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- 2016/04/08 掲載
実践企業4社が登壇、「オープンイノベーション」を成功に導くコツとは?
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創造力を阻む企業の症状とは?
特別基調講演に登壇したのは、経済産業省の「フロンティア人材研究会」の委員を中心に、イノベーションを起こし続ける企業を100社生み出すことを目的とした団体「Japan Innovation Network(以下、JIN)」の専務理事 西口尚宏氏です。
西口氏は「イノベーションは、社内で尖った個人が起こすモノと誤解されがちですが、これはかなり古い考え方です。経営層がシステマティックに取り組まない限り、イノベーションを起こし続けることはできません」と明言しました。
ただイノベーションは試行錯誤することが欠かせません。そして、その試行錯誤の天敵が「前例主義と現状維持です」と西口氏は指摘します。これによりイノベーション活動に横やりが入ってしまうというのです。
そういった足を引っ張る人を西口氏は「えせ正義の味方」と呼びます。そのうえで、西口氏はこのような日本の企業にはびこる組織の創造力を阻む症状が22あると指摘しました。それが次の症状です。
JINの調査によれば、この22の症状のうち、ほとんどの企業が「8.新事業受け皿不在型」「10.現業責任者抵抗型」「11.特定個人依存型」「15.現ビジネスモデル継続型」「16.施策間連携不全型」「20.日本人男性主導型」という6症状はあると答えたといいます。では、これらの症状を乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。
イノベーションを推進する2階建て経営
イノベーションは「課題発見→コンセプト化→事業モデル化→事業プラン策定→ファイナンス→発展→立ち上げ→発展」というプロセスをたどります。課題発見~事業モデル化までは事業創造ステージ、そしてそれ以降は事業立ち上げのステージとなります。この2つのステージのうち、ボトルネックになっているのが、創造性を問われる前半です。ではどうすれば事業創造ステージのボトルネックを解決できるのでしょうか。「それには二階建ての経営が必要になります」と西口氏は語ります。
二階建ての経営とは、既存事業を効率的に回して拡大していく経営と、創造性の向上を軸とする経営の両方を行うこと。そして後者の創造性の向上を軸とする経営に欠かせないのが、「社内エコシステムの構築です」(西口氏)。
社内エコシステムは「経営者」「イノベータ」「加速支援者」という3種類の人材と組織的なインフラ、プロセスの5要素のかけ算で成り立ちます。ここで言う経営者とは事業創造にコミットしている経営者です。「経営者のコミットメントは欠かせません」と西口氏。
また新事業創出においては経営トップの下、アイデアを事業につなげるためのプロセスとそれを支える実行体制が有機的に結びついた社内メカニズムの構築が必要になります。そのメカニズムを構成するのが「教育プログラム」「事業化加速プロセス」「外部活用」です。
「教育プログラム」ではアイデアを集める方法論の教育やビジネスモデル構築に関わる教育、事業化に関わる教育を行います。「事業化加速プロセス」ではアイデアを集めて、ビジネスモデル化し、それを事業化するプロセスを構築します。「外部活用」では、アイデア収集、ビジネスモデル構築、事業化というプロセスそれぞれで外部を活用します。
JINではこれを、2階を有効に機能させるための社内メカニズム「イノベーションコンパス(羅針盤)」として定義しているといいます。現在、欧州はオープンイノベーション2.0と言われており、従来までの画期的な製品やサービスを開発してニーズを見つけていくという形ではなく、ユーザーの潜在的なニーズを見つけながらソリューションを試行錯誤して開発することが始まっています。
このような社内メカニズムを構築することで、「時短につながり、成功確率を高めていくことができるからです」と西口氏は語ります。
「イノベーションを起こすためにも、まずは二階建て経営にすること。そうすることで日本は強いイノベーション国家になっていきます」と語り、基調講演を締めました。
外部からアイデアを募り、オープンイノベーションを推進
パネリストとして登壇したのは、いずれも先述した22の症状を乗り越え、いち早くオープンイノベーションに取り組んでいる森永製菓 新領域創造事業部 チーフマネジャーの金丸美樹氏、ソフトバンク サービスプラットフォーム戦略・開発本部 プラットフォーム戦略統括部 プラットフォーム戦略部 イノベーション推進課の加藤隆彦氏、寺田倉庫 minikuraグループ minikuraチーム サブリーダーの井上智亜氏、日本電気 事業イノベーション戦略本部 ビジネスモデルイノベーション室 室長の中島大輔氏の4人。そしてファシリテーターを基調講演に引き続きJINの西口尚宏史氏が務めました。
森永製菓では「Morinaga Accelerator」というお菓子に限らない革新的な食関連のビジネスを共創するオープンイノベーションプログラムを実施したといいます。132通の応募があり、その中から5社を選抜。森永製菓および社外のメンター人による支援を行い、現在2社に出資しているとのこと。
このプログラムを実施した成果と今後について、「これまで議論ばかりで行動をしないことが多かったが、行動することが大事だと言うメッセージを社内にも発している。外部事業の育成に加え社内変革も担っていきたい」と金丸氏は意気込みました。
ソフトバンクでも昨年から「SoftBank Innovation Program」を開始しています。「スマートホーム」や「コネクテッド・ビークル」「デジタルマーケティング」「ヘルスケア」というIoTを中心としたテーマで、革新的なソリューションや技術を募集したそうです。
革新的なサービスを早期に市場に投入するため、同社では次の4点に気をつけたと言います。「1点目は参加表明をすること」と加藤氏。違う法人が集まって何かをなすには、一緒に実現したいことを明確にすることが重要だからです。次に挙げたのがスピード感の違い。「速いほうに合わせること。現場で社内の決裁者を説得するぐらいの勢いを持つこと」と指摘します。第3は、異文化複合経営。すべてを自分たちでやらないということ。4点目が前提条件を合わせること。
成功のカギは「Keep IT simple」と加藤氏。これはitとITの力を借りてシンプル、つまり効率化を進めていくということ。「『SoftBank Innovation Program』は今後も続けていく」と言います。
【次ページ】自社が推進してきたビジネスがオープンイノベーションだった
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