- 2024/10/29 掲載
LNGタンカー運賃が大幅下落、新造船追加に対してスポット需要低迷
[シンガポール 28日 ロイター] - 液化天然ガス(LNG)タンカーの運賃が数年ぶりの低水準となり、アナリストや海運関係者は2025年にかけて一段と低下する可能性があるとの見方を示している。価格調査会社スパーク・コモディティーズによると、大西洋航路の1日当たりのチャーター料は今月25日に2万0750ドルと前年同時点より87%下落。太平洋航路も3万6750ドルと同78%下がり、この期間としては少なくとも2019年以降で最も低調になった。
LNGタンカーの新造船が追加されるペースがLNG生産量の増加ペースより大きく、スポット需要が低調なのが運賃を押し下げている。
導入されている新造船は、ウクライナに侵攻したロシアへの制裁に伴って欧州へ供給されるロシア産ガスが2022年に急減後、米国からの輸出が増加することを見越して建造された。一方、LNG生産プロジェクトの立ち上がりは大幅な賃金上昇を背景にしたインフレや、熟練労働者と設備の不足が響いて遅れている。
商品市場のデータを提供するアーガスでLNG価格担当の責任者を務めるサミュエル・グッド氏は、さらに多くのLNGタンカーが投入される中で運賃はLNGの新規生産プロジェクトが立ち上がる2025年後半まで低迷が続く可能性があると予想。「主に米国での液化設備の能力拡大が遅れており、船隊の増加幅とLNG供給の増加幅の不均衡を引き起こしている」と指摘した。
スパーク・コモディティーズによると、南アフリカ・喜望峰を経由して米国と北東アジアを結ぶ航路について裁定取引を行う機会は今後1年間なく、米国の船隊を欧州北西部に引き渡した方が収益性は高くなる。
アナリストのカシム・アフガン氏は「米国の船隊が欧州向けとなったことで、アジアはLNGの現地調達を増やす必要が生じる。その結果、大西洋と太平洋の多くのLNGタンカーが休眠することになる」と説明。このような船隊の稼働率低下と、大量の新造船の市場投入が「ここ数カ月のLNG運賃の急落の主因となっている」と話した。
アーガスのグッド氏によると、今年に入ってから今月初旬までに45隻程度の新造船が完成しており、引き渡しを遅らせている中でも今後半年間に少なくとも同数の新造船が竣工する予定だ。グッド氏は「この新造船の竣工ペースは、26年中盤まで大きく減ることはないだろう」との見通しを示した。
ある船舶ブローカーは、世界に800隻近くあるLNGタンカーに今年は70隻弱の新造船が追加され、来年はさらに増えると見積もっている。さらに、欧州やアジアでのLNG需要が低迷していることも、LNGタンカーの需要を弱めていると解説した。
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