- 2025/02/08 掲載
物言う株主、「人権」で攻勢=フジ問題、経営抜本改革迫る
物言う株主(アクティビスト)の攻勢が企業の「人権」対応に広がってきた。米投資ファンドのダルトン・インベストメンツは元タレント中居正広さんと女性とのトラブルへのフジテレビの対応を切り口に、親会社フジ・メディア・ホールディングス(HD)の経営刷新を要求。投資家の視線は厳しさを増し、企業も対応を迫られている。
「なぜたった一人の独裁者が巨大な放送グループを40年近くも支配することが許されてきたのか」。ダルトンは3日付の書簡で、フジ・メディアHDのコーポレートガバナンス(企業統治)体制に疑問を投げ掛け、グループの経営を長年にわたり主導し「企業風土の礎を作った」(金光修社長)という日枝久取締役相談役の辞任を求めた。
ダルトンはフジ・メディアHD株式の7%以上を保有する大株主。かねて経営陣による自社買収(MBO)などを提案していたが、今回、社外取締役の監督権限を強化する指名委員会等設置会社への移行を含む企業統治改革を要求した。1%強を保有する英資産運用会社のゼナー・アセットマネジメントも「悪い企業文化を許したのはガバナンスの弱さだ」と批判する。
物言う株主にとっては、人権問題は経営責任を追及する機会となる。国内では、2022年に英アセット・バリュー・インベスターズが日鉄ソリューションズに対して、セクハラやパワハラ問題への対処を求めて特別調査委員会の設置を株主提案した例がある。
経営者からは株価が上がれば売り抜けてしまうことも多い物言う株主に対し、「本当に会社の将来のことを考えているのか」と冷ややかな声も漏れる。だが、今回の問題ではフジテレビの経営トップが「人権意識の不足」を理由に引責辞任したほか、CMのスポンサー離れが業績悪化を招いた。いち早く人権リスクを指摘したダルトンは喝采を浴び、フジ・メディアHDの株価はむしろ上昇基調となっている。
大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「株主価値を上げてほしいというのがアクティビストの本音であり、人権問題や不祥事はステークホルダー(利害関係者)の関心を集めやすい」と分析。その上で、「人権問題をきっかけに会社全体の在り方が見直されるケースが出れば、彼らにとっては一つの成功例になる」と話した。
【時事通信社】 〔写真説明〕新規上場時に笑顔で記者会見するフジテレビジョン(現フジ・メディア・ホールディングス)の日枝久社長(当時)=1997年8月、東京・日本橋兜町 〔写真説明〕記者会見で考え込むフジテレビの港浩一社長(当時)=1月27日、東京都港区 〔写真説明〕記者会見するフジテレビの(左から)港浩一社長(当時)、嘉納修治会長(同)、フジ・メディア・ホールディングス(HD)の金光修社長=1月27日、東京都港区
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