- 2025/03/03 掲載
アングル:米高関税対策でカナダ牛が減少加速、米で牛肉さらに値上がりか
(最終段落の「ヘイデン」を「ヘイデン氏」に修正します)
Ed White
[ウイニペグ(加マニトバ州) 28日 ロイター] - 「肥育用子牛の買い付けを停止してしまった」――。カナダで家族経営の酪農業を営むジョン・バーグス氏はそう言って肩を落とした。購入停止は昨年11月。米大統領選でトランプ氏の返り咲きが決まったことを受け、米政府がカナダ産品に輸入関税を課すリスクが、冗談では済まなくなったからだ。
例年は11月から翌年夏まで、肥育場は3000頭の牛でいっぱいになるはずだが、今では1000頭以上のスペースが空いたままだ。
カナダは世界第8位の牛肉輸出国で、生産国としては第10位。生産量の半分以上が輸出に回り、そのうち75%が米国向けだ。だが、ここ何年も乾燥した気候が続き、飼料穀物の生育に打撃となったためコストが上昇。北米の農家は牛の肥育数を減らしてきた。
カナダと米国の牛の頭数は米政権の対カナダ産品関税の脅威が浮上する前から減少傾向にあり、米国で74年ぶり、カナダで36年ぶりの頭数に落ち込んでいる。トランプ政権は食品価格の引き下げを主要政策目標に掲げるものの、国内食料品店で牛肉価格が以前から上昇している。
<米都市部では2020年から値上がり>
米労働省労働統計局(BLS)によると、都市部における牛ひき肉の平均価格は2020年初めから43%上昇した。国際通貨基金(IMF)調べでは、世界で牛肉が34%値上がりしている。
そうした状況下、米政府がカナダ産品に関税を課すとどうなるか。これまでは米国とカナダ間にあたかも国境などないかのように、成牛や子牛、繁殖用・食肉処理用の牛、食肉処理・加工後の牛肉製品が行き来してきた。カナダは米国から若齢牛を輸入し、穀物飼料で肥育した後、食肉処理・加工して米国に送り返してきたが、関税発動でこうした生産プロセスは根底から崩れてしまう。
関税率についてトランプ大統領はほとんどのカナダ産品に25%を課すと警告している。その際、メキシコにも同じ措置がとられる。
米国が、カナダ産牛肉をほかの国の産品で代替することは容易でない。既に牛肉供給は不足しており、オーストラリアなど遠くからも輸入している。そもそもカナダ産牛肉は米国で不足する分を補う上で重要なのだ。
カナダの農業融資公社ファーム・クレジット・カナダは牛肉産業の成長のため牛の頭数を増やしたい考えだが、酪農家は二の足を踏んでいる。チーフエコノミストのJP・ジェルベ氏は「酪農家の一部はこの状況を1年、あるいは半年、様子見するかもしれない」と話した。
<1988年以来の頭数>
トランプ政権による関税の脅威がなければ、牛肉価格の高騰を追い風に、一部のカナダ酪農家は牛の頭数を増やしていた可能性がある。しかし実際には、値上がりを受けて、多くの農家が牛の売却を選択して利益を得ようとしている。
カナダ統計局によると、今年1月の成牛と子牛の頭数は前年同月比0.7%減(23年1月比では2.1%減)の総計1090万頭で、1988年以来の規模に落ち込んだ。
西部アルバータ州で兄弟とともに3カ所の肥育場を運営するカーチス・バンダー・ヘイデン氏は、トラック1台分の肥育牛が2万8000ドルの関税を課されかねないと弾き出した。ヘイデン氏が懸念するのは米国のバイヤーが値上がりを嫌がることだ。米国で育てた牛よりも高い価格の買い付けを拒むか、カナダの牛に見向きもしなくなる恐れがあるという。
それでもヘイデン氏は「(酪農業を)止めるわけはいかない。われわれには従業員がいる。多くの家族がわれわれを頼りにしているのだから」と話した。
*システムの都合で再送します
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