォームビジネス」まで展開している。 【次ページ】乗っ取ったECサイトで「やりたい放題」の実態
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