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- 2023/02/01 掲載
なぜマイクロソフト新社長はコンサルタント? 大規模人員削減と新人事から見える今後
強調される前提の変化、マイクロソフトCEOの思惑
ナデラ氏が「件名: 短期的および長期的な機会に焦点を当てる」と題したメモの冒頭で強調したのは、コロナ禍で顧客やパートナーがデジタル支出を最適化し、より少ないリソースでより多くの成果を挙げていることを、マイクロソフト自身が目の当たりにしているという認識である。1月5日付けで、マイクロソフトのアジアプレジデントを務めるアーメッド・ジャミール・マザーリ氏が、日本マイクロソフトの社長年頭挨拶で強調した「Doing more with less(より少ないリソースでより多くのことを実施する)を行うための支援」とも一致する。
マザーリ氏は、クラウドを通じてインフラやデータ、ハイブリッドワーク環境、開発者ツール、セキュリティなどを提供するとともに、イノベーションを促進して企業の持続的な成長と社会課題の解決を促すと指摘。さらに「あらゆる仕事の中にAIや自動化、ロボット技術が取り込まれるため、デジタルテクノロジーへの精通が必須になる」と予想している。
そして、さっそくのタイミングで具体的な施策を打ち出した。論文執筆やコーディングを含め、さまざまな質問に答える能力を持つAI「ChatGPT(チャットGPT)」を開発するOpenAI(オープンAI)に対し、マイクロソフトなどは100億ドル(約1.3兆円)の巨額投資を行うことが明らかになったのである。
内製化という新たな波
こうしたマイクロソフトの動向について、事実関係を整理してみると次のようにまとめられる。「今後、企業の営業やマーケティングなどの活動にオンライン営業などを含めてITが占める割合がより大きくなる。実際に顧客がその方向に向かっている。マイクロソフトはそれを支援する」といったところだ。
これをIT部門の視点で翻訳してみると「企業のビジネスを支えるITの稼働を、AIなどを活用して自動化し、ユーザー自身が運用までできるように内製化することで、運用コストを削減する」と想定できるのである。
内製化というキーワードにたどりついたが、これを裏付けるデータも出てきている。調査会社のガートナーが1月18日に発表した「日本におけるソフトウエア開発の内製化に関する調査結果」で、企業、個人のいずれも内製化の方向に向かっていると指摘した。
内製化に向かう理由を見ると、システムインテグレーション(SI)に支払うコストが高額であることを背景にした「開発コストの削減」が55.2%と最も多く、SI企業とのやり取りの時間が長いことなどを理由に「開発、実装、保守対応の迅速化」を図るとの回答が49.7%と続いている。
ガートナーのシニアディレクターである片山治利氏は「企業の売り上げに直接関係する領域のアプリケーション開発は、本来ならば積極的な投資対象になるべきだが、コストが強く意識される可能性がある」と発表文でコメントしている。
さらに、もう1つの要因として、SI企業とのやり取りの時間を挙げていることも重要な変化だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)の成否は、優れたアイデアをいかに素早くサービスとして開始できるかにあるからだ。
SI企業に任せるのではなく、内製化によって自社でITを抱えなければ、スピードで負けてしまうという認識を、すでに企業が下していることを示す調査結果である。
【次ページ】外資系IT企業の日本法人社長には何が求められるのか
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