- 2024/10/28 掲載
英財務相、増税と公共投資拡大案を議会提示へ 新規財政措置400億ポンド
[ロンドン 25日 ロイター] - 今年7月の英下院総選挙で14年ぶりの政権交代を果たした労働党のスターマー政権は、30日に初の予算案を議会に示す。リーブス財務相は増税と公共投資拡大を伴う予算により、低迷する英経済を新しい成長軌道に乗せ、主要7カ国(G7)の中で最大の成長ペースに移行させる方針だ。
政府関係者によると、財務相は借り入れなしに日常的な支出を賄うとの公約を果たすため、歳入増加と歳出削減の両面にまたがる計約400億ポンド(520億ドル)相当の新規財政措置を計画している。大部分が増税と公共サービスの一部削減という。
スターマー首相は「働く人々」には配慮すると公約したものの、企業の国民保険料の負担増を否定しておらず、賃金抑制や雇用減少につながる可能性がある。あるいは、より多くの人に所得税増税を強いる可能性もある。
増税は、キャピタルゲインや配当、相続、非居住者、燃料が対象になるほか、個人年金も検討の俎上に上る可能性がある。英国の税負担は既に第2次世界大戦の終結直後以降で最も重くなっている。
ただ、スターマー政権は増税と同時に、電力網や運輸、その他インフラ向けに財政支出を拡大することが民間投資の呼び込みをもたらし成長軌道に転じると期待しており、そのために政府借り入れの自主規制ルールを緩和する可能性が高い。
23日の英ガーディアン紙は、政府債務の算出の在り方について、財務相が現行の「公共部門ネット債務(PSNB)」から「公共部門ネット金融負債」(PSNFL)に切り替えることを計画していると報じた。
財務相は24日、「経済を成長させ、デジタルやハイテク、生命科学、クリーンエネルギーの分野で大きなチャンスをつかむには、投資拡大が必要だが、政府債務の算出の在り方を変えた場合にのみ可能になるだろう」と述べた。詳細の説明は避けたが、余剰資金を全て使う考えはないと述べた。
こうした発言の後、英国債市場では、政府借り入れが増加し、中央銀行イングランド銀行(BOE)の利下げペースは鈍化するとの見通しが強まり、相場が下落(利回りは上昇)する場面があった。
世界第2位の資産運用会社、米バンガードで世界の金利を担当する部門を率いるエイルズ・コートニー氏は、財務相は自身の限界を認識しているようだと述べた。特に、トラス元首相が2022年、財源手当てなしに大型減税策を打ち出したために国債価格が暴落した「トラス・ショック」後は自覚しているようだという。
コートニー氏は当時の財政計画と比較し、「今回は市場をより強く意識した発言内容になっているように感じるので、われわれはあまり神経質になっていない」と述べた。
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