- 2006/04/04 掲載
コスト削減と柔軟性向上を実現するSOA(2/3)
サービスの提供期間を短縮し、経営に役立つIT活用が可能に
─では、企業にとってSOAを導入することで得られるメリットとは?【飯島】端的に言えば、これまではアプリケーションのつくりとして、ビジネス・ロジックがそれ以外の要素、ユーザインタフェースやロジックのフロー、データなどと一体化もしくは密接に紐づいていたため、業務プロセスの変更や追加があった場合、その都度アプリケーションを変更したり、新たなアプリケーションを開発・修正しなければなりませんでした。
しかし、ビジネス・ロジックを独立的なモジュールとしてのサービス実装として他の要素から分離し、個々のサービス実装を明確に定義されたサービス・インタフェースでカプセル化することができれば、システムの構成要素間の自由度は高まります。
これにより、変更の局所化が促進されるとともに、モジュールの再利用性が促進され、開発期間及びコストの低減につながります。また業務プロセスに変更が生じた場合でも、必要最低限のサービス実装を追加または変更することで対応できるので、サービス提供までの期間も大幅に短縮し、ITを経営環境の変化 に迅速に対応させることも可能になるでしょう。サービス実装同士の依存性が低く、ポイントを絞りやすいので、保守管理も比較的容易に行えます。
従来のシステムでは、例えば、OSを入れ換えたら、その上で動いているアプリケーションもバージョンアップしなければならない、サーバーが替わったら、それにアクセスするクライアントも替えなければならないという依存関係の連鎖のジレンマに陥ってしまうケースが少なくありませんでした。そのためコ ストも肥大化し、予算取りも困難でした。
本来ビジネス側のニーズでシステムが変更されなければいけないのに、実はIT側の都合でシステムを変更せざるを得なかったのです。しかし、SOAを導入することでそのスキームを逆転させ、ITを本来あるべき姿に再構築することが可能になります。
最適なコストで段階的なステージアップが可能
─しかし、企業システムをSOA対応にしていくには時間もコストもかかりそうですね。【飯島】今申し上げたように、業務プロセスの柔軟性を向上できることが、SOAの大きなメリットの1つです。しかし、柔軟性ということに対して誤解も多いように思います。
ロジックそのものを全部変更したり、システムの入れ替えをいかに早く行えるかが柔軟性だと考えている方もいますが、それは違います。また、すべてを変更する必要もありません。企業が培ってきたノウハウや業界特有のロジックに基づく業務プロセスはどうしても残さざるを得ないでしょう。そういう部分は残し、足りないところや変更が必要なところからSOA対応の取り組みを始めればいいのです。
例えば、会計システムの見直しが必要だからといって、一気呵成に作り変えることを推奨しているわけではないのです。SOAはあくまでガイドラインです。今のシステムを活かしながら、足りないものを追加し、古いものを変更していくことで、最終的に新しいシステムへ作り変えていくことができるのです。
一気呵成に行うとすれば、膨大なコストがかかり、導入のハードルも高くなってしまいます。しかし、できるところから手をつけていくやり方なら、コストも時間も最適化でき、導入のハードルは低くなります。
いろいろなしがらみの中で手をつけられなかったことが、SOAをきっかけに紐解くことができるのではないかという期待もSOAに関心が集まっている理由でしょう。最終的なゴールに向けて段階的に移行できる現実的なアプローチも、SOAの大きなメリットの1つなのです。

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