• 2024/12/09 掲載

アングル:トランプ氏の仮想通貨政策、推進派起用でも先行き不透明

ロイター

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Hannah Lang Michelle Price

[ワシントン 6日 ロイター] - トランプ次期米大統領は、ホワイトハウス内に新設する人工知能(AI)・暗号資産(仮想通貨)の責任者と、証券市場の管理・規制を司る証券取引委員会(SEC)委員長の2つの重要ポストにいずれも仮想通貨推進派を充てる人事を発表し、次期政権の政策が具体的な姿を現しつつある。しかし実際には誰が政策運営のかじを握るのかはっきりしない上、関係者が多過ぎて改革の進展が遅れるのではないかと懸念する声もあり、先行きは不透明だ。

トランプ氏は4日、SEC次期委員長に仮想通貨推進派のポール・アトキンス氏を指名。翌5日にはAI・仮想通貨責任者に米決済サービス大手ペイパルの元最高執行責任者(COO)でやはり仮想通貨推進派のデービッド・サックス氏を指名すると発表した。

仮想通貨業界はこの人選を歓迎。バイデン現政権下で進んだ仮想通貨の規制強化に終止符が打たれ、イノベーションが進むと期待を寄せている。

仮想通貨コンプライアンス企業、ソリダス・ラブズの共同創設者チェン・アラド氏は「より建設的な規制ができると思う。そして当然ながら、その際には証券とは何かが明確になる」と述べた。

ただアナリストの間では「仮想通貨責任者」というポストが新設されたことで政策を誰が主導するのかが曖昧になり、決定過程であつれきが生じるのではないかとの危惧も出ている。

キャピタル・アルファ・パートナーズのマネジングディレクター、イアン・カッツ氏はロイターへのメールで、「大きな疑問の1つはサックス氏自身が政策を進めるのかということだ。トランプ氏によって任命された責任者として迅速な変化を追求するだろうが、手続きを担うのはSECであり、SECを無視して新たな規則を作るわけにはいかない」と指摘。「当事者それぞれの人柄が鍵になる」と付け加えた。

トランプ氏に近い起業家のイーロン・マスク氏とも親しいデービッド・サックス氏は、早い時期から代表的な仮想通貨であるビットコインに投資していた人物。2017年のCNBCとのインタビューでは、仮想通貨がインターネットに革命を起こすと述べる一方、この分野には詐欺師もいると認めていた。ロイターがサックス氏の経歴を調べたところ、政策の立案や主導に関わった経験はなかった。

一方、アトキンス氏はSECで幹部を務めた経験を持ち、ワシントンの政策関係者の間では信頼を得ている経験豊富な人物だ。仮想通貨のイノベーションは金融サービスの競争を促進するとして仮想通貨への支持を表明しており、自身のコンサルティング会社を通じて仮想通貨企業が規制当局と交渉する際の支援も行ってきた。

「アトキンス氏はある程度予測可能な人物だと言える」と、金融コンサルティング会社ウォルターズ・クルーワーのシニアリーガルアナリスト、リーン・パウエル氏は指摘。これに対してサックス氏は「全く畑違いの人物だ」と評した。

サックス氏とアトキンス氏はともに規制当局は仮想通貨企業に対する姿勢をもっと寛大にするべきだと主張している。ただ、仮想通貨を証券、商品、ユーティリティー(便益提供)のいずれに分類すべきか、あるいはその条件は何かという、仮想通貨業界の規制方法を決定付ける核心的な問題についていずれも立場を明確にしていない。

アトキンス氏とサックス氏はこれまでコメント要請には応じていない。

トランプ氏がSECのトップにアトキンス氏を指名すると発表したことを受けて市場では規制緩和への期待が高まり、ビットコインは一時10万ドル(約1500万円)を突破した。

バイデン政権下ではSECが多数の暗号資産企業を相手取り、証券法違反の疑いで訴訟を起こしてきた。また、銀行規制当局も金融機関が仮想通貨に関わることに消極的で、議会は仮想通貨の本格的な流通を促進する法律の制定に踏み込まなかった。

一方、仮想通貨業界は、仮想通貨が証券や商品として分類されるための条件を定める規制枠組みの構築など、デジタル資産の導入を促進するための大胆な政策の推進を求めている。

トランプ氏は5日に自身のSNSへの投稿で、サックス氏が仮想通貨政策の「ガイド役」になり「法的枠組みを整備して業界に明確性をもたらす」と説明した。しかしこれで本当にサックス氏が新政権の仮想通貨政策を主導するのかどうかははっきりしないままだ。

トランプ次期政権では暗号資産諮問委員会が設立され、政策面で重要な役割を担う予定だが、サックス氏がこの委員会のトップを務めるのかどうかも定かではない。

専門家によると、仮想通貨に関する法的枠組みを確立するには、SECや商品先物取引委員会(CFTC)のような規制機関から広範な意見を集める必要があるほか、議会の承認も欠かせない。

銀行の自己勘定取引や資本規制のような仮想通貨と無関係の課題でさえ、規制機関同士の対立で何年も足踏みしているという実態もある。ウォルターズ・クルーワーのパウエル氏は次期政権の仮想通貨政策について「間違いなく、船頭多くして船山に登るという状態に陥る」と指摘した。

トランプ次期政権の広報担当者は6日のメールで、サックス氏の指名については確認したが、ポストの働きについての質問には答えなかった。

消費者保護団体の間からは、トランプ政権の仮想通貨政策が規制の抜け穴を生み出し、投資家をリスクにさらす可能性があるとの懸念も聞かれる。仮想通貨業界はこうした懸念を全面的に否定している。

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