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  • 2022/12/07 掲載

脱炭素に超有効、CO2を吸収するCCUS商用化の「2つの課題」とは

連載:カーボンニュートラル最前線

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2050年カーボンニュートラルに向けて、従来の化石燃料から再生可能エネルギーなどへ切り替える「トランジション(移行)」がなかなか進まないことが明らかになりつつある。そんな中、化石燃料由来のCO2排出を減らす方法として現在注目されているのが、CO2回収・貯留・利用技術である「CCS/CCUS」だ。世界では商用化に向けた取り組みが顕在化し、日本でも実証が進む「CCS/CCUS」をめぐる最新の状況を解説する。
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CCS/CCUSの商用化をめぐる最新動向を解説する
(Photo/Getty Images)

にわかに脚光を浴びる「CCUS」

 EUのカーボンニュートラルに関するビジョン「A Clean Planet for All」において、2050年までに地球の平均気温を1.5℃以内に収めるためには、2050年にGHG排出量をネットゼロにする必要がある、といういわゆる2050年カーボンニュートラル目標が提唱されて以降、欧州のみならず世界的に脱炭素に向けた取り組みが加速している。しかし、取り組みを進める中、2050年カーボンニュートラル実現に向けては、「トランジション」、つまり従来の化石燃料から再生可能エネルギーなどへ切り替える難しさがあらわになってきた。

 円滑なトランジションを図るためには、従来の化石燃料を使いながら化石燃料由来のCO2排出量を低減しつつ、将来的にはカーボンニュートラル(CO2排出ネットゼロ)にもつながるような技術の採用が必要となる。そうした観点から、重要技術として脚光を浴びているのが、CCS/CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CO2回収・貯留・利用技術)だ。

 CCUSは工場などで排出されるCO2を分離・回収して、地中に圧入して固定化・貯留する「CO2回収(CCS)」と、分離・回収したCO2を化学品や燃料の原料などとして再利用する「CO2回収・有効利用(CCU)」の総称である。


 ではこの技術、一体どの分野での活用が期待されているのだろうか?

 2050年カーボンニュートラル実現に向けては、エネルギー分野のみならず、すべての産業・業務分野において、CO2排出量を大幅に削減していく必要がある。

 しかし、たとえば電力については、現在のようなトランジション期においては化石燃料を消費する火力発電所を引き続き活用していく必要がある。また、生産プロセスで高温の蒸気や熱を必要とする鉄鋼・化学産業などでは、当面は化石燃料に依拠せざるを得ない。

 こうした分野において、化石燃料由来のCO2排出量を削減できる現実的な手段として、CCS/CCUSが期待されているのである。

そもそもの仕組みをおさらい

 CO2回収、CO2貯留、CO2利用の各技術プロセスについて、もう少しだけ詳しく見ておこう。

 まずCO2回収では、発電所や鉄鋼・化学プラントなど、CO2を多量に排出する施設から、CO2のみを分離・回収する技術が重要となる。個々の技術としては、CO2を液体に溶存させて分離回収する「物理吸収法」、固体吸収剤に吸収させて分離回収する「固体吸収法」、CO2分離機能を有する薄膜を活用して排出ガスからCO2を分離回収する「膜分離法」などがあり、CO2分離能の向上や、CO2分離に要するエネルギーコスト低減などの技術開発が進められている。

 CO2貯留では、地中深くのCO2貯留可能な砂岩層などにCO2を圧入し固定化する技術が用いられている。

 CO2利用においては、回収・貯留したCO2を再利用する技術が重要となる。たとえば、CO2の貯留に当たっては、地中深くにCO2を圧入する必要があるが、CO2を貯留するためだけに新規の掘削を行うのは経済的に非効率である。

 一方、すでに開発した油田・ガス田などでは掘削井が存在するため、そうした既存インフラを利用し、CO2を圧入・貯留するとともに、その際の圧力で油田・ガス田に残った原油・天然ガスを押し出して回収するといった技術─いわゆるEOR(Enhanced Oil Recovery:原油増進回収技術)/EGR(Enhanced Gas Recovery)などが従来から開発されてきており、米国などでは実際の採掘現場で活用されている。

 さらに近年では、回収したCO2を、セメントや(従来は天然ガス・原油由来で製造されてきた)化学品の「原料」として活用する取り組みも見られる。CCS/CCUSは、CO2を資源として再利用する「カーボンリサイクル」の中核をなす技術としても期待されているのである。

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図表1:CCS/CCUSの概要

【次ページ】海外ではすでに商用化の動きあり
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