• 2025/01/27 掲載

扉開いた「同意なき買収」=経営陣戦々恐々、忌避感薄れ

時事通信社

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相手企業との合意なしにTOB(株式公開買い付け)を仕掛ける「同意なき買収」の提案が目立ち始めた。タブー視されてきた手法の扉を開けたのは、「真摯(しんし)な買収提案」は検討しなければならないとする経済産業省指針。企業価値向上を求めるアクティビスト(物言う株主)の圧力も大きい。経営陣は常に買収される可能性にさらされ、戦々恐々としている。

企業買収は水面下の協議で相手側と合意に達してから行うものが大半。しかし、第一生命ホールディングスは2023年に福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンに対し、別の企業によるTOBの最中に同意を得ない状態で買収提案し、最終的に成功した。

24年12月にはニデックも事前に打診せずに、工作機械大手の牧野フライス製作所にTOBを実施すると発表した。ニデック幹部は「最終的に合意するにしても非常に長い年月を要するため、最初からこの形で提案した」と説明。一方、牧野フライス側は検討のための時間が必要だとしてTOB開始時期の延期を訴えている。

買収提案を受けた企業の経営陣は「まさに寝耳に水」と振り返る。企業関係者からは「こんなことがまかり通るなら、上場のメリットがなくなる」との声も聞かれた。

増加の背景にあるのは経産省が23年に策定した「企業買収における行動指針」。企業価値向上につながる提案が拒否されないようにするのが狙いで、これまでの「敵対的買収」という表現を「同意なき買収」と言い換えて忌避感を薄めた。

指針策定に携わった西村あさひ法律事務所の太田洋弁護士は、アクティビストの資本効率改善を求める動きと連動し、同意なき買収が増えると分析。「最大の防衛策は株価を高めること。経営陣は資本市場との向き合い方を変え、経営を可視化していく必要がある」と話した。

調査会社レコフデータ(東京)の集計によると、昨年日本企業が関わったM&A(企業の合併・買収)は全体で4700件と、調査を始めた1985年以降で最多。グループ会社レコフの沢田英之氏は「景気の急激な悪化がなければ、(今年は)5000件の大台を超えてもおかしくない」と見込んでいる。

【時事通信社】

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