- 2024/12/12 掲載
12月ロイター企業調査:過去の日銀政策、6割が経営にプラス 植田総裁を評価は5割
[東京 12日 ロイター] - 12月のロイター企業調査で、1990年代後半から25年間の日銀金融政策に対する評価を聞いたところ、6割が経営にプラスの影響があったと回答した。デフレが続いたこの期間、日銀は量的緩和やマイナス金利など非伝統的な手法を導入し、企業に資金が回りやすい状況を作った。一方、4割弱がマイナスだったと評価しており、「自助努力の意識を弱めた」などの声が聞かれた。
短期金利を誘導する伝統的な政策手法に戻し、これまで2回利上げした植田和男総裁の手腕に対しては、評価する声が5割超に上った。分からない、評価しないも合わせて5割弱を占めた。
今回の調査は、日銀が過去の金融政策を検証する「多角的レビュー」の結果を月内に公表するのを前に実施した。調査期間は11月27日─12月6日。505社に質問し、236社が回答した。
25年間の金融政策について、「プラスの影響があった」との答えは「どちらかというと」も含めると64%だった。理由として最も多かったのが、借り入れコストを低く抑えられたこと。
「資金調達が安価でできたため投資回収が早まった。また、消費者の住宅ローンの負担が軽くなることで少なからず消費にはプラスに動いたと考えられる」(化学)、「資金調達コストが低位に推移し、大型投資に寄与した」(運輸)などの声が出ていた。「倒産せずに済んだ」(機械)との回答もあった。
「輸出比率が高い当社にとって為替影響が一番大きく、総合的にはプラスに作用したと判断できるため」(窯業)、「円安による輸出製品のマージン増大」(鉄鋼)など、13年3月から10年間在任した黒田東彦総裁の「異次元緩和」で為替が円安に進んだことを評価する回答も目立った。一方で、「円安によるエネルギー、資源の高騰」(金属)など円安に振れすぎたことへの懸念も出ていた。
「マイナスの影響があった」との回答は、「どちらかというと」も含めて36%。市場から退出すべき企業を延命し、経済の新陳代謝の妨げにつながったと大規模緩和を総括する見方がある中、回答企業からも「悪い意味で安定していたことで、新規開拓の意識が薄れた」(化学)、「長期的な金融緩和政策や支援策は企業の生産の押し上げに寄与したが、一方で自助努力の意識を弱めた」(精密機器)などの声が聞かれた。
99年にゼロ金利政策を導入した速水優総裁から、13年以降に長短金利操作やマイナス金利など一連の施策を採用した黒田総裁まで、90年代後半からの25年は日銀にとってデフレとの戦いだった。白川方明総裁は13年1月、安倍晋三政権との間で政府との共同声明を出し、連携して物価上昇率2%を目指す目標を掲げた。
23年4月に就任した植田現総裁の手腕に対しては、2%が「大いに評価する」、51%が「評価する」と答えた。「あまり評価しない」は20%、「評価しない」は4%だった。「分からない」との回答も23%あった。
植田総裁は24年3月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除と長短金利操作の撤廃を決めた。円安やウクライナ、中東情勢などで物価が上昇し、企業の賃上げも進む中、今年7月に政策金利を0.25%に引き上げた。
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