- 2024/10/25 掲載
アングル:大統領選当日は市場大荒れか、米金融機関が備え着々
[ニューヨーク 23日 ロイター] - 11月5日の米大統領選当日とその直後は、選挙結果を巡って市場が大荒れとなり、取引量が急増する恐れがある。そうした事態に備え、銀行や証券会社、資産運用会社、取引所などは人員を増強して対応に万全を期す構えだ。
政治イベントが市場参加者に性急なポジション巻き戻しを強いるような不安をもたらし、市場リスクや流動性リスクなどが高まって、取引システムをはじめとする市場インフラに重圧がかかってもおかしくない。
今回の大統領選は民主党候補ハリス副大統領と共和党候補トランプ前大統領の支持率がきっ抗し、7つの激戦州を制した方が当選しそうな際どい勝負となる見通し。
こうした中で投資家やトレーダーの間では、すぐには勝者が決まらない展開もあり得るとの見方が出ている。また2020年にトランプ氏が選挙結果に異議を申し立てたように、今回も同様の事態が起きるリスクもある。実際トランプ氏は、自身が敗北した場合に結果を受け入れない可能性を示唆している。
米金融ノーザン・トラストの資本市場部で顧客対応の地域責任者を務めるグラント・ジョンジー氏は「市場の立場で、少なくとも1週間は誰が次期大統領か分からない状況が続くシナリオへの準備を進めている」と説明する。「取引量と変動幅の増大に十分対応し、(従業員の)休暇日程を管理するとともに、選挙関連の情報が入ってくる中で日中の相場乱高下にも備える態勢を確保する」と話す。
市場参加者は、ボラティリティー(変動幅)の急拡大で不意打ちを受けないよう万全を期そうとしている。近年で想定外の結果をもたらした事例としては、2016年の欧州連合(EU)離脱を決めた英国民投票や、同年のトランプ氏が民主党候補のヒラリー・クリントン氏を破った大統領選などが挙げられる。
<油断は禁物>
事情に詳しい関係者の話では、ある米大手銀行は大統領選に向け、予想される顧客の需要増に対処するため準備したニューヨークのトレーディング部門を、夜間対応のチームが補完する態勢を整えつつある。
同行は、次期大統領の決定が遅れるケースで必要になる従業員の調整も行う計画だ。
関係者によると、個人投資家を顧客とする大手証券の1社は24時間ずっと投資家からの質問に答え、レディットなどのソーシャルメディアで何か予想外の事態が起きていないかを確実にモニターする人員配置を整えつつある。
Cboeグローバル・マーケッツのクリス・アイザクソン最高執行責任者(COO)は、新型コロナウイルスのパンデミックや2020年の米大統領選、直近では円キャリートレードの巻き戻しといったこれまでのボラティリティーを拡大させるイベントで、同社のシステムが試されてきたと振り返る。
アイザクソン氏は「われわれは(ボラティリティーが)過去最高の少なくとも2倍になっても処理できる市場を築いている。だから選挙に向けた当社の強じん性と事業継続力にはかなり良好な手応えを感じている」と述べた。
その上で土日を含めて24時間対応に見合う人員をそろえるとともに、米国の重要な時間帯の監視要員も増強することになるとしている。
バンク・オブ・アメリカのデータに基づくと、株式投資家の不安心理の度合いを示すCboeのボラティリティー・インデックス(VIX、恐怖指数)は、米国で選挙が予定される年は7月から11月にかけて25%程度高くなる傾向がある。
一方、今年のVIX先物は11月5日を含む期間の取引水準が、過去の年ほど高くなっていない。
それでも多くの市場参加者は気を緩めていない。
関係者によると、ある米大手証券会社は新人研修の日程をずらしたり、電話応対の人員を減らさないように会議などを制限したりしている。
メジロー・カレンシー・マネジメントのジョー・ホフマン最高経営責任者(CEO)は、流動性が枯渇してしまうストレス発生時には、銀行から資金を融通してもらえるルートを確保しておくことが大事になるとの見方を示した。
新興ネット証券ロビンフッドなどに翌日物取引のコンピューター取引システムを提供しているブルーオーシャン・テクノロジーズのブライアン・ハイマンCEOは、取引量とボラティリティーの拡大に備えているとしつつも、どの資産でそうした事態が起きるかは予想できないと付け加えた。
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