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- 2024/03/08 掲載
米メタ「好業績の数字」に隠れた“残念な兆候”、一部投資家がガッカリの理由
過去最高更新も……メタの好業績の実態
メタは2024年2月1日、2023年10~12月期決算を発表した。売上高は前年同期25%増の401億1,100万ドル、純利益は3倍の140億1,700万ドルとなり、売上高、純利益とも過去最高を更新した。アップルも同じ日に四半期決算を発表しており、増収増益は5四半期ぶりである。各社の好決算を受けて、IT業界が再び成長に向けて動き出したとポジティブに評価をする報道も多い。たしかに一時期の状況と比較すると市場環境が改善したのは間違いないが、一方で、爆発的な成長を見込む従来型ITビジネスが終わりを告げ、リアルな収益を投資家に還元するオールドビジネス型へのシフトが始まった兆候と捉えることができる。
一連の変化は、各社の決算を詳しく見ると、よりはっきりしてくる。
メタの売上高のほとんどは広告で占められており、年末商戦の追い風を受けて広告収入が約24%増えたことが増収の要因となっている。だが、純利益がここまで劇的に拡大したのは売上高の増加よりも、むしろオフィスの統廃合や人員削減、新規開発の凍結など、強烈なコストカットが功を奏している。
同社は業績不振を受けて、これまで湯水のように資金を投入してきた新規開発案件の多くを中止し、同時に人員削減を行った。今回の業績の多くはコストカットによるものと捉えて良いだろう。
アップルの好業績の実態
アップルについても、今回の好決算はコスト削減によるところが大きい。同社の収益構造は、本業であるハードウェアに加え、近年はサービス販売の比重が高まっている。ハードウェアの売上高は前年同期比でほぼ横ばい、サービス販売が約1割増という状況である。一方、コストについてはサービス関連では増加したものの、主力のハードウェアについては約4%削減、研究開発費用も前年同期比マイナスとなっており、全体からするとコスト削減によって利益を捻出した部分が大きい。同時にメタは、上場以来初となる配当を実施するとも発表している。
成長著しいIT企業は投資家への配当は行わず、得られたキャッシュフローはすべて新規開発に充当するのが一般的である。投資家は配当という現金でのリターンを得ることはできないが、将来の期待を反映した株価上昇によって利益を獲得できる。金融工学の理論上、株価というは当該企業が将来、得られる利益総額を現在価値に割り戻した金額と見なされているので、イノベーティブな投資がさらに大きな利益を生むと予想されれば、株価の上昇は長く継続する。 【次ページ】多くの産業が成長フェーズから成熟フェーズにシフトする
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