- 2025/03/13 掲載
アングル:海外投機の円買い、積み増しか処分か 昨夏に比べ反動限定とも
[東京 13日 ロイター] - 海外投機筋の円買いポジションが過去最大級に膨らんでいる。ここからさらに円買いが進むのか、一転して処分に動くのか、市場では読み合いが活発になっている。仮に円買いの巻き戻しが生じれば、ドル/円が上昇基調に反転する原動力になるとの見方が根強い。一方、日米金利差などのファンダメンタルズ面では円が急騰した昨夏の状況との違いもみられ、巻き戻しのインパクトは大きくなりにくいとの指摘もある。
投機筋の円買いが止まらない。投機筋のポジション動向を映すとされる米商品先物取引委員会(CFTC)によるIMM通貨先物の非商業(投機)部門の取組状況では、円の買い越しは4日終了週に9万5980枚から13万3651枚に一気に増え、過去最大の水準で拡大し続けている。
過去のデータをみると、円の買い越しは6万枚辺りで頭打ちになる傾向がみられるが、今回はその倍の規模に膨らんだことになる。トランプ米大統領の円安誘導批判などで円買いが急速に進み、ドル/円は3日の高値151.30円から4日には148.10円まで3円超急落していた。
こうした投機の円買いの巻き戻しが発生すれば、「ドル/円相場が反転するドライバーになる」(三井住友銀行のチーフ・為替ストラテジスト、鈴木浩史氏)との見方は多い。
昨夏にあった急速な円高の経緯も、こうした思惑を後押ししていそうだ。投機筋のポジションが7月中盤にかけて大きく売り越しに傾いていたが、これが急速に巻き戻されたことがドル/円の下落に拍車をかけ、7月30日から8月5日までの7日間で13円超下落した。7月初旬のIMM円売り越しは18万枚超で、過去最大規模だった。日銀が利上げを決定した後、米景気不安がくすぶり始めたことで、急速に巻き戻された。
<日米金利差との相関>
短期的に円高が一服してドル/円が上昇に転じる場面はあり得るとマネックス証券チーフ・FXコンサルタントの吉田恒氏はみている。ただ、「行き過ぎた円買いの修正」にとどまり、一本調子に円安が進行することはないとも指摘する。
吉田氏が着目するのは、日米金利差だ。金利差が拡大すれば、相対的に金利の低い円から高いドルに資金が向かう。縮小すれば逆の動きとなる。
昨年の初夏にかけ、日米の金利差は5月初めの3.7%前後から7月半ばの3.1%前後へと縮小傾向にあった。それにもかかわらず、投機筋の円売りポジションは積み上がり、ドル/円は上昇していた。金利差を反映しないドル買い/円売りがあったことがうかがえる。
足元では、逆に円買いポジションが積み上がっているが「金利差との乖離があった昨年とは正反対。日米金利差が縮小する局面で円売りが暴走した昨夏とは異なり、ドル/円の下落は日米金利差縮小の動きに沿っている」とマネックス証券の吉田氏は指摘する。この上で「巻き戻しをきっかけに円安が進行しても152円は超えないだろう。その後は再び円高に戻る可能性もある」と、反発力は限定されるとの見方を示す。
反発力の強弱は、巻き戻しが生じた際の地合い次第との声もある。ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏は、昨夏のドル/円が急速に下落した局面では、不意打ちの日銀の利上げに、米景気不安がくすぶり始めて相場全体が円高方向に向いた中で投機筋が慌ててポジションを整理したことが円高に「拍車をかけた」とみる。投機筋の円買いポジションの解消があったとしても、米関税を警戒する円高圧力は残り、大幅な円安進行は見込みづらいという。
三井住友銀の鈴木氏も、円のロングがいったん解消された後は、一転して円のショートが積み上がるような状況にはならないとみており「円安は一時的」にとどまると話している。
(青山敦子 編集:平田紀之、橋本浩)
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