- 2025/03/11 掲載
アングル:日本株に買い場到来の思惑、「トランプセッション」リスクと綱引き
(本文7段落目の表現を明確にしました)
Noriyuki Hirata
[東京 11日 ロイター] - トランプ米大統領の高関税政策が招く景気後退(リセッション)を指す「トランプセッション」への警戒感が高まり、11日の市場では日経平均が節目の3万6000円を割り込む場面があったが、その後は短時間で下げ幅を縮めた。「買い場」到来との見方ある一方、リセッション入りが現実化すれば、これまでの株安は序盤に過ぎないと警戒する声も根強い。
<逆張りの個人投資家も>
「ようやく、長期の投資家が買いを入れられる水準になってきた」と、りそなアセットマネジメントの戸田浩司ファンドマネージャーは指摘する。日経平均は咋秋から5カ月以上にわたって3万8000円─4万円のレンジを軸に推移していた。それが2月終盤以降、トランプ関税を警戒しながらレンジ下限を明確に下抜け、下落基調となっている。
長らくもみ合ったレンジを下抜ければ、下落トレンド入りが警戒されやすい一方、米景気が後退局面に入ったと明確になっているわけでもない。例えば2月の米雇用統計は、市場予想を下回ったものの、実際に景気後退が差し迫っている兆候とまではみられていない。
足元の株安は「米テクノロジー株のバリュエーション調整が主導しており、米株は全面的な売りではない。そこまでファンダメンタルズが悪化するとみなければ、そろそろ底を探る水準だろう」とUBS SuMi TRUST ウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストはみている。
この日の物色面からは、トランプリスクに対する市場の半身の姿勢もうかがえた。トランプ関税の直撃を受けかねない自動車を含む輸送用機器は、セクター別の指数は下落したものの、下落率で33業種中の7番目にとどまった。
内訳をみても、目先の再編期待が織り込まれた日産自動車やホンダは別としても、マツダやSUBARUはプラスで取引を終えており「投資家も心の底から懸念して売ってるわけではない」(りそなAMの戸田氏)との受け止めが聞かれた。
下値では、個人投資家による逆張りの買いも観測された。松井証券店内の信用評価損益率は前日時点でマイナス8.1%で、通常のマイナス10%や追い証が多発するマイナス20%にはまだ距離があり「投資余力は潤沢」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットはみている。
<リスク警戒は継続>
もっとも、米株の調整が長引くようなら、資産価格の下落が消費行動に負の影響を与える「逆資産効果」が意識されかねない。高関税を巡る交渉が、延長を重ねて長期化するようなら、設備投資や消費の手控えを通じて実体経済に影響を及ぼしかねない。
米S&P500は、2月半ばにつけた高値から短期間で約9%下落したが、仮にトランプセッションが現実化するなら、過去のリセッション時に比べれば、ここまでの株安は「序盤」にすぎないとみることもできる。ITバブルの崩壊時には高値から49%、リーマンショック時には57%下落した経緯がある。
UBS SuMi TRUST WMの小林氏は、まだ米国経済はリセッション入りするほど悪くはないと考えているとする一方、関税のさらなる悪材料が出てくるリスクはくすぶるとの慎重姿勢も崩していない。りそなAMの戸田氏も、ボラティリティが高いうちは一気に資金が流入するとはみていない。
米ダウ工業株30種は前日、長期的なトレンド分析で重要視される200日移動平均線を1年4カ月ぶりに割り込んでおり「テクニカル的には、買える状況ではない」と松井証券の窪田氏は話している。
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