• 2025/02/10 掲載

アングル:トランプ氏の関税政策は効果薄か 他国の利下げ継続で

ロイター

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Balazs Koranyi John Revill

[フランクフルト/チューリヒ 7日 ロイター] - 中央銀行の金融政策担当者やアナリストによると、世界的に中央銀行は利下げを続ける可能性が十分ある一方で、米連邦準備理事会(FRB)は一時停止しており、政策金利を巡ってデカップリング(分離)が当面続く可能性がある。

こうしたことを受け、トランプ米大統領が相次いで打ち出す高関税政策の方針は、効果が薄くなったり、米国企業や家計の利払い費用の増加リスクが高まったりして大統領に痛手となる恐れがある。

FRBが追加利下げに踏み切れないのは米景気が好調なためだ。一方で、他の先進各国の多くは第2次トランプ政権の高関税政策の先行き不透明感も相まって景気がさえない。世界貿易を巡る危険な兆候であり、FRBが一段の利下げを思いとどまる一因となっている。

こうした状況下で世界経済は、貿易戦争の脅威を受けて調整を進めており、皮肉なことに、トランプ政権の高関税政策は発動前に一部が既に効力をなくし、米顧客に商品を売る外国企業は利益を得ている。

<対米輸出が有利に>

関税は米国内でインフレを加速させる。このためFRBは政策金利を高止まりさせている。これがドル高につながり、米政権の意に反して諸外国の対米輸出がより有利になっている。

例えば、スイスは既に思いがけない利益を享受している。J.サフラ・サラシンのチーフエコノミスト、カーステン・ジュニウス氏は「スイスフラン安は米関税の影響を相殺し得るだろう」と話した。

また、ユーロ圏20カ国の場合も、トランプ氏の対米貿易黒字批判の矛先となっているが、ユーロ相場が昨秋初めから対ドルで7%下落しているため、制裁関税が及ぼす効果の一部が相殺される可能性がある。

欧州中央銀行(ECB)のチポローネ専務理事は「欧州企業は、市場シェア確保のため粗利益率を幾分犠牲にする覚悟があるかもしれないが、この犠牲の一部は為替レートを通じて回収される可能性がある。従って、結局のところ、(トランプ政権の制裁関税の)影響は全体的にそれほど大きくないかもしれない」と述べた。

通貨が下落すると、エネルギーを中心に輸入価格が高くなるため、インフレが起きるのが一般的だ。しかし、貿易摩擦で経済成長の足が引っ張られることなどにより、物価上昇率は多くの分野で鈍化傾向にあり、中銀の金融政策担当者はこれまでの展開に頭を抱えてはいないようだ。

FRBは追加利下げを急がないと表明したばかりだが、その後にECBやイングランド銀行、カナダ銀行、インド準備銀行、メキシコ銀行が相次いで利下げを決定した。

カナダ銀行のマックレム総裁は、金利差による通貨への影響は「比較的控えめ」だったと述べた。また、イングランド銀行は、ポンドが昨年9月以降、対ドルで7%下落したが、下落幅は小さいと指摘した。

<中銀の限界>

ベッセント米財務長官は今週、トランプ大統領が低い金利水準を望むと発言する場合はFRBが操作する短期金利を指しているのではなく、米住宅ローン市場や銀行の企業向け貸出金利を左右する米長期金利(10年国債利回り)のことだと述べた。

野村のグローバル為替ストラテジスト、ドミニク・バニング氏は「中央銀行が懸念するのは、通貨の大幅下落が債券売りにつながり、それがさらなる通貨下落とインフレへと連鎖するスパイラルの場合だ。しかし、現実化するとは思わない」と述べた。

ただ、エネルギー価格が再び急騰すれば他の製品の値上がりにも波及しかねず、FRBは対応を迫られかねない。

インフレ対応でFRBなど中央銀行は短期金利を引き下げることはできる。しかし、各種の借入金利を左右する長期金利は市場で決まる。米長期金利が上昇すれば、欧州債券の利回りも追随する可能性が高い。

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