- 2024/11/13 掲載
インタビュー:政治の変化などでボラティリティ高い、過度な動きには対応=神田内閣官房参与
[東京 13日 ロイター] - 石破茂政権の経済政策に助言する神田真人内閣官房参与はロイターとのインタビューで、世界的に金融政策が転換期に差し掛かり、主要国の政治も変化する中、為替など金融市場のボラティリティが高まっているとの見方を示した。投機が変動を助長しているとし、「行き過ぎた動きには適切な対応を取る」と語った。
7月に財務官を退任し、現在は財務省顧問も務める神田氏は「為替相場の過度な変動は家計や企業の経済活動に悪影響を与えて望ましくないと考えており、円安・円高どちらでも、行き過ぎた動きには適切な対応を取る必要があるという考えに全く変わりはない」と述べた。
神田氏の財務官在任時に160円台に乗せたドル/円は、日本当局の度重なる円買い介入、さらに米国が利下げ、日本が利上げサイクルに舵を切ったとの観測から、9月中旬に140円前半まで下落した。しかし、11月5日の米大統領選が近づき、市場がトランプ前大統領の勝利を織り込み始めると為替は再びドル高・円安に振れ、選挙から1週間が経った足元は150円台半ば近傍で推移している。
神田氏は、株高とドル高・円安の「トランプトレード」が起きている背景として、財政赤字増大による米金利上昇や関税の引き上げ、移民制限によるインフレと金利引き上げの可能性といった憶測があると指摘。これをあおる投機の存在がある、との見方を示した。
「相場には神羅万象が影響し、金利だけで決まるわけはない。足元は過剰流動性で行き場をなくしたマネーが投機の思惑で動いている」とし、「中長期的には人為的に為替水準を維持することはできず、通貨価値を守りたいなら強い経済にしていかなくてはならない」と述べた。
神田氏は日本の長期金利に上昇圧力がかかりやすくなっていることにも言及し、「日本のマーケットの信任を維持する努力は絶対に必要というメッセージであるのは間違いない」と語った。
11日に発足した第2次石破内閣は少数与党となり、近くまとめる経済対策をはじめ市場は拡張的な財政政策が続くとみている。トランプ氏の大統領就任を見越して米金利が上昇している影響もあり、日本の長めの金利にも上昇圧力がかかりやすくなっている。
神田氏は「今後の財政不安、インフレに対して金利が上がるかもしれないという懸念からも(国債や社債など)フィクストインカムの長いレンジでいろいろ動きがある」と述べた。
神田氏は、関税引き上げなどを公約に掲げて米大統領選を戦ったトランプ次期政権の政策について、日本経済と金融市場に与える影響を含めてしっかりと注視する必要があるとの考えを示した。「どんな場合でも、ルールに基づいて、自由で開かれた国際秩序が必要であり、引き続き日本とアメリカで緊密に意思疎通を行って、必要な政策上の調整を行っていく事となろう」と語った。
今月中にアジア開発銀行(ADB)の次期総裁に選出される見通しの神田氏は、域内の膨大なインフラ不足や気候変動など地球規模の課題に取り組んでいくと抱負を述べた。
中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)との役割分担については、「AIIBは3割が協調融資でADBのプロジェクトに資金ギャップを支えてくれており、アジア太平洋地域の膨大なインフラ投資ニーズに対処する一助になっている。ADBはAIIBは組織の性格が全く違う」と語り、ライバル関係との見方を退けた。
(梶本哲史、山崎牧子 編集:久保信博)
*インタビューは12日に実施しました。
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